ユグルタ(英語表記)Jugurtha

改訂新版 世界大百科事典 「ユグルタ」の意味・わかりやすい解説

ユグルタ
Jugurtha
生没年:?-前104

古代ヌミディア王。マシニッサの孫。伯父ミキプサMicipsaの時代にヌミディアからの援軍指揮官としてヌマンティア攻囲戦に参加(前133),小スキピオに認められ,ローマの名門貴族に知己を得た。伯父の死後,その遺児アドヘルバルAdherbal,ヒエムプサルHiempsalとともに王位に就いたが,ミキプサの政策の変更を唱えて二人と対立内戦となる(前118)。ローマの調停で王国を折半した後も紛争は続き,ユグルタは元老院に逆らってアドヘルバルを打倒(前112),ローマは宣戦布告する(ユグルタ戦争)。開戦早々名門出身のコンスル,ベスティアLucius Calpurnius Bestiaとの間に講和が成立したが,これはユグルタによる貴族買収との疑惑を呼び,グラックス兄弟の改革圧殺以来くすぶっていたローマ民衆の反貴族感情に火をつけ,疑惑の解明と戦争継続を叫ぶ平民派(ポプラレス)の台頭をもたらした。ユグルタは証人としてローマに召喚されるが,尋問に至らぬまま帰国,戦争は再開され,彼は農民,辺境遊牧民などの支持を得てメテルスQuintus Caecilius Metellus Numidicus,マリウス指揮下のローマ軍を相手に善戦したが,同盟者マウレタニア王の裏切りでローマに引き渡され(前105),処刑された。戦後は親ローマ的な王族が王位に就けられ,王国内にはマリウスの部下の退役兵が大量に植民され,ヌミディアの独立は形骸化する。なお,この戦争の模様はサルスティウスの《ユグルタ戦記》に詳しい
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ユグルタ」の意味・わかりやすい解説

ユグルタ
Jugurtha

[生]前160頃
[没]前104. ローマ
北アフリカ,ヌミディアの王 (在位前 118~105) 。ローマ帝国の属国であったヌミディア王ミキプサの甥であったが,ローマ軍に従軍して元老たちと親交を結び,その力で伯父王ミキプサの養子となり,その死後,前 118年2人のいとことともに王国を統治。のちその一人を殺害,ローマ官吏を買収して王国を2分し,みずからは豊かな西部を治めた。前 112年残りのいとこの東部を攻めその首都を落したが,イタリア商人を虐殺したことからローマと戦争に入り,アウルス・アルウィヌス (前 109) ,メテルス・ヌミディクス (前 109/8) ,G.マリウス (前 107) らのローマ遠征軍と戦い,ゲリラ戦を展開して成功を収めた。しかし前 105年ついに,盟友マウレタニアの王ボックス1世の裏切りによって捕えられ,マリウスの副官 L.スラに引渡され,翌年ローマで処刑された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユグルタ」の意味・わかりやすい解説

ユグルタ
ゆぐるた
Jugurtha
(?―前104)

北アフリカのヌミディア王(在位前118~前104)。ヌミディアの王ミキプサの甥(おい)であったユグルタは、王の実子らと並ぶ王位継承予定者となっていたが、王の死(前118)後、旧来の対ローマ従属政策からの転換を目ざし、反体制派を糾合して王の実子らと対立。内戦のすえ、単独支配者となった。この間ユグルタは、ローマの介入を防ぐべく元老院内の知己を通じてローマ政界工作を進めた。これがかえってローマ民衆派の反元老院・反ユグルタ運動を招く結果となり、紀元前111年、ついにローマとの全面戦争に突入(ユグルタ戦争)した。緒戦においてはしばしばローマ軍を窮地に陥れ、いったんは停戦に持ち込んだものの、ローマ側の戦争遂行体制が固まるにつれて戦局は不利となった。とりわけ前107年マリウスがローマ軍司令官となるに及んで、ユグルタはヌミディア国内の拠点を失った。前105年、同盟者であるマウレタニア国王ボックスBocchusの裏切りによりローマ軍に引き渡され、処刑された。

[栗田伸子]

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百科事典マイペディア 「ユグルタ」の意味・わかりやすい解説

ユグルタ

古代北アフリカのヌミディア王。建国者マシニッサMasinissa(前238年―前148年)の孫。次王ミキプサの遺児との内紛をきっかけに対ローマ戦争(ユグルタ戦争)を開始,メテルス,マリウスを迎え討ったが捕らえられ,処刑された。サルスティウス《ユグルタ戦記》に詳しい。
→関連項目スラ

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ユグルタ」の解説

ユグルタ
Jugurtha

?~前104

北アフリカのヌミディアの王。養父ミキプサの死後,その2子と領土を三分したが,これを殺して独裁者となった。ユグルタ戦争でローマに敗北し,捕えられ獄死した。

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