ボルタ(読み)ぼるた(英語表記)Count Alessandro Volta

精選版 日本国語大辞典 「ボルタ」の意味・読み・例文・類語

ボルタ

(Count Alessandro Volta コント=アレッサンドロ━) イタリア物理学者電気学の始祖。ボルタの電池を発明。電圧単位のボルトは彼の名にちなむ。(一七四五‐一八二七

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「ボルタ」の意味・読み・例文・類語

ボルタ(Alessandro Volta)

[1745~1827]イタリアの物理学者。静電気を研究し、電気盆蓄電器検電器などを考案ガルバーニ電気を検討し、接触電位差によることを発見。定常電流を得るボルタ電池を発明した。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボルタ」の意味・わかりやすい解説

ボルタ
ぼるた
Count Alessandro Volta
(1745―1827)

イタリアの物理学者。イタリア北部のコモに生まれる。同地の王立学院を卒業し、1774年にそこの物理学教授、5年後にはパビア大学の自然哲学教授になった。さらに1815年パドバ大学に迎えられその理学部長を兼務した。

 初め詩や散文など文学に深い関心をもっていたが、ルクレティウスの『物の本質について』を読んで感銘を受け、自然探究への志を強くした。18歳ごろから静電気学の研究に進み、当時この分野の権威であったノレJean-Antoine Nollet(1700―1770)やベッカリーアGiambatista Beccaria(1716―1781)に文通を通じて指導と多くの示唆を受けた。1769年、最初の論文「電気火の引力について」をベッカリーアへの手紙の形で発表した。以後、空中電気の測定を含め静電気の研究を進め、電気盆、蓄電器、検電器など一連の電気機器を考案した。また、同じころに沼気(メタン)の研究などの気学の研究も行っている。

 イタリアの解剖学者ガルバーニが有名な「カエルの実験」によって動物の体内に電気発生の機構が存在すると結論し、10年に及ぶその研究結果を1791年に発表すると、ボルタはただちにこの問題に取り組んだ。初めガルバーニの説を受け入れていたが、追試などの検討を経て、やがてそれを否定し、異種の金属の接触自体に電気発生の原因を求めた。動物電気論者との論争を行いつつ、1794年から1797年にかけて、彼は自分の考案した精密な検電器を使って種々の異種金属間の接触によって生じる電気量を測定し、金属の電気列(電気化学列)をみいだし、接触電位差の考えに到達した。こうして1799年に、銅板亜鉛板の間に湿った布を挟んだものを何十組も重ねて有名な「ボルタの電堆(でんたい)」をつくり、さらに銅と亜鉛を希硫酸溶液に浸した電池を発明し、翌1800年それをイギリスの王立協会に報告した。この発明は、持続的な定常電流の獲得を可能にすることによって、その後の電磁気学や電気化学の発展を招来する画期となった。1801年、ボルタはアカデミー・フランセーズの大集会でナポレオンを前にして電気実験を供覧した。このときナポレオンは彼に金メダル勲章を贈り、のちに伯爵称号を与えた。彼は王立協会からその会員に推挙されるとともにコプリ・メダルを受け、フランス政府からはレジオン・ドヌール勲章を贈られるなど数々の栄誉のうちに、1827年3月5日に郷里のコモで没した。

[井上隆義]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ボルタ」の意味・わかりやすい解説

ボルタ
Alessandro Giuseppe Antonio Anastasio Volta
生没年:1745-1827

イタリアの物理学者。コモの生れ。少年時代に読んだルクレティウスの《事物の本性について》に感銘を受けて化学や電気学に関心をもつようになり,18歳から電気の研究に取り組み,一方,フランスのJ.A.ノレなどとの文通によっても多くの知識を得た。彼の最初の研究成果は,1769年トリノの物理学教授をしていたG.ベッカリーアあての手紙の中で述べられている。そこにはすでに電気盆の着想がみられるが,この装置についてはその後の75年のJ.プリーストリーあての手紙の中で,エレットロフォロ・ペルペトゥオ(いつまでも電気を担っているものの意味)の名で完成が述べられている。75年コモの王立学院の物理学教授となり,78年からはパビア大学で物理学を教えた。ボローニャ大学の解剖学者ガルバーニは,80年からカエルの脚に及ぼす電気作用の研究をしており,カエルの脚の筋肉収縮は脳髄から出て神経を通って筋肉に流れ込む〈動物電気〉の作用によるという説を提唱していた。これに対してボルタは,さまざまな実験を基礎にして,この〈動物電気〉説に反対し,93年,作用は何らかのしめった物体に接触した金属から発するという〈金属電気〉説を提唱し,さらにその後,しめった物体がなくとも異種の金属板を互いに接触させただけで,それぞれ異符号の電気を帯びることも見いだした。しかし金属板だけをいくら重ねても,回路に起電力を生じさせることができないことに気づき,1800年のローヤル・ソサエティ会長あての手紙の中で,電流発生装置として,銀円板と亜鉛円板の間にしめった厚紙をはさんだものを柱状に積み上げた装置(電堆と呼ばれた)を示し,同時に,塩水を入れたコップを銀板と亜鉛板の2種の金属を結んだ円弧でつなぐコップ電池についても述べている。この電堆や電池の発明は,連続して電流をとり出すことを初めて可能とし,静電気に代わって動電気の時代を開くことになった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「ボルタ」の意味・わかりやすい解説

