メンフィス(英語表記)Memphis

翻訳|Memphis

精選版 日本国語大辞典 「メンフィス」の意味・読み・例文・類語

メンフィス

[一] 古代エジプト古王国時代ノモスの首都。カイロの南方にあり、市の守護神の牛の神プタハの信仰で栄えた。多くのピラミッドが残る。
[二] (ミシシッピ川ナイル川にたとえ、(一)にちなんでつけた名) アメリカ合衆国テネシー州南西端の商工業都市。ミシシッピ川に臨み、綿花の集散地、家具・床板の産地として知られる。

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デジタル大辞泉 「メンフィス」の意味・読み・例文・類語

メンフィス(Memphis)

カイロ南方にあったエジプト古王国の首都。現在名ミット‐ラヒナ。ナイル川左岸に位置し、ピラミッド・王宮の遺跡がある。1979年、「メンフィスとその墓地遺跡 ― ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯」として世界遺産(文化遺産)に登録された。
米国テネシー州南西端部のミシシッピ川に臨む商工業都市。綿花・木材などの世界的取引地。人口、行政区67万(2008)。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メンフィス」の意味・わかりやすい解説

メンフィス
Memphis

エジプト,カイロの南方 20kmにあった古代都市。現ミトラヒナ。前 3100年頃メネス王が上下エジプトを統一したとき,両地の接点であるこの地に都を築いたのが始めとされる。メンフィスの名称は第6王朝ペピ1世のピラミッドの町メン=ネフェル Men-neferに由来。町は最初「白い壁」 (白は王家の色) と称され,プター神がまつられた。第1,2王朝の首都であったかは不明であるが,第3王朝の首都となり,有名な建築家イムホテプのもとに最初の大石造建築が建造され,第4王朝にいたってその栄光は絶頂に達した。墓の浮彫には当時の生活が偲ばれ,出土品には後世エジプトにもみられない優れた技巧の跡がみられる。その後衰退の道をたどったが,第 18王朝の時代に再びエジプト第2の都として栄え,王宮もつくられ,アモン信仰が盛んになるなかで,プター神殿も次々と建立されるとともに,行政,軍事,宗教の中心地として,さらに国際都市としての様相を呈するにいたった。その後,アッシリアエサルハッドン (前 671) ,アケメネス朝ペルシアカンビセス2世 (前 525) ,マケドニアアレクサンドロス3世 (大王) (前 332) によって攻略されたが,プトレマイオス朝時代にはギリシア人の多い国際都市となり,ローマ時代も重要な地方都市として残った。しかしキリスト教が栄えるに及んで神殿は破壊され,町は衰退し,さらにイスラム教徒によって完全に滅ぼされた (640) 。現在は西側台地上にサッカラの大墓地遺跡があるが,都市の遺構そのものはほとんど残っていない。 1908~13年 F.ピートリーによって発掘調査が始められ,その後ペンシルバニア大学調査隊 (1917,1955,1956) ,その他による発掘が進められた。 1979年ギザダハシュールのピラミッド群とともに,世界遺産の文化遺産に登録。

メンフィス
Memphis

アメリカ合衆国,テネシー州の南西端,ミシシッピ川東岸にある都市。市としてはテネシー州最大の商工業都市,河港都市であり,都市圏としては州都ナッシュビル=ダビッドソンの都市圏に次ぐ人口を抱える。市名は古代エジプトの都市メンフィスにちなむ。1819年入植が始まり,ミシシッピ川の水運鉄道交通の要衝となって,南部諸州のワタ栽培の拡大に伴い市場町として発展。1826年に市となった。南北戦争時は開戦翌年の 1862年6月に北軍に占領された。綿花木材の大規模な集散地で,医薬品,食料品の卸問屋,企業の支店や工場も多く,広い商圏をもつ地方中心都市の性格が強い。食品加工,機械など多様な工業も発達。文教都市でもあり,ローズ大学(1848創立),メンフィス大学(1912創立),テネシー大学健康科学センターなどがある。ブルース誕生の地の一つで,市内のビール通りは,ブルースの父 W.C.ハンディの曲によって有名。ロック音楽の発祥地としても知られ,エルビス・プレスリーなど多数の歌手がここから活躍を始めた。プレスリーの没地でもあり,その邸宅と墓がある。1968年マーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師がこの地で暗殺され,暗殺現場のモーテルは今日では博物館になっている。人口 64万6889(2010)。

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改訂新版 世界大百科事典 「メンフィス」の意味・わかりやすい解説

メンフィス
Memphis

エジプト北部,カイロの南約25km,現在のミート・ラヒーナ村にある古代エジプト初期王朝時代および古王国時代の王都。上・下エジプトの境界に近く,第1王朝の始祖メネスが新都として建設した〈白い壁〉にさかのぼるとされ,ピラミッド時代の首都として繁栄した。中王国時代以降も下エジプト第1州の州都,下エジプト行政の中心地,遠征隊・交易隊の発着基地として政治的・経済的重要性を保ち続けた。宗教的にも市神プタハは〈言葉〉による天地創造(〈メンフィス神学〉)によって特異な地位を占め,工芸の神として広く崇拝された。アレクサンドリア建設後はプタハの聖牛アピス信仰の中心地として宗教都市の性格を強めた。ローマ皇帝テオドシウスの異教禁止令(380)による神殿閉鎖が繁栄に終止符を打ち,イスラム時代,カイロの建設用石材をここから調達したため現存する遺構はわずかである。〈エジプト〉の語源はプタハ神殿名からメンフィスの市名となったフウト・カ・プタハḤut-ka-Ptaḥが転訛したギリシア語アイギュプトスAigyptosに由来するといわれる。
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メンフィス
Memphis

