マサイ族(読み)マサイゾク(英語表記)Maasai; Masai

デジタル大辞泉 「マサイ族」の意味・読み・例文・類語

マサイ‐ぞく【マサイ族】

Masaiアフリカケニア南部からタンザニア北部にかけて住む、マサイ語を話す諸部族の総称狭義には、そのうちウシやヤギを飼う牧畜マサイ族をさす。

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精選版 日本国語大辞典 「マサイ族」の意味・読み・例文・類語

マサイ‐ぞく【マサイ族】

〘名〙 (Masai) アフリカ、ケニア南部からタンザニア北部にかけて住む、マサイ語を話す諸部族の総称。狭義には、そのうちウシやヤギを飼う牧畜マサイ族をさす。

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改訂新版 世界大百科事典 「マサイ族」の意味・わかりやすい解説

マサイ族 (マサイぞく)
Masai

東アフリカのケニアとタンザニアにまたがる面積約10万km2の草原サバンナ地域に分布する牛牧畜民。人口約23万。パラ・ナイル系マサイ語を使用する。長身,長頭で高い鼻,長い足をもち,髪は波状毛,皮膚は淡褐色~濃褐色を呈する。地中海人種黒人混血とする説と,地中海人種の影響を否定する説がある。生活圏は標高700~3000mに位置し,4~5月,10~11月の年2回の雨季がある(年降水量は200~1200mm)。生計の基盤は家畜飼養に置かれ,農耕は行わない。畜産物(乳,肉,血)を主食とするが,食料不足のときにはヤギ,羊を売却して穀物を購入する。ヤギ,羊は肉用,供犠用,換金用動物として使用され,ロバは駄用として用いられる。牛は肉用,換金用として使用されることもあるが,乳用動物,供犠用動物,社会的交換財として,より重要な役割を果たしている。父系出自集団クラン,サブ・クラン,リネージなどに分節しており,クランが外婚単位となる。ただしこれらの出自集団は居住集団とは一致せず,社会的,儀礼的,政治的な自律性は17個の命名された地域集団ごとに認めることができる。男の社会的発達は,年齢体系によって規定される。少年は集団割礼式を経て年齢組に加入した後,青年として7~14年過ごし,結婚する。青年には厳しい行動規範が課せられる。結婚して長老になると放牧の仕事から手を引き,集落において政治・宗教活動,家畜などの財産管理などに専念する。一夫多妻で,長老は1~5人の妻を持つ。少年,青年は主として牛の世話,少女はヤギ,羊の世話をする。搾乳は女性の特権的仕事と考えられている。居住集団は20~50戸の小屋からなる〈長老の集落〉と50~100戸の小屋からなる〈青年の集落〉に二分されている。男は,青年になると父親のもとを離れて,年齢組の同輩に合流して青年の集落を作り,自分たちで協同管理する。やがて青年が妻をもち,次の年齢組が形成されて新しい青年層ができると,それまでの青年の集落は長老の集落と呼ばれるようになる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マサイ族」の意味・わかりやすい解説

マサイ族
マサイぞく
Maasai; Masai

ケニア南部からタンザニア北部に居住する,ナイル語系のマア語(東スーダン諸語)を話す諸民族の総称。総人口は 60万人以上と推定される。牧畜民のパストラル・マサイ(イルマサイ)族を中心にサンブル族アルーシャ族,バラグユ族などを含む。パストラル・マサイ族の男子は長槍,短剣を携え,女子は頭髪を剃り,皮や赤い綿布を着用,男女ともビーズや金属の首飾り,足輪などを好む。ゼブ牛を中心にヒツジ,ヤギなどの遊牧を行ない,主食は家畜の肉や乳で,農耕,狩猟は行なわない。年齢組体系をもち,誇り高く,伝統的生活様式を保持して,文化変容に強い抵抗を示している。ほかのマサイ族は,本来パストラル・マサイ族とは起源的・文化的に異なる独自の集団を形成してきたが,植民地支配を受けて以降,全マサイを一つの民族集団ととらえるような帰属意識が生まれたと考えられる。

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