ヨウ化水素(読み)ようかすいそ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨウ化水素」の意味・わかりやすい解説

ヨウ化水素
ようかすいそ
hydrogen iodide

水素ヨウ素化合物赤リンとヨウ素の混合物に水を滴下して得られる。

  2P+5I2+8H2O→10HI+2H3PO4
市販の57%ヨウ化水素酸を五酸化二リン上に滴下しても得られる。無色気体。特有の刺激臭がある。水には熱を発して溶けヨウ化水素酸となる。冷水から一、二、三、四水和物が得られる。エタノールエチルアルコール)にも溶ける。強い還元剤で、酸化剤や光によっても分解されヨウ素を遊離する。刺激性で皮膚粘膜を冒すので、取扱いには注意を要する。

[守永健一・中原勝儼]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「ヨウ化水素」の解説

ヨウ化水素
ヨウカスイソ
hydrogen iodide

HI(127.91).ヨウ化物にリン酸を加えて熱するか,ヨウ素と水素とを白金触媒を用いて直接反応させるか,ヨウ素と水の混合物に赤リンを加えて反応させると得られる.無色,特有の刺激臭のある気体.融点-50.8 ℃,沸点-35.4 ℃.水に易溶.水溶液ヨウ化水素酸という.エタノールに可溶.塩化水素や臭化水素より液化しやすく,またそれらより不安定で,酸化されやすく強い還元剤として作用する.多くの酸化剤や光によって分解され,ヨウ素を遊離する.塩素および臭素とただちに反応してヨウ素と塩化水素および臭化水素を生じる.また,塩化物や臭化物と反応してヨウ化物を生じる.多くの金属や金属の酸化物,水酸化物と反応して金属のヨウ化物を生じる.還元剤,ヨウ素化合物の製造,ドライエッチング剤などに用いられる.ゴムを侵し,また皮膚や粘膜もおかす.有毒.[CAS 10034-85-2]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨウ化水素」の意味・わかりやすい解説

ヨウ化水素
ヨウかすいそ
hydrogen iodide

化学式 HI 。無色,刺激性のガスで不燃性。空気中では発煙する。融点-50.8℃,沸点-35.1℃,臨界温度 151.0℃,臨界圧 82.0気圧。水によく溶け,ヨウ化水素酸を生じる。低級アルコールと反応し,ヨウ化アルキルを生じる。大気圧下ドライアイスで冷却すると無色の液体となる。ヨウ化水素酸は強い腐食性のある強酸で,天然ゴムを激しくおかす。大気,光に当ると黄色ないし褐色に変る。共沸混合物は沸点 127℃ (1気圧) ,比重 1.70で,56.9%のヨウ化水素を含む。還元剤,無機ヨウ化物の製造,医薬器の消毒,殺菌剤,分析試薬などとして用いられる。

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