ユンタ(読み)ゆんた

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユンタ」の意味・わかりやすい解説

ユンタ
ゆんた

沖縄県八重山(やえやま)列島に伝わる古代歌謡。鹿児島県奄美(あまみ)諸島以南の南島には口承歌謡が多いが、ユンタはその一形態である。ユンタは豊年祭や新築祝いなど、祭りや祝儀の場でも謡われるが、日常の作業労働の場で謡われることのほうが多い。集団で謡われるのが普通で、対語・対句を連ねて事柄を述べる、南島に伝わる叙事的歌謡の代表的なものである。ユンタの周辺にあるアヨージラバなどとよばれる歌謡に比べると、主題が多彩で歌数も多く、それだけ人々の生活に深くつながっていることを思わせる。農耕、家造り、造船航海、布織りと貢納などの作業を叙述するばかりでなく、労働の苦しみや恋の喜びなどまでが取り込められている。ユンタの語源は「誦(よ)み歌」からの転訛(てんか)説が有力であるが、そうであれば、本来、神にかかわりの深い聖なる歌であったものが、神の呪縛(じゅばく)を離れて人々の生活を包み込む作業労働歌として育っていったものと思われる。

外間守善

『外間守善・宮良安彦編『南島歌謡大成 Ⅳ八重山篇』(1979・角川書店)』

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百科事典マイペディア 「ユンタ」の意味・わかりやすい解説

ユンタ

沖縄県八重山列島の歌謡。与那国島ではドゥンタと呼ぶ。農作業など日常生活の場で,無伴奏で広く歌われた。男女の集団に分かれて,1句ずつ交互に代わりながら歌い,対句を重ねながら,前半をゆっくりと,後半は軽快なテンポで歌うことが多い。元来祭祀歌だったものがユンタの名で呼ばれることもある。現在,三線普及により節歌(ふしうた)化の傾向が強く,本来の交互唱によるユンタはすたれつつある。音楽的にはジラバとほとんど同義・同内容。
→関連項目節歌

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