モシ族(読み)モシぞく(英語表記)Mossi

改訂新版 世界大百科事典 「モシ族」の意味・わかりやすい解説

モシ族 (モシぞく)
Mossi

西アフリカ内陸のサバンナ地帯,ブルキナファソ(旧オートボルタ)に住む黒人の部族。人口約480万。形質的には,高身長,長頭,扁平で広い鼻,突顎など,スーダン黒人の特徴が認められる。言語は,グリンバーグの分類によるニジェール・コンゴ語派のうちグル(ボルタ)語群に属し,高低二つの音調をもち,名詞クラスは明確に形成されていない。トウジンビエモロコシなどの穀物を,移動性の大きい焼畑によって栽培し,その根元に,ヤッコササゲ,バンバラマメなどの豆類を混作する。家畜・家禽としては,羊,ヤギ,犬,ロバ,鶏,アヒル,ホロホロチョウなどを飼い,かつては王侯貴人の騎乗用として馬の飼育も盛んであった。多くの地域で牛牧民フルベ族と共生関係をもち,フルベに牛の飼育を委託している。父系の血縁集団(ブードゥー)が社会組織の基本であり,父系血縁者とその配偶者から成る拡大家族が経済生活の単位をなしている。円筒形の泥壁に円錐形のわら屋根をのせた住居の散村が多い。太陽と重ね合わされた,万物の根源的な力(ウェンデ)の信仰をもち,荒野の精霊(キンキルシ)や祖先が,この力と人間の媒介をする。イスラムは,北方のマンデ語系の商業集団やルシの浸透とともに伝えられ,19世紀末のフランスによる植民地化以後急速にひろまったが,西アフリカ内陸社会のうちではイスラム化の度は低く,カトリック教徒が多い。ピラミッド型の支配構造をもつ王制は,現在まで遺制として存続している。コートジボアールなど南の海岸諸国への出稼者が多い。
モシ王国
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のモシ族の言及

【アフリカ】より

…サハラの岩塩,北アフリカからの装身具や華美な衣類,馬,鉄砲などと,南からの金,象牙,奴隷,ギニアショウガなどが,ロバや奴隷を運搬手段とする隊商によって,このサバンナ地帯を運ばれ,取引された。 言語の面からみると,西アフリカのサバンナで話される言語は,グリーンバーグの分類におけるニジェール・コンゴ語派に含まれるものがほとんどで,その中のおもな語群として大西洋側語群(セネガルのセレル語,ウォロフ語,西アフリカのサバンナの東端までひろがっているフルベ族の言語など),マンデ語群(マリを中心とするマリンケ族,バンバラ族などと,オートボルタのサモ族,ビサ族など西アフリカ各地の小部族の言語),グルまたはボルタ語群(オートボルタのモシ族,ボボ族,グルンシ諸族などの言語)があり,ほかには北アフリカと共通に分類されるチャド語派に含まれるハウサ語などがあげられる。長距離交易を行った商業集団の言語,ハウサ語とマンデ系のディオラ語などは,西アフリカのサバンナ地帯のかなり広い範囲で共通語として用いられている。…

【市】より

… 市が発達し市場原理が作用している社会では,まちの市場が広い地域的市場圏と遠隔地交易の中心となり,経済的機能を果たすとともに,首長や祭祀者,役人が〈ふれ〉を出したり,またうわさや世間話など種々の情報伝達の場であり,社会生活の中心でもある。オートボルタのモシ族では,割礼などの加入儀礼や首長・長老の葬送に関連のある儀礼,一周忌,幼児死や死産の儀礼なども,市で行われる。また市には,祭祀の中心である神聖な場があり,ときに市の平和に関連する供儀などの宗教的活動を伴う。…

【住居】より

…アシャンティ族は熱帯雨林気候に住み,そのため住棟を一体化し大きな屋根で覆う必要があったと思われるが,この形式がコンパウンドの変形であることの証左はロ字型のほかにコ字型やL字型の住居が混在することである。 円形平面で明快な配列則をもつ例としてグルマンチェ族やモシ族,ダゴンバ族のコンパウンドがある。円形の住棟を環状に並べ,間を柵や塀で閉じたもので,首飾状の完結度がきわめて高いものである。…

【ブルキナ・ファソ】より

… 野生動物の減少が著しく,南部のポー,東部のアルリーを中心に,象,ライオン,野牛などの保護地区が設けられている。
[住民,社会]
 ブルキナ・ファソの住民は,ボルタ語族に属する言語をもつモシ族(約300万人),ロビ族およびダガリ族(約44万人),ボボ族(約42万人),グルンシ諸族(約33万人),グルマンチェ族(約28万人)等が過半数を占め,次いで西アトランティック語族に属する言語をもつフルベ族(約66万人),マンデ語族に属する言語をもつサモ族(約14万人),ビサ族(約13万人)から成る。とくに西部地方は小部族集団に分かれており,部族の単位のとり方にもよるが,ブルキナ・ファソ全体で60以上の部族集団があるとみられる。…

【モシ王国】より

…西アフリカ内陸のサバンナ地帯,現在のブルキナ・ファソ(旧,オートボルタ)に,おそらく15世紀中ごろから形成されたと思われるモシ族Mossiの王国。伝承によると,ガンバガ(現,ガーナ北部)の男まさりの王女が馬に乗って出奔し,荒野で北方から来た狩人と結ばれて生まれた男の子ウェドラオゴ(牡馬の意)が始祖とされる。…

※「モシ族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android