マガダ国(読み)マガダこく(英語表記)Magadha

山川 世界史小辞典 改訂新版 「マガダ国」の解説

マガダ国(マガダこく)
Magadha

インド東部の地域名,国名。現在のビハール州南部にあたる。前5世紀に十六大国の一つとして台頭して以降6世紀半ばまで,マウリヤ朝からグプタ朝に至る強力な国家拠点として,政治,経済,文化の中心であった。政治的には,グプタ朝滅亡後,カナウジに北インドの中心としての地位を奪われていったが,パーラ朝の拠点の一つとして12世紀まで重要性を保った。前5世紀には思想上の先進地域であり,特に仏教ジャイナ教発祥地である。仏教については,マウリヤ朝のアショーカからカナウジのハルシャ・ヴァルダナベンガルのパーラ朝に至る諸王の保護もあって,ナーランダーをはじめとする多くの僧院が栄え,中心地であり続けた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マガダ国」の意味・わかりやすい解説

マガダ国
マガダこく
Magadha

古代インド,ビハール州南部の平野部にあった国。前6世紀より 1000年以上にわたり古代インドの政治,経済,文化の中心であった。この国に興った諸王朝の都は初めラージャグリハ (王舎城) におかれたが,前5世紀後半 (あるいは前4世紀前半) からガンジス河畔のパータリプトラ (華氏城) に移された。ブッダジャイナ教の始祖バルダマーナが活躍したのは,この国を支配したビンビサーラ王とその子アジャータシャトル王の時代であり,この両王の時代 (前6~5世紀) からマガダ国は領土を四周に広げ,のちのインド統一の基礎を築いた。肥沃なガンジス平原の中央に位置したこの国は,農産物のほか鉱産物にも恵まれていた。前4世紀末にこの国に興ったマウリヤ朝はこうした経済力を背景にインド亜大陸のほぼ全域を統一した。また4~5世紀にはグプタ朝がこの地に興り,北インド全域を支配している。現在,パトナ (旧パータリプトラ) ,ナーランダ,ラージギル (旧ラージャグリハ) ,ブッダガヤーなどの地で,仏教時代の遺跡が多く発掘,保存されている。

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旺文社世界史事典 三訂版 「マガダ国」の解説

マガダ国
マガダこく
Magadha

ガンジス川中流域で栄えたインドの古王国
アーリア人の侵入後,前6〜前5世紀にできた16国のうちの1つであったが,しだいに他の国を征服してインドを統一。シスナーガ朝のとき,都をラージャグリハからパータリプトラに移す。ナンダ朝をへてマウリヤ朝時代になると,アショーカ王はほぼ全インドを統一し,ダルマ(法)による統治を行ったが,彼の死後急速に衰微・分裂した。その後,前1世紀末までシュンガ朝・カーンバ朝と続いたが,ガンジス川流域を支配するにとどまった。4世紀になり,グプタ朝がおこって強大な帝国を建設した。マガダ国が栄えたのは,穀倉地帯であり交通の便が良いことに加え,鉄鉱石産地だったことによる。

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