リン(燐)酸カリウム(読み)りんさんカリウム(英語表記)potassium phosphate

改訂新版 世界大百科事典 「リン(燐)酸カリウム」の意味・わかりやすい解説

リン(燐)酸カリウム (りんさんカリウム)
potassium phosphate

化学式K3PO4。リン酸三カリウムともいう。無水和物,7水和物,9水和物がある。無水和物は無色斜方晶系結晶。融点1340℃。比重2.564(17℃)。吸湿性が強い。水100gに対する溶解度193.1g(25℃)。水溶液は強アルカリ性。エチルアルコールに不溶。リン酸と計算量水酸化カリウムを反応させ,蒸発乾固し,さらに300~500℃で熱すると無水和物が得られる。水溶液から結晶させると-13~45.4℃で7水和物,-13℃以下で9水和物が得られる。鹹水かんすい原料,醸造薬品,膨張剤調味料,肉類結着剤,ペニシリン・ストレプトマイシン培養基,水の軟化剤などに用いられる。

 水素塩K2HPO4,KH2PO4を単にリン酸カリウムということもある。

化学式K2HPO4。リン酸カリウムあるいは第二リン酸カリウムともいう。無水和物,3水和物,6水和物が知られている。無水和物は無色板状ないし針状晶。潮解性で,水に易溶。熱すると282℃以上で分解してピロリン酸塩K4P2O7となる。リン酸を計算量の水酸化カリウム水溶液と反応させ,濃縮してから,200℃で加熱脱水して得られる。水溶液から結晶させると14.7℃以下で6水和物,48.3℃以下で3水和物が得られる。市販品は無水和物が普通。鹹水原料,醸造用剤,膨張剤,調味料,pH調整剤,ペニシリン・ストレプトマイシン培養基などに用いられる。

化学式KH2PO4。第一リン酸カリウムともいう。無色正方晶系結晶。強誘電体でKDPと略称し,アンモニウム塩ADPとともに圧電素子,電気光学素子として用いられる。またKDPはレーザーの光高調波発生に用いられる。K⁺とH2PO4⁻とからなり,四面体のPO4水素結合で三次元的に連なっている。O-H…O原子間距離2.492Å。O-H原子間距離1.07Å。融点96℃。比重2.238。屈折率1.5095。200℃で脱水が始まり,258℃で強い吸熱反応によってメタリン酸塩KPO3となる。水100gに対する溶解度14.3g(0℃),22.7g(20℃)。1%水溶液のpH4.6。計算量のリン酸と水酸化カリウムを反応させ,濃縮して結晶を析出させる。工業的には,リン酸と塩化カリウムを強熱してKPO3とし,これを水に溶かして結晶を得ている。酵母培養剤,医薬品,栄養剤,pH調整剤,肥料などに用いられる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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