ミノガ(読み)みのが(英語表記)bagworm moth

改訂新版 世界大百科事典 「ミノガ」の意味・わかりやすい解説

ミノガ (蓑蛾)
bagworm moth

鱗翅目ミノガ科Psychidaeの昆虫総称幼虫は,独特のみのをつくりそのなかにすんで頭部胸部を出して植物の葉を食べるミノムシである。成虫はガとなるが,雌雄ともに翅をもつもっとも原始的なタイプは少なく,大部分は雌は翅が退化し飛ぶことができない。無翅の雌のなかには3対の脚のあるものと,脚の退化したものがある。雄は昼間活発に飛び回り,雌の放出する性誘引物質によって,雌に到達し,交尾する。翅の退化した雌のなかには,みのの外に出て雄を待つタイプと,一生みのから出ないで,雄の飛来を待つものとがある。交尾を終わった雌は,おもにみのの中に産卵し,みのから出ない雌はそのまま中で死ぬ。

 世界中に分布しているが,日本には20種あまりしか知られていない。翅の開張3.5cm,みのの長さ5cmに達するオオミノガEumeta japonicaは,日本の最大種で,各種の樹木や灌木に寄生し,ときには多発してかなりの被害がある。雌はみのの中で羽化し,産卵後その中で死ぬ。次に大きなチャミノガE.minusculaの翅の開張2.5cm前後,みのの長さ2.3~4cm。小枝や葉柄を縦に密着させた不規則な円筒形のみのをつくる。オオミノガより小さいし,紡錘形でないので,一見区別は容易である。チャその他多くの樹木や草木に寄生する。ニトベミノガMahasena aureaは翅の開張2.4cm内外,みのは長さ4cm内外,紡錘形で,食樹の葉の小片などを多数付着させるため,オオミノガくらいの大きさに見える。東北地方でリンゴ樹の害虫とされている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミノガ」の意味・わかりやすい解説

ミノガ
みのが / 蓑蛾
bagworm moth

昆虫綱鱗翅(りんし)目ミノガ科Psychidaeのガの総称。全世界に分布するガで、幼虫が蓑(みの)(ポータブルケース)をつくってその中にすむ、いわゆるミノムシで、成虫はミノガとよばれている。はねの開張10ミリメートル以下から40ミリメートルに達するものまである小形種から中形種。はねの形はさまざまであるが、豊かな色彩や斑紋(はんもん)をもつ種はなく、はねが透明な種を除いてすべて茶褐色、黒褐色あるいは黒色をしている。夜間、灯火に飛来することは少なく、昼間飛ぶ種が多い。この科の雄成虫はすべてはねをもち、一般のガと変わりがないが、雌の特徴から三つのグループに大別することができる。すなわち、雌が雄と同じように2対のはねと3対の脚(あし)を有するもの、はねはないが脚を有するもの、はねも脚もないものである。はねのない雌は、成虫になると自分の殻から半身を乗り出すか、蓑の外側で交尾のために飛来する雄を待つが、はねも脚もない雌は蓑の中で飛来した雄と交尾し、蓑の中に産卵する。したがって、雄の腹部はよく伸長できるようになっている。幼虫は種ごとに独特の材料で独特の蓑をつくり、上方開口部から頭や胸を出して餌(えさ)をとる。蓑の材料は、食樹の小枝、茎、葉などを糸で綴(つづ)るが、コケや地衣類に寄生する小形種のなかには、植物片や土片を表面に付着させるものもある。

 日本には現在20種ほどしか知られていないが、コケや地衣類につく微小種で未発見のものが多く、今後、研究が進むと日本産は40種を超えるものと推定される。ごく普通にみかける最大のオオミノガは、幼虫が庭木、街路樹、果樹などに寄生し、発生量の多いときはかなりの被害がある。各種の樹木や低木につくチャミノガは、前種と同様に害虫であり、チャ畑で発生することがある。

[井上 寛]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミノガ」の意味・わかりやすい解説

ミノガ
Psychidae; bagworm moth

鱗翅目ミノガ科の昆虫の総称。幼虫は糸を吐いて蓑状の筒巣をつくってその中にすむので蓑虫と呼ばれる。幼虫の体はわずかに刺毛が散在するだけで裸に近く,胸脚は発達するが腹脚は鉤になっている。蓑の開口基端から頭部と胸部を出し,移動しながら植物を食べる。成虫は雌雄異形。雄は小~中型の暗色のガで口器は痕跡的である。雌は幼虫形で蓑の中にすみ,無翅またはきわめて退化した翅をもつにすぎない。ミノガ Canephora asiaticaは,雄は前翅長 10mm内外,全体黒褐色で触角は羽毛状である。雌は体長 13mm内外,蛆状で無脚,無翅。頭部は黄褐色,胸部は赤褐色を帯び,腹部は白い。多くの植物を食害する。北海道,本州,四国,九州,サハリン,中国,中部アジアに分布する。

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百科事典マイペディア 「ミノガ」の意味・わかりやすい解説

ミノガ

鱗翅(りんし)目ミノガ科の昆虫の総称。その1種オオミノガは大型でよく目立ち,日本全土,朝鮮,中国などに分布。雄は開張35mm内外,暗褐色,雌は翅がなく蛆(うじ)状。幼虫(ミノムシ)は枯葉や小枝をつづりあわせて作ったみのの中にすみ,木の葉を食べ,幼虫で越冬,成虫は初夏に現れる。ミノガ科は日本に約20種,幼虫は全部みのを作ってその中に潜み,雄は有翅,雌は無翅でみのの中で一生を終わる。

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