マダラガ(読み)まだらが

改訂新版 世界大百科事典 「マダラガ」の意味・わかりやすい解説

マダラガ (斑蛾)

鱗翅目マダラガ科Zygaenidaeの昆虫総称。翅の開張1cmの小型種から7cmに達する大型種を含む科で,アジアの熱帯から亜熱帯に属種とも多い。日本産として知られているものは28種。多くの種が昼飛性で,はでな色彩や斑紋をもつものが少なくない。目だつ色彩で昼間活動する種は,いやなにおいや分泌物を出すため,捕食性の鳥獣が敬遠するし,一部の種は,ハチと外見上よく似ているために,捕食をまぬがれているものと推定される。触角櫛歯(くしば)状の種が多いが,ベニモンマダラのように棍棒状で,チョウに似た形の種もある。幼虫は太く短いナメクジ型で,体をおおう毛はまばらなことが多い。タケノホソクロバBalataea funeralisは,タケササ害虫であるばかりでなく,毒針毛をもつので,触れると皮膚にささり,痛みや発疹ができる。このほか日本で害虫とされているものは,マサキニシキギの葉を食害するミノウスバPryeria sinicaウメサクラにつくウスバツバメガElcysma westwoodii,ウメスカシクロバIlliberis rotundataリンゴナシ,サクラなどを食害するリンゴハマキクロバI.pruniなどがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マダラガ」の意味・わかりやすい解説

マダラガ
まだらが / 斑蛾

昆虫綱鱗翅(りんし)目マダラガ科Zygaenidaeのガの総称。はねの開張15ミリメートルの小形種から80ミリメートルに達する大形種まであり、はねの形、色彩などさまざまなタイプのガを含む科で、成虫は昼飛性で、美しい色彩の種が多い。幼虫、成虫とも、捕食性の鳥やコウモリの嫌うにおいや分泌物を出す。体翅の美しいはでな色彩は、捕食動物に対し、自分たちの「まずさ」を広告しているものと考えられている。熱帯、ことに東南アジアに属種が多く、しばしばアゲハチョウ、シロチョウ、マダラチョウなどと驚くほど似たはねの形や色彩斑紋(はんもん)をもち、同一地域でチョウと同じように昼間活動する。このように擬態関係にあるものと推定される種についての、生態学的な研究はまだ十分に行われていない。

 日本には28種が知られ、大部分は小形種であるが、南西部には大形の美麗種も分布している。奄美(あまみ)大島以南に産するクロツバメの幼虫は、アカギの葉を食べ、色や形がジャコウアゲハとよく似ているし、成虫はクロアゲハやジャコウアゲハを連想させる。リンゴハマキクロバの幼虫はリンゴやナシの、ブドウスカシクロバはブドウの害虫としてよく知られている。タケノホソクロバの幼虫はタケやササの葉を食べ、毒刺毛をもつため皮膚に刺さると激しい痛みを感じ、湿疹(しっしん)ができるので衛生害虫の一つに数えられている。マサキの生け垣に加害するミノウスバの幼虫は、しばしば多発して垣根を丸坊主にしてしまう。

[井上 寛]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マダラガ」の意味・わかりやすい解説

マダラガ
Zygaenidae; burnet moth

鱗翅目マダラガ科に属する昆虫の総称。昼飛性のガの類で,ミノウスバ,ホタルガ,マダラガの3亜科に分れる。後2者には美しい種が多く,特に熱帯で著しい。幼虫は一般に太く短く,軟毛をもち,地上に細長い繭をつくって蛹となる。日本には約 20種を産する。ミノウスバ類は日本にはミノウスバ 1種のみ。ホタルガ類ではホタルガ,オキナワルリチラシ Eterusia aedea sugitanii,サツマニシキ Erasmia pulchella sangaicaなどの美麗種がある。マダラガ類にも暗色の翅に紅色紋をもつベニモンマダラ Zygaena niphonaのような目立つ種が含まれる。

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