ボルタ

イタリアの物理学者。1779年パビア大学教授。電気盆検電器を発明。ガルバーニ電気(ガルバーニ)を研究して接触電気(接触電位差)を発見(1797年),ボルタ電堆(でんたい)とボルタ電池を発明して1800年に発表。電流の研究・応用の端緒を開いた。電圧の単位ボルトは彼にちなむ。→ボルタの法則ボルタの列
→関連項目ボルト(単位)

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

化学辞典 第2版 「ボルタ」の解説

ボルタ
ボルタ
Volta, Alessandro Giuseppe Antonio Anastasio

イタリアの物理学者.コモ王立学院卒業後に静電気の研究をはじめ,1769年には“電気火の引力”を出版した.1775年母校の物理学教授となり,電気盆を考案し,また沼気(メタン)の研究を行った.1779年パビア大学の物理学教授となる(~1819年).1782年に,論文“もっとも弱い人工的または自然的電気をもきわめて感知しやすくする方法について”をイギリスのロイヤル・ソサエティで発表,また1787年には微量の電気を検出できる麦ワラ験電器を発明し,1791年にロイヤル・ソサエティ会員となるなど,静電気学研究で評価を受けた.1791年L. Galvani(ガルバーニ)による実験を知り,かれの動物電気説を批判して,異なる金属による接触から電気が発生する説(接触説)を唱えた.これらの成果は“異種導体の単なる接触によって起こされる電気について”と題して,イギリスのロイヤル・ソサエティで朗読された.1801年Napoléonに招かれ,一連の発明をフランス人科学者らの前で報告するなど,英仏の科学者と活発な交流を行った.1816年に著作集全5巻を刊行.1827年にコモで死去した.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボルタ」の意味・わかりやすい解説

ボルタ
Volta, Alessandro Giuseppe Antonio Anastasio, Conte

[生]1745.2.18. コモ
[没]1827.3.5. コモ
イタリアの物理学者。コモ高等学校教授 (1774) ,パビア大学教授 (79) ,パドバ大学哲学部長 (1815) 。 1775年電気盆を,81年検電器を発明。 97年ガルバーニ電気が生物体に関係なく金属だけで電流が得られることを示した。これがきっかけで動物電気説を唱えるものとの論争が起ったが,1800年ボルタ電堆およびボルタ電池の発明によってボルタの説は不動の勝利を得た。電位の単位ボルトは彼の名にちなんだもの。ほかにメタンガスの発見 (1778) でも知られている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル大辞泉プラス 「ボルタ」の解説

ボルタ

アメリカのSFテレビドラマ・映画シリーズ「スタートレック」に登場するヒューマノイド型異星人種属。ガンマ宇宙域の支配国家ドミニオンに属する種属で、戦闘種族のジェムハダーを統率する。代表的な登場キャラクターとしてウェイユンなどがいる。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のボルタの言及

【カンツォーネ】より

…普通一つの詩節は韻律の異なる二つの部分に分かれ,前半部をフロンテfronte,後半部をシルマsirmaと呼ぶ。さらにフロンテは同じ構造を有する通常二つの部分(ピエデpiede)に分かれ,シルマも同様に二つのボルタvoltaに分割し得る。1詩行は多く11音綴ないし7音綴である。…

【ガルバーニ】より

…これらは《筋肉の運動における電気力ノート》(1791)で公表されている。この説に対して賛否両論があったが,A.ボルタから痙攣は金属の接触によるとする強力な反論が提起された。通常ボルタの見解のほうが正しかったとされている。…

【起電機】より

…これは摩擦電気を利用した起電機で,その後改良され,初期の電気研究に用いられたが,18世紀後半になると静電誘導の現象を利用した起電機が主流となった。(1)電気盆 1775年にA.ボルタが発明したもので,図1のように絶縁体の柄をつけた金属板とエボナイト板からなる。あらかじめ摩擦により負の電荷を帯電させたエボナイト板に金属板を近づけ,同時に金属板を接地すると,金属板は静電誘導により正に帯電する。…

【接触電位差】より

…二つの異なる導体を接触させたとき,両者の間に生ずる電位差。この現象はA.ボルタによって発見されたので,ボルタ効果Volta effectと呼ばれる。接触前には二つの導体A,Bの電子に対する化学ポテンシャルは一般に異なった値をとる。…

※「ボルタ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android