ミズトガリネズミ(読み)みずとがりねずみ(英語表記)Eurasian water shrew

改訂新版 世界大百科事典 「ミズトガリネズミ」の意味・わかりやすい解説

ミズトガリネズミ (水尖鼠)
European water shrew
Neomys fodiens

食虫目トガリネズミ科の哺乳類。イギリスからサハリンまでのユーラシアに広く分布する水生のトガリネズミ。体色は背面褐色から黒色,腹面は白色から灰色手足の縁に硬い毛が密生し,みずかきの役割をする。日本のカワネズミに形態,生態ともに似るが,カワネズミがジネズミ亜科に属するのに対して,本種はトガリネズミ亜科に属し,歯の先が赤色であるのが特色。体長6.7~9.6cm,尾長4.5~7.7cm,体重12~18g。1年を通じて,昼夜を問わず活動し,一時に5~20秒潜水可能。川,湖,沼などの水辺にトンネルを掘って巣とし,水に入って繰り返し潜っては水生昆虫,魚,両生類,貝類などを捕食する。水中獲物を探りあてるのには口の周囲に生える触毛を使う。あまった獲物は岸に運び,物陰などに隠して貯蔵する。遊泳中に毛についた水は,トンネルに入り,そのなかを通過するうちにぬぐいとられる。ふつう単独ですみ,繁殖期は4~9月。雌はこの間に2回以上の出産をする。1産3~8子。寿命は14~19ヵ月。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミズトガリネズミ」の意味・わかりやすい解説

ミズトガリネズミ
みずとがりねずみ / 水尖鼠
Eurasian water shrew
[学] Neomys fodiens

哺乳(ほにゅう)綱食虫目トガリネズミ科の動物。水生適応した種で、ヨーロッパからバイカル湖までと、シベリア沿海地方、樺太(からふと)(サハリン)に分布する。外形はカワネズミにきわめて類似し、手足の指の縁には水かきとなる剛毛が生え、尾の下面にはキール(竜骨)状の長毛が列生している。頭胴長7~9.6センチメートル、尾長4.7~7.7センチメートルで、耳介は毛に埋まる。毛は柔らかく密で、背面は灰黒色、下面は白い。歯は先が赤染し、歯式は

で合計30本。水辺にすみ、潜水が巧みで、水生昆虫、カニエビ小魚を食べる。水辺の岸に巣をつくり、春から秋に3~8子を産む。

阿部 永]

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世界大百科事典(旧版)内のミズトガリネズミの言及

【トガリネズミ(尖鼠)】より

…食物は,おもにミミズ,クモ,昆虫などの無脊椎動物で,ほかに種子も食べる。北半球の寒い地方を中心に分布し,ヨーロッパの水生のミズトガリネズミNeomys fodiensなどを含めて80種以上ある。日本では,北海道に多く,本州,四国では高い山に限られ,九州には分布しない。…

【トガリネズミ(尖鼠)】より

…食物は,おもにミミズ,クモ,昆虫などの無脊椎動物で,ほかに種子も食べる。北半球の寒い地方を中心に分布し,ヨーロッパの水生のミズトガリネズミNeomys fodiensなどを含めて80種以上ある。日本では,北海道に多く,本州,四国では高い山に限られ,九州には分布しない。…

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