ミミカキグサ(英語表記)winged bladderwort
Utricularia bifida L.

改訂新版 世界大百科事典 「ミミカキグサ」の意味・わかりやすい解説

ミミカキグサ
winged bladderwort
Utricularia bifida L.

日当りのよい酸性湿地に生え,地下部に小さな捕虫囊をつけて,土中の微小動物を捕食するタヌキモ科食虫植物水草タヌキモと同属である。厳密な意味での根,茎,葉をもたない。地下茎状器官は白く,細く,地中浅く伸び,所々に線形緑色で長さ6~8mmの葉状器官をつける。捕虫囊は地下茎状器官と葉状器官にみられる。8~10月下旬に,長さ7~15cmの花茎を伸ばし,1~5個の黄色花を総状につける。花冠は仮面状で,幅3~5mm,基部に後方へとがった距をもつ。下唇は中央部がふくれている。2本のおしべと1本のめしべをもつ。受粉後花冠は脱落し,2片に分かれた萼が子房を包むように伸びて形状が耳かきに似るところから耳搔草の名がついた。日本を北限として,南はオーストラリアに至るまでの地域に広く分布する。ミミカキグサとよくいっしょに自生し,紫色またはまれに白色の花を穂状につける種としてホザキノミミカキグサU.racemosa Wall.がある。花冠基部に前方へとがった距と,萼が子房を球形に包むようにして,耳かきに似ない点が特徴である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミミカキグサ」の意味・わかりやすい解説

ミミカキグサ
みみかきぐさ / 耳掻草
[学] Utricularia bifida L.

タヌキモ科(APG分類:タヌキモ科)の一年草。白い糸状の地下茎が浅い泥中をはい、小さな捕虫嚢(のう)をまばらにつけ、微小な動物をとらえて消化する。地上葉は線形、長さ0.6~1センチメートルと小さい。花茎は細く、高さ7~15センチメートル、まばらに鱗片葉(りんぺんよう)をつける。8~10月、小花柄のある黄色の小花を数個開く。花冠の距(きょ)は斜め下向きに湾曲する。花期後、萼(がく)は大きくなって果実を包み、耳かき状となる。名は、この形を耳かきに見立てていう。丘陵から山地の泥湿地に生え、本州から沖縄、および中国、インドマレーシア、オーストラリアに分布する。

[高橋秀男 2021年10月20日]

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百科事典マイペディア 「ミミカキグサ」の意味・わかりやすい解説

ミミカキグサ

タヌキモ科の小型の多年草。本州〜沖縄の湿地にはえる食虫植物で,東アジア,オーストラリアにも分布。地下茎は糸状で長く,浅く地中をはい,まばらに小型の捕虫袋とへら形の葉を出す。夏〜秋,高さ10cm内外の花茎を出し,上方にまばらに数個の花をつける。花は黄色で径約4mm,仮面状,短い柄があって横向きに咲き,花後に耳かきの頭のような果実を結ぶ。近縁に花が淡紫色のムラサキミミカキグサがある。

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