改訂新版 世界大百科事典 「マロリー=ワイス症候群」の意味・わかりやすい解説
マロリー=ワイス症候群 (マロリーワイスしょうこうぐん)
Mallory-Weiss syndrome
激しい嘔吐などにより腹腔内圧が急激に上昇したために,食道胃接合部付近(主として胃側)に裂創が生じ,吐血を起こす疾患をいう。1929年アメリカの病理学者マロリーG.K.Malloryと内科医ワイスS.Weissが,飲酒後嘔吐を繰り返したのちに大量の吐血をして死亡した患者4人の病理解剖によって,初めて病態を明らかにした。発症の誘因は飲酒による反復性の嘔吐が最も多いが,食中毒,車酔いなど他の原因による激しい嘔吐でも起こる。また嘔吐でなくても激しい咳やくしゃみで起こることもある。かつては出血源不明のまま手術されたり死亡したりしたが,内視鏡検査とくに出血後早期(24~48時間以内)に行う緊急内視鏡検査により容易に診断されるようになった(X線検査による診断は困難である)。たいていは安静および輸血・輸液・止血剤投与などの内科的治療によって治癒する。出血が持続して大量の輸血によっても全身状態が改善しない場合は手術が行われる。
執筆者:谷 礼夫
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