翻訳|Liverpool
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イギリス,イングランド北西部,マージーサイド州(旧,ランカシャー)にある港湾・工業都市で州都。人口44万1900(2003)。地名の語源は〈濁った水たまり〉の意。マージー川エスチュアリー(三角江)の湾口右岸に位置し,ロンドンに次ぐイギリス第2の貿易港であり,またキュナード汽船会社の所在地としても知られる。伝統的にアメリカ大陸やインド,アフリカとの交易が中心で,綿花・綿製品の取扱量は低下したものの,肉類・穀物・木材などの輸入,機械類・繊維製品などの輸出が盛んである。ランカシャー,ウェスト・ヨークシャー両工業地域を後背地とし,その門戸として重要であったが,第2次世界大戦後はマンチェスターの衰微にともなって工業化が進み,製粉,精糖,石油化学,電気機械などの工業が発達してマージーサイド工業地域を形成している。反面,かつて有名であった陶器,繊維工業は消滅し,綿花取引所の地位も低下した。
8世紀にノルウェー人の植民集落が存在したが,1207年になってジョン王が都市を建設,従来のチェスターに代わって対アイルランド交易の拠点になった。本格的な港湾の成長は王政復古(1660)以後で,西インド諸島,北アメリカ貿易に重点が移った。さらに18世紀になると,西アフリカ,北アメリカと結ぶ三角貿易の核になり,リバプールの商人によって奴隷貿易が盛んに行われた。1807年の奴隷貿易廃止後もランカシャー工業地域の発展,40年代の蒸気船の導入を背景に貿易港として繁栄を続け,ジャガイモ飢饉にともなう多数のアイルランド移民を受け入れた。第2次大戦中はドイツ軍の空襲で破壊され,戦後,都心部の再開発が進められた。市街はマージー川に向かって傾斜する斜面に半円形をなして広がり,1754年建設の市庁舎をはじめ,ウォーカー美術館,英国国教会とカトリックの両大聖堂,1903年に総合化したリバプール大学などがある。政治家W.グラッドストンの生地。熱狂的なサッカー人気も名高い。1960年代にはこの町で育ったビートルズの〈リバプール・サウンド〉が世界を席巻した。
執筆者:長谷川 孝治
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…北東イングランド工業地域では,重工業の中心が従来のニューカスルからミドルズブラやサンダーランドへと移行しつつある。またランカシャー工業地域でも,発展途上国との競合で綿工業が打撃を受けたため,紡績・織物工場の機械工場への転換が促進され,さらには工業中心そのものがマンチェスター周辺から,石油化学・自動車工業などが立地する臨海のリバプールへと変化している。一方,ペナイン山脈東麓側のヨークシャー工業地域では,綿工業ほどの衰退はみられないが,羊毛工業の集中・専門化は進み,ブラッドフォードなどの西ヨークシャー諸都市で高級品の生産が行われている。…
…同様に重要な役割を担ったのは,〈三角貿易〉に代表されるように,プランテーションの繁栄にともなって興隆をきわめた奴隷貿易である。こうしてアフリカ人奴隷を犠牲にすることによって得られた富がリバプールに繁栄をもたらし,ひいてはイギリス産業資本主義の基礎を築きあげた。しかしこの飛躍的発展のいわばトランポリンとして利用されたアフリカでは,一説によれば6000万人ともいわれるほどの人口が減少し,それによってこの大陸は低開発の過程を突き進むことになった。…
…以後,アメリカの独立,フランス革命などの影響で急進主義が高揚すると,支配層はいっそう保守化し,ピットなどの指導下にトーリー内閣がつづいた。 1820年代から産業革命による工業の発展と自由主義思想の広がりの影響をうけ,トーリー党内部にも自由主義派が生まれ,リバプール内閣(1812‐27)のもとで自由主義政策をとるにいたり,ホイッグ党との差はあいまいになった。30年グレー内閣の成立によりホイッグ党へ政権を譲り渡すが,このころからトーリー党という名称に代わって保守党という名称が用いられるようになる。…
…したがって,16世紀の奴隷貿易はポルトガル人によって展開されたが,17世紀になるとオランダ西インド会社が進出し,17世紀後半からジャマイカやフランス領グアドループ,マルティニク両島が砂糖生産の中心になるにつれて,イギリス,フランス両国商人が奴隷貿易にのり出した。イギリスは,当初,1672年に設立された王立アフリカ会社Royal African Companyなど,特権会社による独占事業として奴隷貿易を展開しようとしたが失敗し,17世紀にはロンドンとブリストル,18世紀にはリバプールの個人商人が奴隷貿易を握り,年間平均10%以上の高い利潤をあげたといわれる。ただし,利潤率については,数十%から100%以上という推計もある。…
※「リバプール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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