ポップアート

精選版 日本国語大辞典 「ポップアート」の意味・読み・例文・類語

ポップ‐アート

〘名〙 (pop art) 漫画・ポスター商標映画などにあらわれる大衆的な影像を主題としてとりいれた前衛美術。第二次世界大戦後イギリスにおこり、一九六〇年代にアメリカを中心に広がった。
※三匹の蟹(1968)〈大庭みな子〉「近頃流行の、ポップ・アートなんて真似はやめなさい」

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デジタル大辞泉 「ポップアート」の意味・読み・例文・類語

ポップ‐アート(pop art)

漫画・ポスターなどマスメディアに登場する図像を素材に取り入れた前衛美術。1960年代、米国を中心に広まった。

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改訂新版 世界大百科事典 「ポップアート」の意味・わかりやすい解説

ポップ・アート
pop art

1960年代前半,おもにニューヨークを中心に展開した,戦後美術の大きな運動のひとつ。マス・メディアによるマス・コミュニケーションを特色とする大衆消費情報社会は,60年代に高揚期を迎えたが,一群の美術家たちは,広告デザイン,量産品,写真,テレビの映像などを主題とし,制作方法もシルクスクリーンなどのマス・メディアの方法を援用して,大衆社会の〈イコン〉をあっけらかんと華麗に表出し,ポップ・アートの全盛期を築きあげた。もっとも,先駆的な現象は,1950年代のロンドンの若い美術家たちの活動にすでに見られた。ハミルトンRichard Hamilton(1922- ),パオロッツィEduardo Paolozzi(1924- ),ピーター・スミッソンらは,早くから,ポップ・ミュージックやアメリカ映画やサイバネティックスやファッションやSFなど,大衆社会の新しいサブカルチャーに注目し,研究会や展覧会を開いたのである。ポップ・アートという名称も,ハミルトンの写真コラージュの作品に,ボディビルの男が手にした巨大なキャンディに〈POP〉という字が大きく書かれていたことから生まれたといわれる。また,この派の批評家アロウェーLawrence Alloway(1920- )が60年代にニューヨークに移住し,一群のアメリカ作家の作品を総称して,〈ポップ・アート〉と呼んだことで,この名称が定着したともいう。ニューヨークのポップ・アートは,1940年代後半から50年代にかけてニューヨークで爛熟した抽象表現主義へのアンチ・テーゼとして生まれたとも見られる。抽象表現主義の超越的な精神主義に対して,ポップ・アートは卑俗・日常的なマス・メディア的大衆性を強調したわけであり,両者の分水嶺位置を占めるのが,R.ラウシェンバーグJ.ジョーンズである。漫画を印刷の網目ごと拡大したようなR.リクテンスタインモンローコカ・コーラの像を繰り返し並べたA.ウォーホル,巨大広告を転用したローゼンクイストJames Rosenquist(1933- ),布製の巨大なハンバーガーやアイスクリーム・コーンを作ったC.オルデンバーグ,女性のヌードやスーパーマーケットの食品をけばけばしく描いたトム・ウェッセルマンTom Wesselmann(1931- )など,そこには戦後のアメリカ文化のけばけばしさが芸術の領域になだれ込んでいる。
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百科事典マイペディア 「ポップアート」の意味・わかりやすい解説

ポップアート

1960年代前半から,主にニューヨークを中心に展開した美術の動向。漫画の一コマ,映画スターの肖像,看板,工業製品など大衆消費社会を象徴するイメージを,忠実に描いたり,シルクスクリーンで転写する方法によりそのまま画面に導入した。抽象表現主義の精神性・作品の難解さに対する,主題の〈卑俗さ〉・平明な手法に特徴がある。先駆的存在としてダダ,とりわけデュシャンの〈オブジェ〉概念をあげることができるが,先行する世代にはジョーンズラウシェンバーグらネオ・ダダの作家や,英国のインディペンデント・グループがあり,ポップ・アートの名称もグループの一人であるハミルトンのコラージュ作品中に〈POP〉という字が書かれていたことに由来する。代表的な作家にリキテンスタインウォーホルローゼンクイスト,クレス・オルデンバーグ〔1929-〕,ロバート・マザウェル〔1915-1991〕,トム・ウェッセルマン〔1931-2004〕らがいる。1980年代のシミュレーショニズムにいたる美術のみならず,その後のポップ・カルチャーの形成にも影響を与えた。
→関連項目ホックニーミニマル・アート

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知恵蔵 「ポップアート」の解説

ポップアート

米国の大量消費社会から生み出される大衆文化のイメージを借用した、美術の動向。言葉自体は1950年代末に英国で生まれたが、62年、ニューヨークで開かれた「ニュー・リアリスツ」展で米作家たちの大量消費社会に対する肯定的な態度と、即物的な態度の作品が注目された。イメージの空虚さを強調するかのように、アンディ・ウォーホルは人気女優マリリン・モンローや、大量生産品のキャンベルスープ缶のイメージを無限に増殖させるような絵を描き、ロイ・リキテンシュタインは、マンガのひとコマを絵画として描き直した。オルデンバーグは日常の事物を巨大にしたり、柔らかくした彫刻を発表。ほかにトム・ウェッセルマン、ジョージ・シーガルらがいる。

(山盛英司 朝日新聞記者 / 2007年)

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世界大百科事典(旧版)内のポップアートの言及

【アメリカ美術】より

…これには激しい動きを画面に投入したアクション・ペインティングの一派(J.ポロック,W.デ・クーニング,クラインFranz Kline(1910‐62)ら)と,平面的な色面によるカラー・フィールド・ペインティングColor‐Field Paintingの流れ(M.ロスコ,ニューマンBarnett Newman(1905‐70),スティルClyfford Still(1904‐80),ラインハートAd Reinhardt(1913‐67)ら)があり,両者とも巨大なキャンバスをいっぱいに使った衝撃的な絵画を創造した。 40年代後半から50年代半ばごろまでが抽象表現主義絵画の全盛期だったが,クライン,ポロックの相つぐ死去および抽象表現主義絵画そのものが抱えていた問題によって50年代末から崩壊し,代わってポップ・アートと新抽象(ポスト・ペインタリー・アブストラクションPost‐Painterly Abstraction)の二つが現れる。個人的な主観主義の袋小路に入りこんだ抽象表現派の行きづまりを批判的に乗り越えようとしたのがこの世代で,彼らは抽象表現派が一時的に結びつけたシュルレアリスムとキュビスムを元の姿に解体し,そのうえで時代に対応する新しい方向をさぐった。…

【イギリス美術】より

…特にF.ベーコンは現代の不安や恐怖,悲劇を独特のデフォルメと色彩によって表現し,現代イギリスの最も注目すべき画家の一人となった。戦後のイギリスはまたアメリカに先んじて1955年ころからポップ・アートを生み出した。その代表的作家にはハミルトンRichard Hamilton(1922‐ ),ブレークPeter Blake(1932‐ ),パオロッツィEduardo Paolozzi(1924‐ ),ジョーンズAllen Jones(1937‐ ),ホックニーDavid Hockney(1937‐ )らがいる。…

※「ポップアート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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