リン(燐)酸アンモニウム(読み)りんさんアンモニウム

改訂新版 世界大百科事典 の解説

リン(燐)酸アンモニウム (りんさんアンモニウム)
ammonium phosphate

化学式(NH43PO4。第三リン酸アンモニウムともいう。3水和物が普通に知られている。3水和物(NH43PO4・3H2Oは無色柱状晶。空気中でアンモニアを失いやすい。水に可溶水溶液を熱するとアンモニアを失って(NH4)H2PO4を生成する。リン酸二水素アンモニウムと塩化アンモニウムの水溶液にアンモニア水を加えて密閉し,冷却すると3水和物が得られる。リン安と呼ばれ,肥料として広く用いられる。水素塩(NH42HPO4,(NH4)H2PO4を単にリン酸アンモニウムということもある。

化学式(NH42HPO4。通常,単にリン酸アンモニウムと呼び,また第二リン酸アンモニウムともいう。無色単斜晶系結晶。比重1.619(20℃)。水100gに対する溶解度131g(15℃)。水溶液は微アルカリ性。エチルアルコールアセトンに不溶。熱すると155℃でアンモニアを失い,216℃ではさらに分解して(NH4)PO3となる。リン酸とアンモニアを正確に1:2のモル比で反応させ,pHを8.0にして冷却すると結晶が析出する。布,紙などの防炎剤,鑞(ろう)付用フラックス,うわぐすり,食品添加剤,肥料などとして用いられる。

化学式(NH4)H2PO4。第一リン酸アンモニウムともいう。ADPと略称する。無色正方晶系結晶。KH2PO4と同形であるが,圧電率はさらに大きく,誘電率も大きい。比重1.803(19℃)。水100gに対する溶解度22.7g(0℃),173.2g(100℃)。190℃で融解し,190.5℃でアンモニアと水を放ってNH4PO3となる。低温(-125℃)で斜方晶系に変わる。リン酸にアンモニア水を加え,pH3.8~4.5に調節して結晶させる。圧電率がロッシェル塩に次いで大きく,圧電素子として巨大単結晶が広く用いられる。肥料のほか,培養基,ベーキングパウダー,染料分散剤,食品添加剤,消火器などに用いられる。
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百科事典マイペディア の解説

リン(燐)酸アンモニウム【りんさんアンモニウム】

(1)リン酸三アンモニウム(NH43PO4・3H2O 第三リン酸アンモニウムとも。無色の結晶。水に可溶。(2)リン酸水素二アンモニウム(NH42HPO4第二リン酸アンモニウム,また俗にリン安とも。比重1.619。無色の結晶。155℃でアンモニア1分子を失ってリン酸二水素アンモニウムになる。水に可溶。ふつうリン酸アンモニウムというとこれをさす。肥料,鑞付(ろうづけ)用融剤,培地の栄養塩などに用いられる。(3)リン酸二水素アンモニウム(NH4)H2PO4第一リン酸アンモニウムとも。比重1.803,融点190℃。無色の結晶。水に可溶。単結晶は圧電率,誘電率が大きいので,大きな単結晶をつくり圧電振動子として用いる。肥料のほか,培地,ベーキングパウダー,染料分散剤,食品添加剤,消火器などに多用される。
→関連項目リン(燐)酸肥料

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