モモアカアブラムシ(英語表記)Myzus persicae

改訂新版 世界大百科事典 「モモアカアブラムシ」の意味・わかりやすい解説

モモアカアブラムシ
Myzus persicae

半翅目アブラムシ科の昆虫で,体長1.5~2.5mm。和名は桃の赤いアブラムシの意味であるが,体色は赤褐色のほか,緑や淡黄色個体も見られる。寄生範囲はきわめて広く,各種の野菜,花卉果樹に寄生して生育を妨げ,品質を低下させる。また100種を超す植物ウイルス病を媒介することが知られ,農園芸作物の害虫として重要である。季節的に寄主を変える性質があり,越冬卵からかえる春の世代はモモなど少数のバラ科植物に寄生し,葉を縦に巻いて縮らせる。数世代をそこで過ごし,夏には種々の草本植物へ移住する。これら春から夏の間の世代はすべて単為生殖を行う。秋には再びバラ科植物に帰り,そこで1年を通して唯一の有性世代である雌雄によって冬を越すための受精卵が産み出され,こうして一つの生活環が完了する。しかし一部の個体は秋にバラ科植物に帰らず,草本植物上で単為生殖世代を繰り返す。冬が比較的温暖な地方では,このような一年中単為生殖のみの生活環をもつ個体がふつうに見られる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モモアカアブラムシ」の意味・わかりやすい解説

モモアカアブラムシ
ももあかあぶらむし / 桃赤蚜虫
[学] Myzus persicae

昆虫綱半翅(はんし)目同翅亜目アブラムシ科Aphididaeに属する昆虫。体長1.8~2.0ミリ、体は緑色、黄色、桃色など多彩で、光沢がある。触角は六節からなり、体長よりすこし長い。角状管は長円筒形で、中央部はやや膨らむことがある。有翅胎生雌のはねは透明。各種の草花や野菜に寄生し、害虫として有名。普通、春はモモの葉に寄生して葉を縮らせる。初夏には有翅の胎生雌が出現し、パンジー、キャベツ、ダイコンニンジン、ナス、ジャガイモなど数百種の植物に寄生し害を与える。ウイルス病も媒介する。日本全土のほか、世界中に分布する。

[林 正美]


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