マロニエ(英語表記)marronnier [フランス]
horse-chestnut
Aesculus hippocastanum L.

精選版 日本国語大辞典 「マロニエ」の意味・読み・例文・類語

マロニエ

〘名〙 (marronnier)⸨マルニエー⸩ トチノキ科の落葉高木。ヨーロッパ南部原産で、並木や公園樹として各地に植栽され、特にパリ街路樹は有名。高さ二〇~三〇メートル。枝は灰褐色。葉は長柄をもち対生し、葉身は掌状複葉で五~七枚の小葉からなる。小葉は長さ二〇センチメートルほどの倒卵状くさび形で縁に二重の鋸歯(きょし)がある。初夏、枝先には白に赤みのある径二センチメートルぐらいの四弁花が多数群がって咲き、大きな円錐花序となる。果実球形クリいがに似たとげがある。せいようとちのき。うまぐり。おおぐり。
▼マロニエの花《季・夏》
※仏国風俗問答(1901)〈池辺義象〉附録「並木のマルニヱー」

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デジタル大辞泉 「マロニエ」の意味・読み・例文・類語

マロニエ(〈フランス〉marronnier)

ムクロジ科の落葉高木。樹皮は灰褐色で、葉は大きく、5~7枚の倒卵形の小葉からなる手のひら状の複葉。初夏、赤みがかった白色の花を円錐状につける。実の殻にはとげがある。バルカン半島の原産で、街路樹などにされる。うまぐり。西洋とちのき。 花=夏》

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改訂新版 世界大百科事典 「マロニエ」の意味・わかりやすい解説

マロニエ
marronnier [フランス]
horse-chestnut
Aesculus hippocastanum L.

トチノキ科の落葉高木で,花は白くやや赤みをおびる。ギリシアからトルコにかけて分布し,欧米では街路樹として広く植えられる。パリのそれはとくに名高い。日本でもトチノキに交じってまれに植えられる。別名セイヨウトチノキウマグリ英名の直訳)。トチノキよりも小葉がやや小さく,裏面は無毛で,縁に鋭い重鋸歯があり,果実の突起はとげ状になる。花が紅色のベニバナトチノキA.carnea Hayneは,マロニエと北アメリカ原産で花が鮮紅色のアカバナアメリカトチノキA.pavia L.(英名buckeye)との雑種であり,これもときに植えられる。
執筆者:

マロニエの実を糸に通して互いにぶつけ合い,相手の実を割る遊びは,イギリスで〈トチの実遊びconker〉と呼ばれ親しまれている。これはもとカタツムリの殻を使った遊びで,conkerの名もconch(巻貝)とconquer(勝つ)の語呂合せから生じたらしい。この木には虫よけの効果があるとされ,川や森へ出かけるとき葉を帽子にさす人もいる。なおマロニエという名称はマロン(クリ)に由来し,マロングラッセも古くはマロニエの実が使われたという。また,英名ホース・チェスナット(ウマグリ)は大型で野卑なクリの意。名称にウマが冠せられる理由は,実が家畜の飼料とされたり,ウマの咳を治す薬に用いられたことによるらしい。花言葉は〈ぜいたくと健康〉。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マロニエ」の意味・わかりやすい解説

マロニエ
まろにえ
marronier フランス語
horse chestnut 英語
[学] Aesculus hippocastanum L.

トチノキ科(APG分類:ムクロジ科)の落葉高木。バルカン半島原産であるが、現在は世界中で植栽されている。高さは約25メートル。日本のトチノキに似ているが、果実の表面に刺(とげ)があるので区別され、セイヨウトチノキともよばれる。葉は大形の掌状葉で対生する。5月ころ、枝先に円錐(えんすい)花序をつけ、トチノキより大形で白地に赤みを帯びた花を多数開く。花を観賞する街路樹としてよく用いられパリの並木はとくに有名である。品種としては重弁花、斑(ふ)入り葉、切れ込み葉、ピラミッド樹形、枝垂(しだれ)樹形などがある。ベニバナトチノキA. × carnea Hayneは、マロニエと北アメリカ産のアカバナアメリカトチノキA. pavia L.の雑種で、1820年にみいだされた。

[伊藤浩司 2020年9月17日]

文化史

種小名や英名にみられるウマグリの名は、ヨーロッパに導入される以前ペルシアで、息切れしたウマの薬として使っていたから、あるいは若い枝の葉痕(ようこん)が馬蹄(ばてい)形であるからといわれる。異説もあるが、1576年にウィーンに種子がもたらされ、ヨーロッパに広がったものである。

[湯浅浩史 2020年9月17日]

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百科事典マイペディア 「マロニエ」の意味・わかりやすい解説

マロニエ

セイヨウトチノキ,ウマグリとも。バルカン半島原産のトチノキ科の落葉高木。葉は対生し,倒長卵形の小葉5〜7枚からなる大型の掌状複葉。5〜6月,枝先に大型の円錐花序を出し,赤色を帯びた白色の4弁花を多数開く。果実は球形で大きなとげがある。欧米では街路樹として好まれ,特にパリの並木が有名。日本でも街路樹,庭木とし,花が紅色の雑種ベニバナトチノキも同様に利用。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マロニエ」の意味・わかりやすい解説

マロニエ

トチノキ(栃の木)」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のマロニエの言及

【トチノキ(栃∥橡)】より

…【飯島 吉晴】。。…

【トチノキ(栃∥橡)】より

… トチノキ属Aesculusは約25種からなるトチノキ科のうちの大部分を占め,北半球の温帯に広く分布する。マロニエA.hippocastanum L.(英名horse chestnut)は南ヨーロッパ原産の高木で,広く街路樹として植えられる。中国産シナトチノキA.chinensis Bunge(漢名七葉樹)は小葉に柄がある。…

【トチノキ(栃∥橡)】より

… トチノキ属Aesculusは約25種からなるトチノキ科のうちの大部分を占め,北半球の温帯に広く分布する。マロニエA.hippocastanum L.(英名horse chestnut)は南ヨーロッパ原産の高木で,広く街路樹として植えられる。中国産シナトチノキA.chinensis Bunge(漢名七葉樹)は小葉に柄がある。…

※「マロニエ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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