モラトリアム(支払猶予)(読み)もらとりあむ(英語表記)moratorium

翻訳|moratorium

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

モラトリアム(支払猶予)
もらとりあむ
moratorium

国家法令によって民間や国家の債務の支払いを一定期間強制的に猶予させる措置をいう。「支払猶予」と訳され、その目的は信用秩序の維持である。歴史上、日本では1923年(大正12)の関東大震災のときに震災地に限定して30日間、1927年(昭和2)の金融恐慌では全国的に3週間の支払猶予令が出された。またアメリカでは、大不況の1933年に国内的なモラトリアムが実施された。国際的モラトリアムとしては、1931年に政府間債務に対して行われた「フーバー・モラトリアム」がある。しかしながらモラトリアムは、今日の民主主義の時代には考えられない措置であるから、まさに歴史上の事柄といえる。

 第二次世界大戦後は、国際通貨基金IMF)体制と世界銀行を柱に国際金融秩序が維持されるシステムになったことから、このような問題にはIMFが前面に出て解決する方法がとられている。たとえば、国際金融の世界で1980年代前半に開発途上国において累積債務問題が起こり、ブラジルアルゼンチンの中南米諸国、それにフィリピンエジプト、旧ユーゴスラビアなどが債務の支払いを猶予させながらIMFの指導融資によって、それぞれの国の国民経済再建を実行させることで金融危機を回避する方法がとられた。このIMF方式は、1994年のメキシコ通貨危機、97年のタイの通貨危機などによる金融危機においても利用されている。

[石野 典]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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