ヤンソン(読み)やんそん(英語表記)Tove Jansson

デジタル大辞泉 「ヤンソン」の意味・読み・例文・類語

ヤンソン(Tove Marika Jansson)

[1914~2001]フィンランドスウェーデン系女性作家・画家。童話「ムーミン」シリーズで国際的に知られる。他に自伝「彫刻家の娘」や小説「誠実な詐欺師」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤンソン」の意味・わかりやすい解説

ヤンソン
やんそん
Tove Jansson
(1914―2001)

フィンランドの女性画家、児童文学作家。スウェーデン系の出身で、作品スウェーデン語で書く。スウェーデンやフランスで絵画を学ぶかたわら、1930年代より政治誌『ガルム』に表紙絵を寄稿する。その後、表紙絵に自らのサインのかわりに描いていたムーミントロール主人公にした『小さなトロールと大洪水』(1945)を著して挿絵画家および作家としてデビュー。以後、『ムーミン谷の彗星(すいせい)』(1947)をはじめ、幻想的な「ムーミン物語」を8冊発表。70年に発表した『ムーミン谷の11月』が、シリーズ最後の作品となった。フィンランドの海辺を舞台に、孤独、愛情、理解、慰めをやさしく語り、広く世界に真価を認められる。フィンランドのルドルフ・コイブ賞、スウェーデンのニールス・ホルゲルソン賞とエルサ・ベスコフ賞を、66年には国際アンデルセン賞を受賞。ムーミン・シリーズは30以上の言語に翻訳され、日本では発行部数1000万部を超えたといわれた。また、69年以来三度テレビアニメ化され、90~91年のアニメは本国フィンランドでもブームを巻き起こしたという。ほか絵本『それからどうなるの?』(1952)、少女小説ソフィアの夏』(1971)、自伝的小説『彫刻家の娘』(1968)、短編小説集『聴く女』(1972)などがある。

[山内清子・末延 淳]

『山室静他訳『トーベ・ヤンソン全集』全8巻(1968~72・講談社)』『富原真弓訳『トーベ・ヤンソン・コレクション』全8巻(1995~98・筑摩書房)』『富原真弓訳『ムーミン・コミックス』全14巻(2000~01・筑摩書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤンソン」の意味・わかりやすい解説

ヤンソン
Jansson, Tove

[生]1914.8.9. ロシア帝国,ヘルシンキ
[没]2001.6.27. フィンランド,ヘルシンキ
フィンランドの童話作家,画家。フルネーム Tove Marika Jansson。ムーミンという架空の生き物を主人公にした童話で世界の人々に愛された。ムーミンはよく眠るカバに以た姿のトロール(妖精)で,洪水や彗星などの襲撃に敢然と立ち向かう一家の冒険物語が人気を呼んだ。芸術家の両親のもとに生まれ,スウェーデンのストックホルムで絵画を学び,1943年に初の個展を開いた。第一作『小さなトロールと大きな洪水』Småtrollen och den stora översvämningen(1945)に続いて『ムーミン谷の彗星』Kometen Kommer(1946)を上梓。1953~60年にはロンドンの夕刊新聞『イブニング・ニューズ』にムーミンまんがを連載した。両親との間で使っていたスウェーデン語で書かれたこれらの童話は,30ヵ国語以上に翻訳された。子供向けの芝居,短編小説,大人向きの小説もこなし,自伝『彫刻家の娘』Bild-huggarens dotter(1968)を著した。1952年ストックホルム賞,1953年セルマ・ラーゲルレーブ・メダル,1966年国際アンデルセン賞を受けた。

ヤンソン
Jansson, Eugène Fredrik

[生]1862
[没]1915
スウェーデンの画家。 E.ムンク影響を受けて幻想的な風景画を得意とし,ストックホルムで活躍薄明の港や市街を好んで主題とした。作品の多くはストックホルム王立美術館に収蔵されている。

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改訂新版 世界大百科事典 「ヤンソン」の意味・わかりやすい解説

ヤンソン
Tove Marika Jansson
生没年:1914-2001

フィンランドの女流童話・絵本作家。スウェーデン語で書いた空想の動物ムーミンを主人公にしたファンタジー童話〈ムーミン・シリーズ〉8巻(1945-65)で国際的評価を得た。全員が弱点や欠点をもっているのに,互いの思いやりで,自由に,おおらかに自分らしく生きる世界をユーモラスに温かく描いた。《楽しいムーミン一家》《ムーミン谷の冬》ほか。1966年国際アンデルセン賞作家賞を受賞した。
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百科事典マイペディア 「ヤンソン」の意味・わかりやすい解説

ヤンソン

フィンランドの女性児童文学作家,美術家。作品はスウェーデン語で書いた。装飾美術を手がけたが,1946年からムーミンという空想の生きものの一家,友人などを主人公とする一連の空想物語(8巻,1945年―1965年)を発表。奔放な空想と美しい自然描写で国際的評価を得た。シリーズのさし絵も自筆。以後は《誠実な詐欺師》(1982年)など大人向けの物語を書き続けた。
→関連項目タンペレ

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「ヤンソン」の解説

ヤンソン Janson, Johannes Ludwig

1849-1914 ドイツの獣医学者。
1849年1月9日生まれ。明治13年(1880)来日し,駒場農学校,その後身の帝国大学農科大学で獣医学をおしえる。一時帰国したのち再来日し,盛岡高農(現岩手大),七高(現鹿児島大)のドイツ語教師となった。大正3年10月28日鹿児島で死去。65歳。ベルリン出身。ベルリン獣医学校卒。

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世界大百科事典(旧版)内のヤンソンの言及

【児童文学】より

…この伝統はグリーペM.Gripeにうけつがれている。フィンランドのT.ヤンソンはムーミンを主人公にした不思議な世界をつくりあげた。 そのほかの諸国からひろうと,スイスのJ.シュピーリの《ハイジ(アルプスの少女)》(1881)とウィースJ.R.Wyssの《スイスのロビンソン》(1812‐13),ハンガリーのF.モルナールの《パール街の少年たち》(1907),チェコスロバキアのK.チャペックの《童話集》(1932)が見落とせない。…

【スウェーデン】より

…これは,フィンランドが,19世紀はじめまで長い間スウェーデンの領土であり,そこではスウェーデン語が用いられていたという事情によるものである。初期プロレタリア文学のアンデルソンや,一連の《ムーミン》もので知られる児童文学のヤンソンなどの作品は,このなかに入れられるものといえよう。【田中 三千夫】
[音楽]
 キリスト教布教以前にはスカルド詩の詩人たちが活躍し,スペルマンspelmanと呼ばれる楽師がヒンメル(チター型の弦楽器),ノーレルール(樺の樹皮で巻かれた長大なホルン),フィオール(フィドル),ニッケルハルパ(4弦楽器),クラリネット,ロートピーパ(羊飼の笛)等の民俗楽器を演奏し,また農民たちも日常歌と踊りに親しんでいた。…

※「ヤンソン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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