ラーナー(英語表記)Abba Ptachaya Lerner

改訂新版 世界大百科事典 「ラーナー」の意味・わかりやすい解説

ラーナー
Abba Ptachaya Lerner
生没年:1903-82

ロシア出身の経済学者で,1920年代初めにイギリスに渡る。ロンドン・スクール・オブ・エコノミックスに学び,L.ロビンズに師事した。のちに,ケインズのグループと学問的な接触をもつようになり,ケインズ経済学の生成にも関与する。その後アメリカに渡り,ニュー・スクール・オブ・ソーシャル・サイエンシズ(ニューヨーク),ローズベルト大学(シカゴ),カリフォルニア大学(バークリー)など数多くの大学で教える。

 ラーナーの経済学の考え方は,その主著《管理の経済学》(1944)に最も典型的に表れている。資本主義的市場経済制度の背後に存在する資源配分メカニズムの真の意味を引き出し,体制的制約条件を超えて,より普遍的な機能を明らかにした。社会主義経済の運営に関して,市場的な競争原理を適用しようとする,いわゆるランゲ=ラーナーの競争的社会主義の考え方も,その延長線上に理解されるものである。ラーナーは経済理論のほとんどあらゆる分野において,基本的な意味をもつ業績を上げ,第2次大戦後の純粋理論の発展に重要な貢献をなした。ラーナーはまた,モビールをはじめとして芸術的な創作活動にも優れていた。
執筆者:

ラーナー
Karl Rahner
生没年:1904-84

ドイツのカトリック神学者イエズス会士。1934-36年フライブルク大学でハイデッガーの下で哲学を研究,後オーストリア,インスブルック大学の神学教授になり,第2バチカン公会議まで教鞭を取る。第2バチカンでは,顧問神学者のなかで最も影響力があった神学者。ラーナーの神学の特徴はキリスト教教派間のみならず,広く諸宗教,諸思想との対話を通して現代の問題についてともに考える姿勢にある。公会議後,ミュンヘン大学にグアルディニの後継者として招かれ,後にミュンスター大学教授になり,数々の神学事典,シリーズの編集者,顧問をつとめ,キリスト教内外に影響力をもつ思想家として認められている。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラーナー」の意味・わかりやすい解説

ラーナー
Lerner, Abba Ptachya

[生]1903.10.28. ベッサラビア
[没]1982.10.27. フロリダ
ロシア生まれのアメリカの経済学者。ロンドン大学で学び,第2次世界大戦前は L.C.ロビンズ,J.R.ヒックスらとともにロンドン学派に属し,新厚生経済学や独占論などの領域で活躍,J.M.ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』出現後はケインジアンとしておもに財政論面で活躍。戦後はアメリカの諸大学を経て 1966~71年カリフォルニア大学教授,その後同大学名誉教授を務めた。 1934年の論文"The Concept of Monopoly and the Measurement of Monopoly Power"で提示した独占度の定式化や,"The Economic of Control" (1944) で展開させたマーシャル=ラーナーの条件で著名。このほか"Essays in Economic Analysis" (1953) ,"Economic of Employment" (1955) などの著書がある。

ラーナー
Rahner, Karl

[生]1904.3.5. フライブルク
[没]1984.3.31. インスブルック
現代ドイツ・カトリック神学を代表する神学者。 1922年イエズス会に入り,48年インスブルック大学教理神学教授。 63年ミュンヘン大学に転じて宗教哲学を講じ,67年からはミュンスター大学で教理神学を教えた。スコラ哲学の伝統に立脚しながら,現代の哲学の深い理解のうえに立って独創的かつ強靭な論理と新しい問題意識により現代に問いかける神学の展開に成功。倦むことを知らない著作家,思想家で,広範な領域にわたる著作,論文の数は 1000をこえる。主要論文を集めた『神学論文集』 Schriften zur Theologie (13巻,1957~78) のほか『信仰基礎論』 Grundkurs des Glaubens (76) がある。

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百科事典マイペディア 「ラーナー」の意味・わかりやすい解説

ラーナー

ドイツのカトリック神学者,イエズス会士。ハイデッガーについて哲学を学び,さらに神学を修めた後,1948年インスブルック大学教授,1964年ミュンヘン大学教授。第2バチカン公会議の神学顧問を務めた。主著《神学著作集》(1954年―1978年),《自由としての恩寵》(1968年)ほか。

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367日誕生日大事典 「ラーナー」の解説

ラーナー

生年月日:1903年10月28日
アメリカ(イギリス生まれ)の経済学者
1982年没

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世界大百科事典(旧版)内のラーナーの言及

【財政学】より

…フィスカル・ポリシーの理論では,(1)〈安あがりの予算が最良の予算である〉という古典派の緊縮予算主義は否定され,予算規模は発生したデフレ・ギャップの大きさに対応して決めらるべきだとする,(2)つねに均衡予算を堅持するのではなく,景気の循環に対応して赤字または黒字予算を組むという景気調整的財政活動が要請される,(3)古典派のようにつねに消費税優先を説くのではなく,不況期には消費よりも貯蓄課税を優先することが不況克服に役立つとする,(4)公債は必ずしも資本の浪費ではなく,不況期には公債発行による経費の増加は乗数効果を通じて資本蓄積に役立つとした。フィスカル・ポリシーの理論は,アメリカでA.H.ハンセンA.P.ラーナーにより体系化された。この理論は短期的な安定政策を主要課題としていたが,R.F.ハロッドがケインズ理論の長期動態化を図るとともに,新たに財政政策の長期的目標が問題とされた。…

【独占度】より

…市場での独占力の大きさを表すのに考案された尺度で,アメリカの経済学者A.P.ラーナーの独占度の尺度が有名である。完全競争のもとでは,利潤を追求する企業は自己の販売する製品の価格と限界費用を一致させる生産量を選択する。…

※「ラーナー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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