ボクトウガ(読み)ぼくとうが

改訂新版 世界大百科事典 「ボクトウガ」の意味・わかりやすい解説

ボクトウガ (木蠹蛾)
Cossus vicarius

鱗翅目ボクトウガ科の昆虫。翅の開張4~5cm。体,翅とも樹皮のような黒褐色で,前翅にこまかい黒線や波状線が無数にある。北海道から九州までと中国に分布する。成虫は夏に出現し,灯火に飛来する。幼虫は各種の樹木にトンネルを掘って,内部を食べる。ボクトウガ科Cossidaeは小さな科で,日本には7種知られている。そのうちの最大種はオオボクトウC.cossusで,翅の開張6~7.5cm。色彩斑紋はボクトウガとよく似ている。ヨーロッパから日本まで,ユーラシア大陸の北部に分布する。幼虫はニレ,ヤナギその他の樹木にトンネルを掘る。ゴマフボクトウZeuzera multistrigataは前2種より翅が細く,白地青色をおびた黒紋を散布する。北海道から屋久島まで,対馬,朝鮮半島,シベリアから中国を経て東南アジアに分布する。きわめて普通な種でよく灯火に飛来する。幼虫はクヌギ,クリほか多くの樹木に潜って食害する害虫である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボクトウガ」の意味・わかりやすい解説

ボクトウガ
ぼくとうが / 木蠹蛾
[学] Cossus jezoensis

昆虫綱鱗翅(りんし)目ボクトウガ科に属するガ。はねの開張40~55ミリメートル。前後翅とも黒褐色。前翅には無数の黒色短線を散布し、やや太い外横線が前縁からはねの幅の3分の2くらいまで走り、さらに細い亜外縁線と結合する。北海道、本州、四国、九州に分布し、初夏に出現する。幼虫は各種の樹木の幹に孔道を掘って食害する。ボクトウガ科は小さい科で、おもに熱帯圏に分布し、日本産として知られているものは7種にすぎない。いずれも幼虫が樹幹に孔道を掘る害虫で、羽化するまでに2~4年かかるものが多い。英名のcarpenter moth(成虫)あるいはcarpenter worm(幼虫)は、幼虫の習性にちなんで名づけられたものである。東南アジアの熱帯雨林には、はねの開張150ミリメートルに達する大形種も分布している。木材業、果樹園、ココア、コーヒー、チャなど経済上重要な樹木に被害を与える害虫も多い。

[井上 寛]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボクトウガ」の意味・わかりやすい解説

ボクトウガ
Cossus japonica

鱗翅目ボクトウガ科。前翅長 42~56mm。体は太く,翅は比較的小さい。体翅とも灰色で,前翅に不明瞭な黒褐色の横帯がある。触角は葉片状であるが,互いに密着し,扁平である。幼虫はナラやクヌギの樹幹を穿孔し,成虫は6~7月に出現する。北海道,本州,九州に分布する。なお,ボクトウガ科 Cossidaeは中~大型のガで口吻を欠き,原始的な科と考えられている。幼虫はいずれも樹幹を穿孔して食害する。世界に約 550種,日本にはオオボクトウ C. cossus,ゴマフボクトウ Zeuzera leuconotumなど数種が知られている。

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百科事典マイペディア 「ボクトウガ」の意味・わかりやすい解説

ボクトウガ

鱗翅(りんし)目ボクトウガ科の1種。日本全土に分布。開張34〜74mm。暗灰色,黒色の細かい模様がある。幼虫はナラ,クヌギその他の幹に食い入り,成虫は年1回夏に発生する。ボクトウガ科は日本に数種,いずれも口吻(こうふん)がなく,夜間活動し,灯火によくくる。幼虫は木の幹に食い入る。ゴマフボクトウが最も普通。

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