ライヒ(Wilhelm Reich)(読み)らいひ(英語表記)Wilhelm Reich

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ライヒ(Wilhelm Reich)
らいひ
Wilhelm Reich
(1897―1957)

精神分析学者。オーストリア生まれのユダヤ人。ウィーン大学医学部時代にフロイト講義を受け、精神分析の研究を目ざす。1923年オーストリア社会党に入党し、1928年には共産党に入党。マルクス主義と精神分析の結合を図る。1933年に『性格分析』『ファシズムの大衆心理』を出版。後者の著作は、労働者層や中産階級がなぜファシズム運動に参加したかという問題を、経済決定論をとるマルクス主義では説明できないと述べて、性・エネルギー経済論の側面から分析し、同年共産党から除名される。1934年オスロに亡命し、1939年にはアメリカに亡命。1941年敵性外国人の疑いで逮捕されるが翌1942年釈放。このころ、オーゴン(特殊な生物エネルギー)生命物理学とそれによる療法を唱え、1940年にオーゴン・ボックスorgone boxをつくるが、1954年アメリカ当局はその販売を禁止し、1955年には裁判沙汰(ざた)となる。1957年3月、法廷侮辱罪でコネティカット州刑務所に一時的に投獄され、同年11月ペンシルベニアの連邦刑務所で心臓発作のため死亡した。

田中 浩]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android