ホイートストン(読み)ほいーとすとん(英語表記)Sir Charles Wheatstone

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホイートストン」の意味・わかりやすい解説

ホイートストン
ほいーとすとん
Sir Charles Wheatstone
(1802―1875)

イギリス物理学者発明家。楽器商の子としてグロスターに生まれる。1834年キングズ・カレッジの実験物理学教授、1836年王立協会会員。初めはおもに楽器と音響学研究を行い、1823年、音波に関する論文を発表、1829年にはコンサーティーナ(手風琴)を発明した。1834年、電気の伝導速度を測定して、しだいに電気学の研究へと進んだ。イギリス産業革命期を通じて活発化した鉄道建設とそれに伴う通信線設置の実用的課題に取り組み、1837年W・F・クックと共同で5針式電信機を発明、また当時、十分評価されていなかった「オーム理論」の有効性を実証した。そして電信機器や回路の抵抗測定法を研究し、1843年クリスティSamuel H. Christie(1784―1865)が起電力の比較測定に用いた回路(1833)を応用、発展させたホイートストンブリッジ回路を発明した。彼の研究は初期の電気通信技術に基礎的な理論を与え、また電気学ではオームの法則の重要性を指摘するものとなった。

[貝塚昭夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「ホイートストン」の意味・わかりやすい解説

ホイートストン
Charles Wheatstone
生没年:1802-75

イギリスの物理学者。グロスターの楽器商の家に生まれ,青年時代から音響振動の研究を行い,1828年空気柱の共鳴,33年クラードニ図形などの研究で有名となった。34年ロンドン大学キングズ・カレッジの実験物理学教授,36年ローヤル・ソサエティ会員となる。1834年に三つの放電空隙をもつ電線中の電気の伝播でんぱ)速度を回転鏡で測定したが,この技術はその後光速の測定に利用された。電信の研究ではクックWilliam Fothegill Cooke(1806-79)とともに,磁針電信機を発明したほか,44年には海底電信の実験を行った。1843年にはオームの法則の検証のため可変抵抗器を発明し,またクリスティーSamuel Hunter Christie(1784-1865)が発明したホイートストンブリッジを普及させた。このほか立体視の研究もあり,発電機の改良にも貢献した。68年にナイトに叙された。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホイートストン」の意味・わかりやすい解説

ホイートストン
Wheatstone, Sir Charles

[生]1802.2.6. グロスター
[没]1875.10.9. パリ
イギリスの物理学者。楽器製造業を経て,キングズ・カレッジの実験物理学教授 (1834) 。楽器の音響原理に関心をもち,1833年クラドニ図形に関する論文を発表,学会に認められる。 34年の導体中の電流速度測定用の回転鏡,37年に特許を取った W.クックとの共同による電信機,ステレオスコープ (実体鏡) の発明のほか,発電機の改良など多くの業績を残した。とりわけ S.クリスティの発明した抵抗測定器を改良実用化したホイートストン・ブリッジは彼の名を不朽のものとした。

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百科事典マイペディア 「ホイートストン」の意味・わかりやすい解説

ホイートストン

英国の物理学者。楽器商の家に生まれ,最初は音響の研究に従事。1834年ロンドン大学教授。1837年W.F.クックとともに磁針電信機の特許を取得。立体鏡,電気時計も考案,またS.H.クリスティーが考案した抵抗測定器を実用化させ,これはホイートストンブリッジの名で広く普及した。

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世界大百科事典(旧版)内のホイートストンの言及

【コンサーティーナ】より

…手風琴と呼ばれる。イギリス人ホイートストンCharles Wheatstoneが発明し,1829年に特許を取った。六角形で,両手にボタンがあってともに〈押し〉と〈引き〉で別の音を出す。…

【暗号】より

…綴字換字の代表的なものはプレーフェアPlayfair暗号である(図2)。この暗号はイギリスの物理学者C.ホイートストンが考案したものであるが,彼は友人のL.プレーフェアの名を形式名とした。プレーフェア暗号は第1次大戦中イギリス軍が主用したもので,現在でも一部に使用されている。…

【印刷電信】より

… 印刷電信はモールス通信とは別個に発達した。印刷電信の先駆をなしたものは指示電信であり,1837年にイギリス人C.ホイートストンによって実用機が作られた。これは配列された文字の位置に相当する数だけ電流パルスを送って指針を1目盛ずつ進ませ円盤上の文字を指示させるものである。…

【コンサーティーナ】より

…手風琴と呼ばれる。イギリス人ホイートストンCharles Wheatstoneが発明し,1829年に特許を取った。六角形で,両手にボタンがあってともに〈押し〉と〈引き〉で別の音を出す。…

【電信】より

…電信の業務運営はアメリカ,カナダ,イギリス,日本を除いては国,または公共企業体で行われている。 電信の歴史は,1837年にS.F.B.モースが発明したモールス電信と,37年にC.ホイートストンらが発明し印刷電信の発端となった指示電信機に始まる。日本では,49年(嘉永2)に佐久間象山が松代藩においてオランダの文献《理学原始第2版》(1847)をもとに指示電信機を作り,電信の実験に成功している。…

※「ホイートストン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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