ヤナギ(柳)(読み)ヤナギ(英語表記)Salix; willow

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤナギ(柳)」の意味・わかりやすい解説

ヤナギ(柳)
ヤナギ
Salix; willow

ヤナギ科ヤナギ属 Salixの植物の総称であるが,一般にはそのうちの1種,シダレヤナギ (垂柳)をさしていう場合が多い。ヤナギ属は主として北半球の温帯に約 300種が分布する大きな属で,一部は南アメリカにも知られる。大部分が落葉高木で細長い葉を互生するが,なかには対生の種類 (イヌコリヤナギなど) やミネヤナギなどの高山性の種類で小低木のものも含まれる。日本には約 40種の自生が知られ,川原山地の林縁などにネコヤナギ (猫柳)バッコヤナギ S. bakko,アカメヤナギ S. chaenomeloidesなどが普通にみられ,またやや湿った場所にオノエヤナギ S. sachalinensis,カワヤナギ S. gilgianaなどが多い。街路樹や庭園樹としてなじみの深い,いわゆるヤナギはシダレヤナギで,中国大陸の原産ともいわれるが自生地は知られていない。日本では古くからごく普通に栽培され,8~10mもの高木ながら地面近くまで枝が垂れ下がる優美な樹姿をもつことから世界でも広く栽培されている。柳行李水田などに栽培するコリヤナギ (行李柳)S. koriyanagiの枝でつくる。

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百科事典マイペディア 「ヤナギ(柳)」の意味・わかりやすい解説

ヤナギ(柳)【ヤナギ】

ヤナギ科ヤナギ属の総称であるが,単にシダレヤナギをさすことも多い。ヤナギ属植物は落葉性の高木〜低木。主として北半球に分布し,世界に300種以上,日本には雑種を含めて,ネコヤナギコリヤナギなど約70種が知られる。葉は多く互生するが,まれに対生,披針形卵形で,ふつう托葉が発達する。雌雄異株。春,開花し,多くは直立する尾状花序となる。おしべは多くは2本,子房は1個。虫媒花。シダレヤナギは中国原産といわれ,日本には奈良時代には渡来。各地に植えられるが,日本に入ってきているものには雄株が多い。枝は柔軟で長く下垂し,葉は線状披針形で,裏面は白い。3〜4月,葉がのびきる前に軸の曲がった花穂をつけ,多数の黄緑色の小さい花を開く。種子は5月に成熟。材を器具,樹を街路樹,庭木などとする。

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