ミカ書(読み)ミカしょ(英語表記)Book of Micah

改訂新版 世界大百科事典 「ミカ書」の意味・わかりやすい解説

ミカ書 (ミカしょ)
Book of Micah

旧約聖書の〈十二小預言書〉に属する預言書。《ヨナ書》に次ぐ6番目の書。ミカエルサレム南西,ペリシテのガテに近い村モレセテの出身。ユダの王ヒゼキヤの治世に預言した。その内容はエルサレムの支配階級横暴を厳しく批判するもので,神によるエルサレムの破壊を預言している。同時代の預言者イザヤがいかなるときにもエルサレムは守られると預言したのと著しい対照をなしている。《ミカ書》の前半の3章は審判の預言を中心として,ミカの真正の預言であるが,4~7章にはエルサレムの栄光の預言(4:1~4),メシア預言(5:2~4),バビロン捕囚後の回復の預言(7:8~20)など後代の付加が多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミカ書」の意味・わかりやすい解説

ミカ書
みかしょ
Mîykāh ヘブライ語
The book of Micah 英語

『旧約聖書』中の十二小預言書の第6書。ミカの預言を収録し、7章からなる。ミカはエルサレムの南西30キロメートル余りのモレシテの出身で、紀元前8世紀に活躍した。同時代のイザヤがエルサレムの上流階級の出身であるのとは対照的に、農村を基盤として貧しい者の立場から正義を求めた預言者といわれる。都会の支配層の暴政、宗教家の腐敗堕落を糾弾し、神の徹底的な審判の到来を告げ、聖都エルサレムといえども敵の手に渡されて滅びると語った。宗教の本質は、祭礼儀式にあるのではなく、正義と愛の実践、謙遵に神とともに生きることにあるとした。救い主は、聖都エルサレムでなく、地方の小さい町ベスレヘムから登場するとの預言(5章)は、イエス・キリストの誕生をさす預言として『新約聖書』に引用されている。「つるぎを打ちかえて すきとし、やりを打ちかえて かまとする」との有名な万国平和預言は4章にある(同じものが「イザヤ書」2章にも収められている)。

[清重尚弘]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミカ書」の意味・わかりやすい解説

ミカ書
ミカしょ
Tere Asar; Book of Micah

旧約聖書 12小預言書中の一つで預言者ミカの言葉を伝える。彼は1~3章で,主が裁きと罰とを下し,その裁きは例外なく罪人に及ぶと預言。4~5章はミカ自身ではなくバビロン捕囚期後の人物によって語られたとみられるが,イスラエルの敵が滅ぼされ,ベツレヘムから1人の解放者が出て民に勝利と平和を与えるという希望を語る。7~8章では,神が民に望むのは,ただ義を行い,いつくしみを愛し,へりくだって神とともに歩むことであると説かれている。

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