リラ(英語表記)lira

翻訳|lira

精選版 日本国語大辞典 「リラ」の意味・読み・例文・類語

リラ

〘名〙 (lyra lira)
① 古代メソポタミアエジプトギリシアなどで用いられた撥弦楽器の一つ。共鳴胴の上に立てられた二本の腕木と一本の横木との間に、通常七本の五音音階に調弦された弦を張った。竪琴(たてごと)
即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉考古学士の家「我琴を以てヨヰスの神の亀甲琴(リラ)に比したり」
② 中世からルネサンス期にかけて、フィードル(中世のバイオリン)から発達した弓奏の擦弦楽器

リラ

〘名〙 (lira)
① イタリア、サンマリノバチカン市国の旧通貨単位。現在はユーロ。
米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉四「貿易は、一千八百七十年、輸入の物価、八億八千八百五十万『リーラー』」
② トルコの通貨単位。

リラ

〘名〙 (lilas) 植物「ライラック」のフランス語名。
▼リラの花《季・春》
※珊瑚集(1913)〈永井荷風訳〉仏蘭西の小都会「Lilas(リラ)の花は家家の狭き庭に咲く」

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デジタル大辞泉 「リラ」の意味・読み・例文・類語

リラ(〈イタリア〉lira)

イタリアの旧通貨単位。1リラは100センテシミに相当した。2002年1月(銀行間取引は1999年1月)、EU欧州連合)の単一通貨ユーロ導入以降は廃止。
トルコの通貨単位。1リラは100クルシュ。

リラ(〈フランス〉lilas)

ライラックの別名。 花=春》「蝶来ると見ればいつしか―咲けり/秋桜子

リラ(〈ギリシャ〉lyra)

古代メソポタミア・エジプト・ギリシャなどで用いられた竪琴たてごと。共鳴胴に2本の支柱を立て、これに横木を渡して数本の弦を張ったもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「リラ」の意味・わかりやすい解説

リラ
lira

イタリアをはじめバチカン帝国,サンマリノ共和国トルコ共和国における現行の通貨単位。1イタリア・リラは100チェンテジモcentesimoである。

 イタリアにおいては1861年,サルデーニャ王国イタリア統一を達成したとき以来,リラは通貨単位とされてきた。それより先,サルデーニャ王国では16世紀以来リラ表示の通貨を使用,1816年には1リラ=100チェンテジモという現在と同一の通貨呼称の整備が行われた。その後,イタリア統一とともに全国的な制度となり,現在に至っている。リラの語源は銀の重量単位であるリブラlibraで,ポンドpoundと同量である。

 イタリア統一時の1リラは4.5gの純銀と同価値であったが,市場における減価により平価維持を困難にすることが多かった。ドルとの交換比率は1927年に1リラ=0.0526ドルとされたが,第2次大戦における敗北でさらに減価,49年には1リラ=0.0016ドルとされた。しかし,71年12月の国際通貨調整においては他のヨーロッパ主要通貨とともに切上げとなり,1リラ=0.00172ドルとなった。その後,79年3月のヨーロッパ通貨制度(EMS)の発足に際しては,西ドイツ・マルク,フランス・フラン,オランダ・ギルダー,ベルギー・フラン,デンマーク・クローネ,アイルランド・ポンドとともにイタリア・リラも当初より参加した。

 2002年1月からのヨーロッパ連合(EU)の単一通貨〈ユーロ〉の導入に伴いイタリア,バチカン,サンマリノではリラは姿を消すことになった。
執筆者:

リラ
lyra

元来は古代ギリシアの弦楽器の一種であるが,その名称は種々の楽器に用いられている。(1)古代のリラ ギリシア神話でヘルメスがアポロンにささげた楽器として伝えられているもので,亀の甲羅に牛の革をかぶせた胴と,2本の腕木の間にわたされた横木との間に弦が張られており,古代ギリシアの壺にアウロスとともに多く描かれている。同種の楽器は現在もなおアフリカ北東部で使用されており,発生地としては西アジア,エジプトおよびギリシアがあげられている。(2)中世ヨーロッパの弓奏弦楽器 セイヨウナシを縦に二分した形の胴をもち,上板には半円形の響孔が向い合せについているのが特徴である。バルカン半島には現在も同形同名の弓奏弦楽器がある。(3)15~18世紀ヨーロッパの弓奏弦楽器 バイオリンに近い胴に多数の弦が張られており,幅広い棹と板状の糸倉に垂直に挿し込まれた糸巻が特徴である。音域によってリラ・ダ・ブラッチョlira da braccio(腕で支えて奏する),リラ・ダ・ガンバlira da gamba(脚の間にはさむ)などがある。(4)携帯用鉄琴の名称 ベル・リラともいう。音板が吊り下げられる枠の形がリラに似ているところからつけられた。(5)旧ソ連,スウェーデンにおけるハーディ・ガーディの名称。

