マクロビウス(英語表記)Ambrosius Theodosius Macrobius

改訂新版 世界大百科事典 「マクロビウス」の意味・わかりやすい解説

マクロビウス
Ambrosius Theodosius Macrobius

400年ころ活躍したローマの著述家。生没年不詳。著書として,キケロの《国家論》第6巻第8章に相当する霊魂死後の運命を論じた《スキピオの夢》の注解2巻,ギリシア・ローマ伝来の神々の統合を比喩的解釈を通して試みた《サトゥルナリア》7巻,中世における要約のみが伝存する《ギリシア語とラテン語との動詞異同》がある。前2者は,いずれもプロティノスポルフュリオス等の発想を基調とし,12世紀中葉までカルキディウスプラトンの《ティマイオス》の訳と注解と並んで,西方ラテン世界におけるプラトン主義の知識の源泉としての意義をになう。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マクロビウス」の意味・わかりやすい解説

マクロビウス
Macrobius, Ambrosius Theodosius

400年頃活躍したローマの文献学者,哲学者代表作はウェルギリウス研究を含む対話篇『サトゥルナリア』 Saturnalia (7巻) と,哲学的著作『スキピオの夢の注釈』 Commentarii in somnium Scipionis。

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世界大百科事典(旧版)内のマクロビウスの言及

【占い】より

…既に,アリストテレスは,夢が神から送られてくるものではなく,人間の精神の機構と結びつくものとみなしているが,それでも,この夢見のための籠りは近世に至るまで一貫して世界の各地で行われ続けたのである。2世紀初頭に生まれたアルテミドロスは,ギリシア・ローマにおける夢占いの実際をもっとも詳細に記した人物であるが,その《夢判断》は,マクロビウスの《スキピオの夢》とともに,古代後期の夢占いの体系をよく伝えている。 木の枝または棒を用いる占いも起源は古い。…

【中世科学】より

…5世紀になると,それまで細々と伝わっていたギリシア・ローマの科学の伝統を集大成して,いわゆる〈四科quadrivium〉(幾何学,天文学,算術,音楽)の摘要書をつくろうという動きが生じてきた(自由七科)。そのようなものとして,マクロビウス,マルティアヌス・カペラ,カッシオドルス,ボエティウス,イシドルスらの著作が挙げられる。これらの内容は,まだそれほど水準の高いものではないが,中世前期において西欧知識人の基本的な科学的教養を培ったものとして重要である。…

【ラテン文学】より

…古代ローマ精神の復活を図る世俗作家たちの代表格だった雄弁家シンマクスは,キリスト教に反対してアンブロシウスと論争し,また古典を学んでローマをたたえた詩人ルティリウス・ナマティアヌスも反キリスト教的であったが,しかし異教最後のラテン詩人クラウディアヌスには,もうそのような反抗はみられない。このほか5世紀初頭には文献学者マクロビウスや,いわゆる自由七科についての百科全書的記述によって,中世教育制度の基礎を築いた修辞学者のマルティアヌス・カペラがいる。さらに6世紀には,中世に聖書に次いで愛読された《哲学の慰め》の著者ボエティウスが,最後の世俗ラテン作家となった。…

※「マクロビウス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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