モスクワ声明(読み)もすくわせいめい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モスクワ声明」の意味・わかりやすい解説

モスクワ声明
もすくわせいめい

正式名称は「共産党労働者党代表者会議の声明」。1960年10月、社会主義革命43周年祝典に際し、モスクワで開かれた81か国の共産党・労働者党代表者会議で採択された声明。この会議は中ソ論争がようやく表面化しつつある時期に行われ、国際共産主義運動内部における見解対立から、声明の採択にあたって激しい論争が交わされた。このため、部分的に一貫しない表現が残り、のちに力点の置き方によって解釈相違が生じたが、基本的には、当面する国際共産主義運動の闘争団結の方向を示した歴史的文書とみなされている。その内容は、1957年のモスクワ宣言を受け継ぎ、次の点を明らかにしている。〔1〕現代は各国人民が次々と社会主義への道を踏み出す時代であり、今日の時代の歴史発展のおもな方向を決定しているのは、社会主義世界体制、反帝勢力、社会主義のために戦っている勢力である。〔2〕アメリカ帝国主義は世界反動の主柱であり、国際的憲兵である。〔3〕資本主義の全般的危機は新たな段階に入り、帝国主義体制は衰退しつつある。〔4〕帝国主義の侵略的本質は変わっていないが、平和勢力が共同して努力すれば、世界戦争を防止することができる。〔5〕民族解放運動高揚による植民地主義の完全な崩壊は避けられない。〔6〕一連の資本主義国では、労働者階級は労働者の統一戦線および人民戦線などを基礎に人民の大多数を結集し、平和的方法で社会主義革命を実現する可能性をもっている。〔7〕すべての共産党・労働者党は独立した平等な党であり、自主・平等の基礎のうえに、相互協議による国際的な共同行動と連帯を確立していく。

[佐藤信一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モスクワ声明」の意味・わかりやすい解説

モスクワ声明
モスクワせいめい
Moscow statement

81ヵ国の共産党,労働者党の代表が 1960年 11~12月にモスクワで開いた会議の成果として,12月6日に発表した共同声明。 57年 11月社会主義 12ヵ国の党代表がモスクワで会合し,56年のソ連共産党第 20回大会以降生じた国際共産主義運動の路線をめぐる意見の食違いを調整,宣言 (モスクワ宣言) を採択した。しかし意見の相違が解消せず対立が激化したため,60年 81ヵ国会議が開かれた。ここで世界の現状認識,革命の戦略,戦術などについて再び意見の一致をみたが,これはソ連の「平和共存」,中国の「帝国主義との対決」などの主張を並立させた中ソ妥協の産物であったため,会議後それぞれが声明のなかの自己に有利な点を強調することになり,両者は公然たる対決への道を歩むにいたった。

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