ミリタリー・バランス(読み)ミリタリーバランス

百科事典マイペディア 「ミリタリー・バランス」の意味・わかりやすい解説

ミリタリー・バランス

英国の国際戦略研究所International Institute for Strategic Studies(略称IISS)が毎年発行する世界の軍備状況に関する報告書。同研究所は1958年に創設された民間のシンク・タンクで本部はロンドン。研究スタッフは専任研究員31名を含む約40名。所長は英国人だが,4人の副所長は英米仏日の構成。報告書は1部〈各国の軍備の動向〉,2部〈諸表と分析〉から成る。その報告内容の正確さと分析力において国際的にも高く評価されている。〈ミリタリー・バランス2014〉では米国軍事費減少傾向に転じる一方,金融危機後に歳出を増やした新興国が軍事面でも台頭した。上位15ヵ国の軍事予算に占める米国の割合が半分を割り米国の圧倒的優位にかげりが見え始めた。政府債務上限問題をめぐる議会停滞もあって,軍事費は拡大した過去10年を経て減少へ向かっている。イラクでの軍事作戦を終えアフガニスタンでも撤収を進める米国の防衛支出は,国内総生産(GDP)比で5%近かった2008年からほぼ毎年減少し,同4%に近づいた。実際,冷戦後には軍事面で圧倒的な立場にあった米国の優位は薄れている。IISSの集計によると主要15ヵ国の2013年の軍事予算は,米国の約6000億ドル(約60兆円)に対しその他の14ヵ国が合計6300億ドル余。前年から7%も減った米国をその他の14ヵ国の合計額が追い抜いた。2008年から2013年にかけての軍事支出の増減では新興国は中国の43.5%,ロシア31.2%,ブラジル10%と大幅に増加。他方2008年秋以降の金融危機・ユーロ危機に苦しんだ欧米諸国は21.5%減のイタリアや9.1%減のイギリスなど,縮小もしくは横ばいだった。世界全体の軍事費は,財政難の欧米諸国の歳出削減に伴い2013年まで3年連続で減少。ミリタリー・バランスは日本語版も出版されている。→ストックホルム国際平和研究所
→関連項目英国国際戦略研究所

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