マンギャン族(読み)マンギャンぞく(英語表記)Mangyan

改訂新版 世界大百科事典 「マンギャン族」の意味・わかりやすい解説

マンギャン族 (マンギャンぞく)
Mangyan

フィリピンのミンドロ島山地民の総称。人口は2万から3万と推定される。言語学・民族学的には七つの種族に分けられる。いずれもマラヨ・ポリネシア語系の言語をもつが,互いに意味は通じない。北からイラヤ族,アランガン族,タジャワン族,バタンガン族(タオブイッド族),ブヒッド族ハヌノオ・マンギャン族ハヌノオ族),ラタグノン族の順に分布する。このうちの大半の種族にとって,〈マンギャン〉という語は〈人間〉を意味するという。マンギャン諸種族の服装の特徴は,男がふんどしを身につけていることで,ミンドロ島中央部でかなり未開な生活をおくっているバタンガン族やアランガン族は,女も樹皮布のふんどしをつける。アランガン族の場合は,木のつるを巻いてスカート状にした衣類でふんどしを覆う。インド起源の文字を今日でも用いていることで知られるブヒッド族とハヌノオ・マンギャン族の女性は,機織の技術を有し,スカート風の腰巻をまとう。マンギャン族はいずれも山中で焼畑農耕を営み,陸稲,サツマイモ,キャッサバ,タロイモヤムイモトウモロコシ,料理用バナナなどを栽培して主食とする。バタンガン族やアランガン族にとっては狩猟採集も欠かせない。家屋は高床式が一般的で,木や竹やブリ(シュロの一種)やコゴン(カヤの一種)などを材料とするが,バタンガン族の家屋のように地面に木の枝を立てて骨組みを作ってコゴンで覆った簡素なものもみられる。1家屋に1家族が住むのが普通である。しかしアランガン族の場合は例外で,近親関係にある5~20家族が共住する大家屋をもち,同一の大家屋の居住者が一つの共同体を形成する。他の種族の場合は,近親関係にある複数の家族が集落をなして共同生活する。マンギャン族の宗教は精霊信仰に基づき,さまざまな種類の精霊や悪霊死者霊魂などをめぐって宗教儀礼がとり行われる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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