メンフクロウ(英語表記)Tyto alba; western barn owl

改訂新版 世界大百科事典 「メンフクロウ」の意味・わかりやすい解説

メンフクロウ (仮面梟)
barn owl

フクロウ目メンフクロウ科Tytonidaeメンフクロウ属の鳥の総称,またはそのうちの1種Tyto albaを指す。ただし,メンフクロウの名をどの種にあてるかについては混乱があり,T.albaナヤフクロウオーストラリアと南アジアに分布するT.longimembrisをメンフクロウと呼ぶ人もある。しかし,後者は独立種と考えず,アフリカ産のT.capensis亜種としてミナミメンフクロウと呼ぶ。この科の鳥は,ハート形の顔盤(がんばん)が白く目だつことからこの名がある。眼はフクロウ科のものほど大きくなく,脚は細く長い。第3趾(中趾)の内縁に櫛歯(くしば)状の刻み目がある。くちばしもフクロウ科より細い。メンフクロウ科には10種を含むメンフクロウ属Tytoと2種を含むニセメンフクロウ属Phodilusがある。メンフクロウT.albaヨーロッパ,アフリカ,南アジア,オーストラリア,南北アメリカに広く分布し,30以上の亜種に分けられる。習性はフクロウ類のように夜行性で,浅い林や荒地を好むが,人家近くにすむことも多く,畑地の上を飛び回っておもにネズミ類を捕食する。樹洞,岩棚倉庫,鐘楼などを休み場所と営巣場所にし,巣材は使わずに1腹4~7個の卵を産む。渡りはしない。ヨーロッパでは4~5月と7月の2回繁殖する。不気味なうなるような声で鳴き,夜間に白い体で音もたてずに飛び回るので,ヨーロッパでは気味の悪い鳥とされていた。しかし,近年はネズミ類の駆除に役だつことから大事にされている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メンフクロウ」の意味・わかりやすい解説

メンフクロウ
Tyto alba; western barn owl

フクロウ目メンフクロウ科。ナヤフクロウともいう。全長 25~50cm。27ほどの亜種がある。亜種によって羽色や大きさが異なるが,ハート形の白い顔盤をもち,胸腹部は白く,頭上,背,上面,尾は美しい淡褐色で,頭上や背面には淡紫褐色と白色の斑があり,風切と尾には紫褐色の横帯がある。分布域はヨーロッパ中部からアフリカインドからインドシナ半島スマトラ島ジャワ島オーストラリア北アメリカ中部から南アメリカとフクロウ類のなかでは最も広いが,日本は含まれていない。低木の散在する草地,農耕地,疎林などに生息する。古い建物や天井の高い農家の納屋などを日中の休み場や営巣場所にすることが多く,特にヨーロッパでは親しまれている。なお,メンフクロウ科 Tytonidaeはメンフクロウ属 Tyto 15種とニセメンフクロウ属 Phodilus 3種からなる。(→猛禽類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「メンフクロウ」の意味・わかりやすい解説

メンフクロウ
めんふくろう / 面梟
barn owl

広義には鳥綱フクロウ目メンフクロウ科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この科Tytonidaeには11種が含まれる。全長28~53センチメートル、フクロウ類によく似ているが、顔盤が特徴的なハート形をしており、目はフクロウ類ほど頭のわりに大きくない。足はフクロウ類より細くて長く、中趾(ちゅうし)のつめの内縁が櫛(くし)の歯状になっている。羽色は一般に体上面が褐色系、下面が白っぽい。全世界に広く分布しているが、日本では、ミナミメンフクロウTyto longimembrisが沖縄の西表(いりおもて)島でただ1回記録されているだけである。明るい林からサバナにまですみ、夜間、ネズミやモグラなどの小動物をとって食べる。フクロウ類同様、聴覚と視覚は非常によく発達している。樹洞、崖(がけ)地の穴、建物のすきまなどに営巣する。ただし、巣らしい巣はつくらない。卵は白色無地で、1腹卵数は3~6個。雌だけが抱卵し、育雛(いくすう)は雌雄ともに行う。

 種としてのメンフクロウT. albaは全世界に分布しているが、極地、黒海以東のユーラシア中・北部、サハラ砂漠、コンゴおよびアマゾンの密林地帯にはいない。この類の代表種で、ヨーロッパでは古城、教会、廃屋などに巣をつくる鳥としてよく知られている。

[樋口広芳]

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百科事典マイペディア 「メンフクロウ」の意味・わかりやすい解説

メンフクロウ

メンフクロウ科の鳥の総称もしくはそのうちの1種をさす。メンフクロウ類は世界に12種ほどおり,顔盤が白くハート形でよく目立つのが特徴。いずれも翼長36cmくらい。足は他のフクロウ類より細長く,目は小ぶり。夜行性で草原や荒れ地,明るい林を好み,人家近くにすむものも多い。おもにネズミを食べる。ヨーロッパでは納屋や倉庫などによく営巣する。日本では,アジア南部からオーストラリアにかけて生息するミナミメンフクロウの記録が西表島であるのみ。

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世界大百科事典(旧版)内のメンフクロウの言及

【鳥類】より

…フクロウ類の外耳は入口が大きく,あるものでは左右の外耳孔の位置や大きさが違い,両耳に達する音の強さの違いと時間的ずれによって音源までの距離や方向を感知する。そのためメンフクロウなどは暗黒の中でも獲物をとらえることができる。【森岡 弘之】
【生態と行動】
 鳥類は,羽毛をもち空を飛ぶ内温性endothermy(体温が体内で生ずる代謝熱によって維持される性質。…

※「メンフクロウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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