ユッカ(読み)ゆっか

精選版 日本国語大辞典 「ユッカ」の意味・読み・例文・類語

ユッカ

〘名〙 (yucca) ユリ科ユッカ属の属名で、キミガヨランイトランセンジュランなど数種の常緑木質植物の総称。北アメリカ西インド諸島・中央アメリカ原産で、明治時代に渡来し、観賞用に栽培される。葉は剣状でかたく茎頂または根ぎわに群がってつく。白・淡黄・紫色などの鐘形花が多数円錐状に集まって咲く。ユッカ蘭。《季・夏》

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デジタル大辞泉 「ユッカ」の意味・読み・例文・類語

ユッカ(〈ラテン〉Yucca)

キジカクシ科イトラン属の植物の総称。茎は木質、葉は剣状で堅く、茎の先に鐘形の花を円錘状につける。北アメリカおよび西インド諸島に約30種があり、日本には明治以降に渡来。イトランキミガヨランなど。 夏》「雨あしの広場にしぶき―咲く/蛇笏

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユッカ」の意味・わかりやすい解説

ユッカ
ゆっか
[学] Yucca

リュウゼツラン科(APG分類:キジカクシ科)イトラン属植物の総称。半砂漠地に生え、木質の茎と多肉質の葉をもつ特徴があり、従来のユリ科から新しい科に変わった。北アメリカの南部メキシコ、西インド諸島などに約30種ある。常緑木質植物であるが、茎がほとんどないものもある。葉は茎に頂生して多数集まるか、または根生する。線形または剣状で、肉質で堅く、先は刺(とげ)となるもの、縁(へり)に鋸歯(きょし)または糸状の繊維がつくものがある。葉心から大形の円錐(えんすい)花序を直立して、鐘形の大きい白色花を多数下向きに開く。花被片(かひへん)は6枚、雌しべは1本で、原産地では蒴果(さくか)を結ぶ。日本には江戸時代の末から明治年間に一部が渡来した。北アメリカ南部原産のアツバキミガヨラン厚葉君代蘭Y. gloriosa L.、キミガヨラン(君代蘭Y. gloriosa var. tristis Carrière (Y. recurvifolia Salisb.)、イトラン(糸蘭)Y. filamentosa L.のほかに、北アメリカ南部から西インド諸島原産のセンジュランY. aloifolia L.、葉辺が黄色の園芸品種キンポウランなどが、本州の関東地方以西の暖地の公園や庭園に観賞用として植えられている。日当りでよく育ち、乾燥に耐え、土質を選ばない。都市の公害にも強く、移植は容易。繁殖は挿木、根分けによる。

小林義雄 2019年5月21日]

文化史

先史時代、北アメリカのインディアンにとって、花は食料の一つであった。南西テキサスの岩陰遺跡からみつかった多数の糞石(ふんせき)に、ユッカの花粉が含まれていた。なかには花粉の90%以上をユッカが占める糞石もあり、ユッカの花期に集まり、花を食べる食生活のあったことが明らかにされた。そのもっとも古い糞石は2800年前にさかのぼる。ユッカはかつて飼料にされ繊維も得たが、現在の利用は観賞栽培にほぼ限られる。ヨーロッパには、1596年に初めてアツバキミガヨランが伝わった。日本には幕末に、オランダ経由でイトランが渡来したが、広がるのは関東大震災(1923)以後で、洋式庭園と洋館が増えたからといわれる。

[湯浅浩史 2019年5月21日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ユッカ」の意味・わかりやすい解説

ユッカ
Yucca

リュウゼツラン科ユッカ属Yuccaの常緑植物の総称。アメリカ南部からメキシコや西インド諸島に約40種がある。多くは低木状だが茎の立たない種もある。センジュラン(千寿蘭)Y.aloifolia L.(英名Spanish bayonet,dagger plant)は茎が直立し,長さ30~40cmの硬い剣状葉を密生する。葉縁が黄色覆輪となるキンポウラン(金宝蘭)cv.Marginataの方が観賞価値は高い。ともに明治中ごろに渡来し,庭園に植えられる。キミガヨランY.recurvifolia Salisb.は長披針形葉を密生し,古株になると分枝して群生する。茎頂から1m以上の花茎を直立し,白色鐘状花を下向きに多数つける。アツバキミガヨランY.gloriosa L.(英名Spanish dagger,Lord's candlestick)は前種に比べ全体に大型で,葉は硬く,下葉も垂れない。花茎は長く,白色鐘状花も長さ7~8cmと大きい。開花期は夏~秋で,開花期間は長い。イトランY.filamentosa L.(英名Adam's-needle,needle palm,silk grass)は茎が短く,柔らかい粉白緑色の葉を叢生(そうせい)する。長さ1~2mの花茎を直立し,白色鐘状花を100花以上も着ける。天保年間(1830-44)に渡来した。ユッカ属は広い場所に似合うので,学校や公園によく植栽される。乾燥には強く,排水と日当りの良い土地を好む。耐寒性があり,関東以西では戸外で良く育つ。
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百科事典マイペディア 「ユッカ」の意味・わかりやすい解説

ユッカ

リュウゼツラン科の一属で,北米の南東部,中米などに40種ほど知られ,多くは観賞用に栽培される木本(もくほん)性の常緑植物。有茎または無茎。葉は根生または茎の頂に多数集まり,細長くて硬く,肉質で先は鋭くとがり,縁に鋸歯(きょし)をもつものもある。葉叢の中心から総状〜円錐花序を直立して釣鐘形の花を下垂してつける。花色は白,淡黄,ときに淡紫色を帯びる。日本では耐寒性のあるイトラン,キミガヨラン,アツバキミガヨラン,センジュランなどが庭で栽培される。イトランは高さ1〜3mになり,茎は短くて太く,葉は濃緑色,縁には糸状の繊維がつく。花は大型で白色。繊維植物ともされる。白色の斑入(ふいり)葉品もある。キミガヨランは茎が高さ2m内外,葉は湾曲して暗青色を帯び,黄白色で多少紫色を帯びた花を開く。アツバキミガヨランはキミガヨランに似るが全体に大型で,花は径10cm,葉はぶ厚く湾曲しない。センジュラン(チモランとも)は高さ6〜7mになる。葉は先端が針のようにとがり,縁に細かい鋸歯がある。花は径約10cm,白色であるがしばしば紫色を帯びる。センジュランの葉に黄色の斑が入った園芸品種はキンポウランと呼ばれる。また,ユッカ・エレファンティペスは中米原産で,高さ8〜9mにもなるが,日本では丸太状の幹を輸入して発根させ,新葉を生じさせたものが〈青年の樹〉の名で鉢植,室内観葉植物として市販されている。原産地では花を食用にするという。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ユッカ」の意味・わかりやすい解説

ユッカ
Yucca

リュウゼツラン科の常緑低木の1属。広義にはユリ科に含まれる。北アメリカ南部からメキシコに分布し,茎は太く木化する。葉は革質で厚く,線状や剣状で多数が茎や枝の上部にやや密に互生する。初夏,葉の間から大型の円錐花序を出し,多数の黄緑色を帯びた白色の鐘形花をつける。多肉質の花被片6枚,おしべ6本,めしべ1本がある。果実はできるがあまり種子を生じないので,株分けや挿木で繁殖させる。日本で普通にみられるのはキミガヨラン Y. recurvifoliaで,観賞用として庭園などに植えられる。その他,イトラン (糸蘭),葉がアロエに似たチモラン Y. aloifoliaや,葉が厚く先端が赤褐色の硬いとげになるアツバキミガヨラン Y. gloriosaも日本で栽培されている。

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