ヤイロチョウ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤイロチョウ」の意味・わかりやすい解説

ヤイロチョウ

(1) Pitta nympha; fairy pitta スズメ目ヤイロチョウ科。全長 18cm。頭は褐色,頭央線と太い過眼線は黒色,背との一部は淡緑色,眉斑は黄白色。小雨覆と腰はコバルト色,尾は緑青色で先端は濃青色。胸腹部は黄褐色,下腹部は赤色で,初列風切は紫色を帯びた黒色で白斑がある。文字どおり八色(やいろ)の羽色の鮮やかな鳥である。中国南部チェジュ(済州)島,日本,タイワン(台湾)などで繁殖し,ボルネオ島で越冬する。日本には夏鳥(→渡り鳥)として渡来し,本州中部以南と四国地方九州地方対馬など各所の森林で繁殖が確認されている。常緑広葉樹林や針広混交林に生息し,木の根元のくぼみや岩のすき間などに巣をつくる。ミミズや節足動物などを地上で探して捕食する。「しろぺんくろぺん」と聞こえる声でさえずる(→さえずり)。
(2) Pittidae; pittas スズメ目ヤイロチョウ科の鳥の総称。3属 33種からなり,全長 15~29cm。雌雄同色で,どの種も羽色が鮮やかである。頭は体のわりに大きく,頸は短く,胴体はずんぐりとしており,翼も尾も短い。脚は長めでしっかりし,趾(あしゆび)も長い。アフリカの 2種とオーストラリアの 3種を除き,インドネパールから東南アジア東アジア南部に分布している。ほとんどの種が暗い森林内に生息し,地上で昆虫類陸生貝類,ミミズなどをとって食べる。

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改訂新版 世界大百科事典 「ヤイロチョウ」の意味・わかりやすい解説

ヤイロチョウ (八色鳥)
fairy pitta
Pitta brachyura

スズメ目ヤイロチョウ科の鳥。全長約18cm。その名のように多彩な鳥で,背と翼の基半分は緑色,雨覆と腰は青く,初列風切羽は黒く,大きな白斑がある。頭上は褐色だが黒い頭央線と過眼線があり,眉斑(びはん)は黄色い。のどは白く,胸部と脇は黄色で,腹部から下尾筒(かびとう)は赤い。尾は黒く先端は青色。アジア東部・南部からオーストラリアまで分布し,日本には夏鳥として本州,九州,四国でみられるが,生息数はきわめて少ない。四国と九州では,局地的に低山の森林で繁殖している。よく茂った林の地上で生活しているために姿は見つけにくいが,口笛のような音色でポポピー,ポポピーと早朝や夕方に鳴いている。

 ヤイロチョウ科Pittidaeの鳥はどの種も多彩な羽毛の美しい鳥である。1属23種からなり,2種はアフリカに,それ以外の種はインドおよび中国南部からオーストラリアにかけて分布している。全長15~30cm。暗い森林やマングローブ林などに生息し,ほとんど地上で生活している。翼は体の大きさの割りに短く,体は全体としてずんぐりしているが,脚は長くじょうぶである。赤色,橙色,黄色,緑色,青色,藍色,紫色,白色,黒色,褐色などの鮮やかな羽毛をもち,くちばしはやや太く,がっちりしている。餌は昆虫,ミミズ,小型の両生類,陸生貝類,エビ類などさまざまな小動物である。林内の水辺などから離れずに1羽かつがいで生活し,樹木の根もと,岩陰,傾斜地のくぼみなどに枯枝,根などを集めて側部に出入口のある球形の巣をつくる。地上数mの巨木の叉状(さじよう)部に巣をつくることもある。1腹2~6個の卵を産む。雌雄とも抱卵,育雛(いくすう)に従事する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤイロチョウ」の意味・わかりやすい解説

ヤイロチョウ
やいろちょう / 八色鳥
pitta

広義には鳥綱スズメ目ヤイロチョウ科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この科Pittidaeには約23種があり、アフリカから南アジアを経てオーストラリアやソロモン諸島にまで分布する。全長15~28センチメートル、どの種も尾が短くて足が長く、赤や青や緑からなる美しい羽色をしている。森林にすみ、おもに地上で昆虫やカタツムリなどの小動物をとって食べる。ねぐらは樹上にとり、さえずりも樹上で行う。巣は地上のくぼみなどに、側面に入口のある球形のものをつくる。一腹卵数は4~6個。抱卵、育雛(いくすう)は雌雄ともに行う。

 種としてのヤイロチョウPitta brachyuraは全長約20センチメートル。名のとおり緑、赤、黄、青、茶、黒などの多彩な羽色をしている。インドからオーストラリアにまで広く分布し、日本には夏鳥として少数が訪れ、おもに南日本で繁殖する。常緑広葉樹のよく茂った森林にすみ、「ポポピー、ポポピー」とさえずる。

[樋口広芳]

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百科事典マイペディア 「ヤイロチョウ」の意味・わかりやすい解説

ヤイロチョウ

ヤイロチョウ科の鳥。翼長12cm。黄色の眉斑(びはん)が目立ち,背面や翼は緑や青で美しい。インド,台湾,南中国,日本で繁殖し,北方のものは冬,南へ渡る。日本では本州,四国,九州で夏鳥として繁殖しているが局地的。岩や木のまたにコケなどでまるい巣を作り,地上でミミズや昆虫を捕食する。ポポピー,ポポピーとさえずる。絶滅危惧IB類(環境省第4次レッドリスト)。

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