アメリカ合衆国テネシー州南西端,ミシシッピ川東岸の商工業都市。人口67万2277(2005),大都市域人口103万(1992)。河港都市として栄え,19世紀前半には周辺に綿花プランテーションが営まれ,綿花とともに奴隷の大市場があった。現在も綿花と木材の大集散地で,ハイウェー,鉄道,航空路の重要な結節点。ホテル・チェーンのホリデー・インの本社もある。市人口の48%が黒人系で複雑な人種問題をかかえており,1968年4月4日公民権運動の指導者M.L.キングがJ.E.レイによって暗殺された。市名はエジプトの古代都市メンフィスにちなむ。
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百科事典マイペディア 「メンフィス」の意味・わかりやすい解説

メンフィス

1980年代前半のデザイン界で大きな役割を果たしたグループ。1981年ミラノで結成。E.ソットサスの発案のもと,木工職人レンツォ・ブルゴーラと家具店経営者マリオ&ブルネーラ・ゴダーニ夫妻,そして照明器具会社アルテミデの社長エルネスト・ジスモンディらが会社組織を設立。デザイナーの先鋭的な創作を優れた職人の技術で製品化する組織を目指し,多くの世界的建築家,デザイナーとのコラボレーションを実現した。マルコ・ザニーニ,倉俣史朗磯崎新,マイケル・グレイブス,ミケール・デ・ルッキ,ハンス・ホライン,アンドレア・ブランジらがデザインを提供。家具,照明器具だけでなく,ガラス器,陶器,銀器なども扱った。中でも,ソットサスは結成後も重要な役割を果たし,本棚〈カールトン〉やサイドボード〈カサブランカ〉など,メンフィスのシンボル的作品を制作した。1988年公式に活動停止。

メンフィス

エジプトの古代都市で,カイロの南約25kmに遺跡が残る。第1王朝のメネスが建設した新都〈白い壁〉にさかのぼるといい,初期王朝,古王国時代の首都であった。中王国時代以後テーベに都が移り,アレクサンドリアが繁栄するに及んで衰退。プタハ神崇拝(メンフィス神学)の中心地として知られる。1979年世界文化遺産に登録。
→関連項目エジプト(地域)サッカラセクメト

メンフィス

米国,テネシー州南西部の商工業都市。ミシシッピ川東岸の河港都市で,水陸交通の中心。空港もある。綿花,綿実油,小麦,家畜などの取引が盛ん。農業機械,製鋼,自動車部品,ガラス,化学薬品などの工業も発達。住民の約48%が黒人。1968年キング牧師がこの地で暗殺された。エルビス・プレスリーの邸宅と墓があることでも有名。64万6889人(2010)。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「メンフィス」の解説

メンフィス
Memphis

エジプト古王国時代の首都。メネスが統一の際,北方に対する要塞として現在のカイロの南に築いた「白い壁」から発達した。第3王朝以後歴代のファラオがここに宮廷を置き,周辺(ギザサッカーラ)にそれぞれのピラミッドを造営したのでますます栄え,また守神プタハの聖牛アピスの信仰は全国の巡礼を集めた。

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世界遺産情報 「メンフィス」の解説

メンフィス

メナ王に築かれた古代エジプトの最初の首都で、三大ピラミッドを初めとする諸遺跡、主に墳墓群が散在し、往時の繁栄を存分に伝えてくれます。サッカーラの階段ピラミッドは考古学上最古のピラミッドと考えられ、階段は天に上る階段や王の霊が太陽神に向かって行けるように作られたと言われています。クフ王の父による赤いピラミッドや傾斜角度が変わっている屈折ピラミッドなど様々なピラミッドに出会えます。また、博物館内にあるラムセス2世の12m程の像、ピラミッドの守護神となるスフィンクス像も見所です。

出典 KNT近畿日本ツーリスト(株)世界遺産情報について 情報

デジタル大辞泉プラス 「メンフィス」の解説

メンフィス

2002年初演のミュージカル。原題《Memphis》。脚本・作詞:ジョー・ディピエトロ、作詞・作曲:デヴィッド・ブライアン。1950年代のメンフィスを舞台に、実在した白人のDJデューイ・フィリップスを題材にした作品。2010年に第64回トニー賞(ミュージカル作品賞)を受賞。

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旺文社世界史事典 三訂版 「メンフィス」の解説

メンフィス
Memphis

カイロの南にあった古代エジプトの都市
メネスによって建設されたと伝えられ,古王国時代の首都として栄えた。現在の名称はミート−ラヒナー(Mit Rahina)。

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