ヨナ(英語表記)Jonah

翻訳|Jonah

精選版 日本国語大辞典 「ヨナ」の意味・読み・例文・類語

ヨナ

(Jonah) 旧約聖書ヨナ書」中の預言者

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改訂新版 世界大百科事典 「ヨナ」の意味・わかりやすい解説

ヨナ
Jonah

旧約聖書中の人物。2人いる。(1)ガテ・ヘペルのアミッタイの子で,北イスラエル王国ヤラベアム2世の時代に,イスラエルの国力回復を預言した主の僕,預言者(《列王紀》下14:25)。(2)旧約聖書《ヨナ書》の主人公。神の命令にそむいて逃げたが,再び宣教につかわされ,ニネベの町の滅亡を告知する。しかし人々が悔い改めたため,神は災を下すことをやめる。ヨナはそのことに対して抗議するが,トウゴマ実例によって逆にその正当性を問い返される。主題としてヨナに代表されるイスラエルの存在理由と,神の普遍的な歴史支配を取り扱う特異な物語で,きわめて平易,単純な文体で記されている。預言者的精神と知恵的精神が織りなすこの物語の核は,バビロン捕囚前の民間伝承に基づく。
執筆者:

後者のヨナの物語は,初期キリスト教美術に最も多く見られる題材のひとつである。この物語が死と復活を暗示するところから,石棺浮彫などの葬祭芸術にしばしばとりあげられた。3世紀末の石棺(ラテラノ美術館,ローマ)には,旧・新約の諸場面とともに,舟から海に投げ込まれて大蛇のような魚に呑まれるヨナ,陸に吐き出されるヨナ,トウゴマの下に裸体で横たわるヨナの場面が見られる。このうち,楽園における人間の休息を暗示するとされる〈トウゴマの下のヨナ〉は単独でも表されることが多い。中世では,写本挿絵などにヨナ物語の諸場面が見られるが,旧約のヨセフの物語などとともに,しばしばキリスト復活の予兆として扱われた。近世以降の作品では,海に投げ込まれる場面を描いたルーベンスの絵画や,陸に吐き出される場面を描いたティントレットのサン・ロッコ宮殿天井画(ベネチア)などがある。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨナ」の意味・わかりやすい解説

ヨナ
よな
yônāh ヘブライ語

北王国イスラエルの王ヤラベアム2世の治世(前787~前747)に活動した預言者。『旧約聖書』の「ヨナ書」によれば、アミッタイの子ヨナは、アッシリアの都ニネベ滅亡の預言を神ヤーウェに命じられたが、その使命を回避すべくヨッパの港から船出して海に逃れた。しかし暴風にあって大魚に飲み込まれ、陸に吐き出されたので、ついに神命に従い、ニネベで預言する。これによってニネベの町は滅びを免れた。

[定形日佐雄]

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世界大百科事典(旧版)内のヨナの言及

【イルカ(海豚)】より

…魚の中でもっとも強く速いとされたイルカは,また魂を冥界に運ぶ使者と考えられた。初期キリスト教時代にもこの考え方が引き継がれ,イルカは預言者ヨナを飲み込み,無事陸地に送り届けた大きな魚とされて,救済と復活の象徴となった。また,としてキリスト自身を象徴し,しばしば三つ又の矛やいかり(ともに十字架の象徴)と結びつけてカタコンベの壁画などに表現された。…

【クジラ(鯨)】より

…【千葉 徳爾】
[シンボリズム]
 古くから海の怪物と呼ばれてきたクラーケン,リバイアサン,摩竭魚(まかつぎよ)などについて,その正体を鯨とする説がある。またキリスト教伝説でも,旧約聖書の《ヨナ書》に出てくるヨナをのみこんだ大魚は鯨とされるが,多くの場合サメやワニあるいはイルカとの混同と思われる。ただしアリストテレスの《動物誌》や大プリニウスの《博物誌》に空気呼吸を行う事実など相当詳細な記述がなされており,古代の地中海世界でも鯨が知られていたことは確実である。…

【復活】より

…石棺の浮彫には,クリスモンと月桂冠を飾った十字架の両側に,2人の眠る兵士(イエス・キリストの墓を見守るためにつかわされた兵士)を配し,〈復活〉の図像であることを示唆する表現が見いだされる。また新約聖書の〈ラザロの復活〉,旧約聖書のダニエルヨナの物語などが〈復活〉の予型として用いられることもある。墓を訪れる2人または3人の聖女たちによってこの主題を間接的に表す方法は,西欧中世において早くから用いられた。…

【舟∥船】より

…スイスの心理学者のC.G.ユングは,これを〈夜の航海〉の主題とよんで,海に象徴される無意識への退行と意識の再生による心理の変容過程を示すものと考えた。大魚にのまれて三日三晩海を航海した旧約聖書のヨナの話も同様な意味をもつものであろう。エジプトやアッシリアには,死者を乗せて航海する船の描画があるが,これも死と再生または永遠の生命を象徴するものと考えられる。…

【ヨナ書】より

…旧約聖書〈12小預言書〉の一つ。預言者の託宣を集めたものではなくて,ヨナという一人物の物語。内容は以下のとおり。…

※「ヨナ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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