日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
マクドナルド(Arthur McDonald)
まくどなるど
Arthur McDonald
(1943― )
カナダの物理学者。ノバスコシア州シドニー生まれ。1964年にダルハウジー大学卒業。1965年に物理学修士号を取得し、1969年にカリフォルニア工科大学で博士号を取得。1970年からチョーク・リバー研究所の研究官を経て、アメリカのプリンストン大学教授、カナダのクイーンズ大学教授などを務めた。1989年からサドバリー・ニュートリノ観測研究所長。
素粒子物理学の分野では、1960年代後半から観測実験などで、素粒子の一種であるニュートリノには質量があるのではないかという指摘がなされていた。マクドナルドは、太陽から放出されるニュートリノが地球上の観測器では理論値より少ない数しか検出できないのは、ニュートリノが振動によって変身したために観測できなくなったからではないかと考えた。振動による変身が事実ならニュートリノに質量があることになる。2001年マクドナルドを中心とした研究チームは、カナダのオンタリオ州サドバリーにあるニッケル鉱山の地下約2000メートルの場所に建設されたサドバリー・ニュートリノ観測所(SNO)で、太陽からの電子ニュートリノがμ(ミュー)ニュートリノとτ(タウ)ニュートリノへと変化し、ニュートリノ振動が起きていることを示す観測データをとらえ、2001年8月に学術誌で発表した。2007年に「ニュートリノが質量をもつことを示した」理由でベンジャミン・フランクリン・メダル物理学部門賞を戸塚洋二とともに受賞。2011年にはカナダ王立協会のヘンリー・マーシャル・トーリー・メダルを受賞、2015年「素粒子ニュートリノが質量をもつことを示すニュートリノ振動の発見」の業績で梶田隆章(かじたたかあき)とノーベル物理学賞を共同受賞した。
[馬場錬成 2016年5月19日]