ユメナマコ(読み)ゆめなまこ

改訂新版 世界大百科事典 「ユメナマコ」の意味・わかりやすい解説

ユメナマコ (夢海鼠)
Enypniastes eximia

ナマコ綱ウキナマコ科の棘皮(きよくひ)動物。深海中で浮遊する大型のナマコで,駿河湾紀伊水道ニュージーランド水深300~2000mから採集されている。体長15~20cmで,腹面は扁平背面は盛り上がって前部の高さは4cmほどになる。生きているときは鮮やかな赤色であるが,捕獲後,時間がたつにつれて色があせ,ところどころにうす赤や緑色斑点が現れてくる。口は腹面の前端付近にあり,その周囲に20本の触手がある。背面の前端には12~14個のいぼ足が横に連なって翼状ひだになっており,その後方に3対の小さいいぼ足がある。8~12個の小さい管足が真ん中の部分を除いて腹面の両側に並んでいる。ほとんどのナマコが皮膚の中にもっている骨片はない。近縁種のオオユメナマコE.globosaは直径が25cmの球状で,南シナ海の水深3400~3800mより得られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユメナマコ」の意味・わかりやすい解説

ユメナマコ
ゆめなまこ / 夢海鼠
[学] Enypniastes eximia

棘皮(きょくひ)動物門ナマコ綱クラゲナマコ科に属する海産動物。深海で浮遊生活する変わったナマコ。体長15~20センチメートル。体は柔らかく、全体が美しい赤色。水からあげると徐々にまだらとなり、緑斑(りょくはん)が生じる。腹面は平たくて背面が隆起し、体の前方に帆のように広がって伸びたひだのある膜状突起がある。その下側には口と20本の周口触手がある。ナマコ類に特有の皮下骨片がない。日本近海、モルッカ海、ニュージーランド近海の水深300~2000メートルの水域に分布する。

[重井陸夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ユメナマコ」の意味・わかりやすい解説

ユメナマコ
Enypniastes eximia

棘皮動物門ナマコ綱板足目クラゲナマコ科。体長 15~20cm。生時鮮かな赤色を呈する深海浮遊性の美しいナマコで,腹面は平らで背面が隆起する。腹面前端付近に口が開き,その周囲に 20本の触手がある。背面前端には横列をなした 12~14個の疣足 (いぼあし) があり,それぞれが連なって翼状のひだとなっている。骨片はない。管足は腹面両側に8~12個あるが,小さい。駿河湾,紀伊水道などの水深 300~2000mから得られる。

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世界大百科事典(旧版)内のユメナマコの言及

【ナマコ(海鼠)】より

…ふつうは肉眼で見えないが,イカリナマコの類では,いかり形の骨片の先端が皮膚の外にでていて,これで他物に鉤着(こうちやく)する。一方,深海生のユメナマコには,これらの骨片がまったくない。食道の始部をとり囲んで5~10個の石灰環が並んでいて,この部分を保護している。…

※「ユメナマコ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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