メガネグマ(読み)めがねぐま(英語表記)spectacled bear

翻訳|spectacled bear

改訂新版 世界大百科事典 「メガネグマ」の意味・わかりやすい解説

メガネグマ (眼鏡熊)
spectacled bear
Tremarctos ornatus

アンデス高所にすむ,目の周囲を取り囲む大きな白紋をもつ中型のクマ。食肉目クマ科の哺乳類。体色は黒色ないし黒褐色で,毛の長さは中くらい。目の周囲の白紋は個体によってほおからのど,胸にまで広がる。体長120~180cm,肩高70~80cm,尾長7cm前後,体重は雄で130kg,ときに175kgに達する。雌では60kg程度。ベネズエラから,コロンビアエクアドルペルーボリビアにかけてのアンデス山脈標高1900~2350mの湿った森林に多くすむが,水場が利用できる場合には海岸近くから高山草原にまで見られる。昼間は大木の洞や洞穴で眠り,夜活動して,おもに果実を食べる。木登りが巧みで樹上に,果実をたぐりよせ,食べたあとの熊棚がしばしば見られる。小動物昆虫も捕食するが,量的にはわずかである。雌は妊娠期間8~8.5ヵ月で,1産1~3子を生む。
クマ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「メガネグマ」の意味・わかりやすい解説

メガネグマ
めがねぐま / 眼鏡熊
spectacled bear
[学] Tremarctos ornatus

哺乳(ほにゅう)綱食肉目クマ科の動物。目の周りの白い斑紋(はんもん)が眼鏡をかけたようにみえるので、この名がある。南アメリカに分布する唯一のクマで、コロンビアからチリ北部までのアンデス山脈の主として太平洋側に生息する。頭胴長1.5メートル、体重140キログラムになる。毛は黒く粗い。主として植物質、とくにヤシ類の若芽を好んで食べ、上手にヤシに登るといわれる。

[渡辺弘之]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メガネグマ」の意味・わかりやすい解説

メガネグマ
Tremarctos ornatus; spectacled bear

食肉目クマ科。体長 1.2~1.8m。全身黒ないし黒褐色で,眼のまわりに白い模様がある。頸の下から胸にかけても白色斑があるが,これが消失しているものもある。雑食性であるが,植物質を好むといわれる。南アメリカにすむ唯一のクマで,ベネズエラ,コロンビア,エクアドル,ペルーなどに分布し,標高 3000mぐらいまでの森林にみられる。

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世界大百科事典(旧版)内のメガネグマの言及

【クマ(熊)】より

…体色はツキノワグマをおもわせるが顔が長く,類縁はヒグマに近い。メガネグマ(イラスト)は南アメリカにすむ黒色のクマで,目の周囲に白色の輪をもつ。体長1.5~1.8m,体重120~150kg。…

【絶滅生物】より

…オーストラリアのウォンバットはウシによる生息地の破壊により,タズナツメオワラビーはイヌとキツネに捕食されてともに激減した。ニューギニアのナガハシハリモグラ,キノボリカンガルーなどは狩猟により,南アメリカのメガネグマはトウモロコシの,タテガミオオカミはニワトリの害獣として駆除されて激減し,ライオンタマリンはペット,動物園の展示,医学用実験動物などに1960年ころから年間200~300頭も輸出され,1981年には生息数が100頭以下と推定される危険な状態になった。日本で絶滅寸前にあるのはイリオモテヤマネコ,ニホンカワウソ,トキ,メグロ,カラスバトなどである。…

※「メガネグマ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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