 このほかにもリラは音楽を象徴する記号として図案化され,広く親しまれている。
執筆者:

リラ
Paul Rilla
生没年:1896-1954

ドイツのマルクス主義文芸批評家。1933年までブレスラウの新聞文芸部長を務めるが,ナチスにより執筆停止処分をうける。45年以降,《文学とリュート》(1948),《文学史におけるゲーテ》(1949)などの鋭い論評で文学史の歪曲と戦う。編纂に当たったレッシング全集(1954-58)の第10巻《レッシングとその時代》ではレッシングにおける〈理論と実践の統一〉を強調した。ゼーガース,ブレヒトなど現代文学に関する評論も次々に発表。ドイツ民主共和国国民賞を批評家として初めて受賞した。
執筆者:

リラ(植物)
lilas

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百科事典マイペディア 「リラ」の意味・わかりやすい解説

リラ

(1)古代ギリシアの撥弦楽器。近年では弦鳴楽器の1タイプを指す楽器分類用語となっている。共鳴胴から突き出た2本の腕木の先に横木を渡し,共鳴胴上の弦を横木まで張り渡している。アフリカとアジアの一部にも存在。(2)現代ギリシアやその周辺のリュート属擦弦楽器。木製の洋梨形共鳴胴と短い棹をもつ。3弦の弓奏楽器。トルコの古典音楽のケメンチェと同系で,西洋中世のルベックrebecとも関係が深い。(3)西洋ルネサンスのリュート属擦弦楽器。バイオリンに近い共鳴胴に多数の弦を張り,幅広の棹と板状の糸倉に垂直に挿し込んだ糸巻が特徴。liraとも綴る。(4)軍楽隊などに用いる携帯用の鉄琴。形が古代ギリシアのリラに似ている。ベル・リラbell-lyraとも。(5)スウェーデンやロシアにおけるハーディ・ガーディの名称。liraとも綴る。
→関連項目アウロス楽器キタラ弦楽器抒情詩竪琴

リラ

ライラック

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リラ」の意味・わかりやすい解説

リラ
Lira

イタリアの通貨単位。1リラ (Lと略称) は 100チェンテシミ centesimi。リラそのものの起源は 15世紀であるが,イタリアリラの起源は 1816年といわれる。この間リラはトルコリラ,バチカンリラなどに分化したが,通常リラと呼ぶときはイタリアリラをさす。発券銀行は 1926年6月以降イタリア銀行 Banca d'Italiaである。 60年3月設定の国際通貨基金 IMF平価は1リラあたり純金 0.00142187g (1米ドル=625リラ) であったが,イタリア経済のもつ弱体性により,リラはほぼ恒常的に弱化傾向にあり,スミソニアン協定以後6年間の対ドル減価率は約 33%で主要国通貨中最大であった。 79年のヨーロッパ通貨制度 EMS発足後から 90年までは6%のワイダーバンドで,91年以降は 2.25%のナローバンドで参加している。 92年9月には,通貨危機のため為替相場メカニズム ERMから離脱したが,96年復帰。 97年にはヨーロッパ連合 EUの通貨統合参加前の最後の新札発行として,ラファエロの絵画をデザインした 50万リラ札が発行された。 99年1月のユーロ導入に際しては1ユーロ=1936.27リラの交換レートとなった。

リラ
lyra

楽器の一種。 (1) キタラに似た古代ギリシアの撥弦楽器。亀甲を利用した共鳴箱から2本の腕木を出し,その上端を横桟で結んで,共鳴箱と横桟の間に弦を張ったもの。前8世紀の壺絵には3~5弦のものがみえるが,前7世紀以降は7弦以上となった。アラビア半島,アフリカの一部,フィンランドなどでは現在も同種の楽器が使われている。 (2) ホルンボステル=ザックス楽器分類法で弦鳴楽器のリラ属。古代ギリシア,メソポタミア,エジプトのキタラ,リラ,クルス,ロッタなど。 (3) そのほか中世ヨーロッパではビオル属,バイオリン属の前身楽器をリラ・ダ・ブラッチョ,リラ・ダ・ガンバ,またハーディ・ガーディをリラ・オルガニザータなどと呼んだ。

リラ

ライラック」のページをご覧ください。

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