マメゾウムシ(読み)まめぞうむし(英語表記)seed beetle

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マメゾウムシ」の意味・わかりやすい解説

マメゾウムシ
まめぞうむし / 豆象虫
seed beetle
bean weevil

昆虫綱甲虫目マメゾウムシ科Bruchidaeに含まれる昆虫の総称。広く世界中に分布し、およそ1500種が知られ、日本には23種前後が産する。体長は1~10ミリメートル、普通5ミリメートル以下の小甲虫であるが、30ミリメートルに達するものもあるという。体は前部が細まった卵形のものが多く、頭は小さく、前胸は前方へ狭まって両側に稜(りょう)状の縁がある。上ばねは丸みのある四角形に近く、大きい尾節板は露出している。普通、赤褐から黒色であるが、体表には点刻と短毛が密にあり、毛によって斑紋(はんもん)を現すものが多い。後足の腿節(たいせつ)はかなり太まり、下縁に歯状の突起をもつことがあり、跗節(ふせつ)は5節であるが第4節はごく小さい。この類はほとんどの種類の幼虫がマメ科植物の実を食べて成育するので、人間が食用とする豆類を食害する種類は害虫として注目され、豆とともに人為的に世界中に広がっているものも少なくない。一般によく知られているアズキゾウムシエンドウゾウムシソラマメゾウムシなどのマメゾウムシの類はそのよい例で、緑豆などにつくヨツモンマメゾウムシや琉球諸島(りゅうきゅうしょとう)に侵入しているインゲンマメゾウムシなどもある。この類の卵は普通、豆の表面あるいは莢(さや)に産み付けられ、幼虫は白色か黄色でよく太っており柔らかで、孵化(ふか)すると豆の内部に食い入って食害し、成虫になって豆から脱出する。食害する豆の種類は、マメゾウムシの種類によってほぼ決まっており、産卵の時期や場所もそれぞれで異なり、豆の種類が違うと、幼虫は普通育たない。また、多くの場合1粒の豆では1匹しか成育しない。害虫とされる種類のなかにも野外で産卵するものと、アズキゾウムシのように貯蔵した豆に産卵し、いろいろな実験に用いられるものとあり、豆栽培の歴史と虫の害虫化や進化の関連も推測されている。

 日本の野外の種類にはサイカチマメゾウムシ、ネムノキマメゾウムシ、シリアカマメゾウムシ(ニセアカシア)、クロマメゾウムシ(ハマエンドウ)、ザウテルマメゾウムシ、イクビマメゾウムシ(クララ)などがある。

[中根猛彦]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「マメゾウムシ」の意味・わかりやすい解説

マメゾウムシ (豆象虫)

甲虫目マメゾウ科Bruchidaeの昆虫の総称。世界から1400種近くが知られるが,アジア,アフリカ,中央~南アメリカの熱帯に多くの種類が分布する。日本からはこれまでに23種が記録されている。幼虫の寄主植物として24科,400種が知られるが,その名のようにマメ科の植物の種子に寄生するものが多い。また約20種が食用マメ類を加害する。英名でもseed beetle,legume seed weevil,pulse beetleなどと呼ばれる。分類上はゾウムシ科よりもハムシ科やカミキリムシ科に近い。体長2~5mmの小型の種類が多い。触角がのこぎり歯状や櫛(くし)状のものが少なくない。上翅には条溝があり,腹部の後方(尾節板)が大きく裸出する。幼虫はよく肥満し,腹方へ曲がる。胸脚は微細。

 ソラマメゾウムシ,エンドウゾウムシなど野外型と呼ばれるものは成虫が畑の未熟なさや(鞘)に産卵。豆に潜り込んだ幼虫は豆の成熟とともに育つ。したがって完熟した豆だけでは生活を繰り返すことができない。一方,アズキゾウムシ,ヨツモンマメゾウムシなど屋内型と呼ばれるものは完熟した豆だけで生活を繰り返すことができる。食用マメの害虫として知られるマメゾウムシ類には穀類について分布を広げたものが多い。現在日本にいるソラマメゾウムシ,エンドウゾウムシも外国から侵入した種である。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マメゾウムシ」の意味・わかりやすい解説

マメゾウムシ
Bruchidae; seed beetle

鞘翅目マメゾウムシ科の昆虫の総称。体長 5mm以下。体は卵形,黒ないし褐色で,全体が褐,灰,黒,白色の,またはこれらの組合せによる斑紋を表わす。頭部は小さく,複眼は小さいが突出する。触角は複眼の前方から生じ,普通棍棒状であるが,鋸歯状または櫛状になることもある。前胸はほぼ三角形で後方に広がる。上翅はやや短く,大きな尾節板が露出する。肢の 跗節は5節であるが,第4節は小さく,第3節内に隠れる。幼虫はマメ科植物の種子を食べる大害虫で,マメとともに世界各地へ分布を広げた種が多い。エンドウゾウムシ Bruchus pisorum,ソラマメゾウムシ B. rufimanus,インゲンマメゾウムシ Acanthoscelides obtectusなど全世界に 900種が知られており,日本からも 20種余が記録されている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「マメゾウムシ」の意味・わかりやすい解説

マメゾウムシ

マメゾウムシ科に属する甲虫の総称。ハムシ科マメゾウムシ亜科とも。全世界に約900種,日本に約30種おり,体長5mm以下の小型種が多い。大部分の種類はマメ科植物の種子を食べるが,熱帯にはヤシ類の果実を食べるものもある。マメ類の開花期に産卵し,乾燥した種子中で発育するので外部から加害を発見するのは困難。エンドウゾウムシソラマメゾウムシアズキゾウムシなど重要害虫が多い。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android