ホルツ
ほるつ
Arno Holz
(1863―1929)
ドイツの作家。ラステンブルク(現、ポーランド、ケントシン)生まれ。幼時からベルリンで育ち、詩人として、のちに自然主義運動の担い手となる作家サークルに迎えられ、古典的伝統と決別して新しい社会の現実を対象とする詩集『時代の書』(1886)を発表。1891年には『芸術、その本質と法則』という論文で、外国の自然主義運動理論にも影響されて徹底自然主義を推進した。「芸術=自然マイナスX」は彼の唱えた有名な定義である。シュラーフとの共作には、「秒体」とよばれる細密な環境描写を特徴とする小説、『パパ・ハムレット』(1889)、『ある死』(1889)、戯曲『ゼーリッケ一家』(1890)がある。また機関誌『自由劇場』(後の『新展望』誌)の編集長となった。連作詩集『ファンタズス』(1898~1899)は、『叙情詩の革命』(1899)で追求した新しいリズム理論の実践であるが、幻想的なバロック詩の形式からも学んでいる(『ダフネ』1904)。イェルシュケとの合作では悲喜劇『トラウムルス』(1904)、『イグノラビームス』(1913)を書いている。
[岩淵達治]
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ホルツ
Holz, Arno
[生]1863.4.26. ラステンブルク
[没]1929.10.26. ベルリン
ドイツの詩人,劇作家。詩集『時代の書』 Das Buch der Zeit (1885) で名をあげ,ゾラの自然主義理論をさらに進めた『芸術,その本質と法則』 Die Kunst,ihr Wesen und ihre Gesetze (90~92) により「徹底自然主義」を提唱し,実作面では J.シュラーフと協力して短編集『ハムレット親父』 Papa Hamlet (89) や戯曲『ゼーリッケ一族』 Die Familie Selicke (90) などで写真のような「瞬間描写」の方法を開拓した。その後も喜劇『トラウムルス』 Traumulus (1904) ,悲劇『日食』 Sonnenfinsternis (08) ,バロック的な形式の壮大な詩集『ファンタズス』 Phantasus (1898) などを残した。
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ホルツ
Arno Holz
生没年:1863-1929
ドイツの作家,詩人。〈徹底自然主義〉の創始者。ゾラの影響の下に,芸術は自然の忠実な再現であることを要求し,刻々と変わる現実を微視的,包括的にとらえる〈寸秒文体Sekundenstil〉をシュラーフJohannes Schlaf(1862-1941)との共著《パパ・ハムレット》(1889)で試みた。抒情詩でも伝統の詩形式を廃し,散文に近い自由なリズムで外界の印象や空想を歌った。《ファンタズス》(1898)はユーゲントシュティールの夢幻的世界を現出させている。
執筆者:石丸 昭二
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ホルツ
ドイツの作家。《芸術,その本質と法則》(1891年)で〈徹底自然主義〉を提唱,詩人シュラーフJohannes Schlaf〔1862-1941〕と共著の短編集《パパ・ハムレット》,戯曲《ゼーリケ一族》はその実践である。一方,詩集《時代の書》ののち内的リズムによる作詩を主張,《ファンタズス》(1898年)を書く。
→関連項目自由舞台|ハウプトマン
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