モミジ

改訂新版 世界大百科事典 「モミジ」の意味・わかりやすい解説

モミジ

カエデの代表種であるイロハカエデの別称。また総称的な名前としてカエデ類をモミジ類とも呼ぶこともある。さらに紅葉黄葉する現象や,そのような樹種に対しても〈もみじ〉の名前がつけられる。もともとは秋に紅葉する樹やその紅葉のことを〈もみじ〉と呼んでいた。のちに紅葉の美しい種類に対して〈もみじ〉の名が使われるようになり,特に,京都の紅葉で有名な高雄山に多いカエデのタカオモミジ(イロハカエデ)がモミジと呼ばれることが多くなったのである。日本のような北半球温帯地域では特にカエデ類が多く,秋の紅葉や黄葉が常緑のカシ類や針葉樹の緑と対比的に照りはえて,各地に〈もみじ〉の名所がある。
執筆者: 《万葉集》でモミジといえば圧倒的に黄葉をさし,秋の色は黄色とされていたが,平安時代になると梅も紅梅が珍重されたように,華美な時代趣向を反映して紅葉する楓(かえで)が秋の代表とされるようになった。楓は《万葉集》にはその色や形から蝦手(かえるで),鶏冠木と表記され,この紅葉を鑑賞する〈紅葉の宴〉は奈良時代に始まり,《源氏物語》の〈紅葉賀〉には最も華やかなさまが描かれている。この時代には紅葉狩りや紅葉合せ等の遊びが盛んになされ,とくに京都の嵐山は紅葉の名所として,絵画文学の素材とされた。また春の女神である東の佐保姫に対し,秋の女神の竜田姫は西にあり,大和竜田は紅葉の名所とされ,多くの歌が作られた。民間では,秋の山の紅葉を見て作柄や天候を占う風があり,単にその美しさをめでるばかりではなかった。紅葉も花と同様に予兆を示す神聖な木とされたため,これを屋敷に植えるのを忌み,また小正月に餅花をつけて飾った。長野県木曾郡王滝村では,小正月に2間もある紅葉の枝に団子をつけて立てるという。また盲僧社会で最も重要な儀式とされた春秋の積塔会(しやくとうえ)でも花紅葉にひしゃくをつけて立てたという。
紅葉(こうよう)
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百科事典マイペディア 「モミジ」の意味・わかりやすい解説

モミジ

カエデ

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世界大百科事典(旧版)内のモミジの言及

【カエデ(楓)】より

…カエデ属樹木の総称。カエデは蛙手(かえるで)で,最もふつうに見られるイロハモミジやオオモミジの掌状に分かれる葉をカエルの手になぞらえたもの。モミジともいうが,これは紅葉するという意味の〈もみず〉からきており,秋に紅葉する植物の代表であるカエデ類を指すようになった。…

※「モミジ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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