リン酸ナトリウム(読み)リンサンナトリウム

化学辞典 第2版 「リン酸ナトリウム」の解説

リン酸ナトリウム
リンサンナトリウム
sodium phosphate

Na3PO4(163.94).略称TSP.リン酸三ナトリウム(trisodium phosphate),第三リン酸ナトリウム,第三リン酸ソーダともいう.このほか,リン酸水素二ナトリウム(disodium hydrogenphosphate)(略称DSP)Na2HPO4,およびリン酸二水素ナトリウム(sodium dihydrogenphosphate)(略称MSP)NaH2PO4がある.リン酸水素二ナトリウムNa2HPO4を単にリン酸ナトリウムとよぶこともある.三ナトリウム塩は,リン酸に過剰水酸化ナトリウムを加えるか,リン酸水素二ナトリウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液を1:1モル比で反応させるなどの方法により得られる.常温では十二水和物が得られるが,このほか,無水和物,0.5,一,六,八,十水和物が知られている.十二水和物は100 ℃ で一水和物に,200 ℃ で無水和物になる.無水和物は,白色ないし無色の六方晶系結晶.密度2.735 g cm-3融点1340 ℃.溶解度14.5 g/100 g 水(25 ℃).水溶液は加水分解により強アルカリ性を呈する.エタノールに不溶.十二水和物は,白色の六方晶系結晶.密度1.62 g cm-3.~75 ℃ で分解する.100 ℃ に加熱すると一水和物になる.アルカリ性洗浄剤,皮なめし剤,染色助剤,染料分散剤,果実剥皮剤,砂糖精製,清缶剤,硬水処理剤などとして用いられる.[CAS 7601-54-9:Na3PO4][CAS 10101-89-0:Na3PO4・12H2O][別用語参照]リン酸水素ナトリウム

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リン酸ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

リン酸ナトリウム
りんさんなとりうむ
sodium phosphate

リン酸の三ナトリウム塩。リン酸三ナトリウムとも、第三リン酸ナトリウムともいう。リン酸水素二ナトリウムの水溶液に当量の水酸化ナトリウムを加え、蒸発乾固したのち電気炉で加熱脱水すると、無水和物が得られる。リン酸に過剰の水酸化ナトリウムを加えて蒸発濃縮すると、室温で12水和物が得られる。晶出温度によって十、六、0.5水和物なども得られる。無水和物は無色の粉末で、水100グラムに0℃で4.5グラム、100℃で77グラム溶ける。水溶液は強アルカリ性を呈する。12水和物は無色六方晶系の結晶。100℃で脱水して一水和物となる。アルカリ性洗浄剤、革なめし剤、清缶剤、硬水軟化剤などの用途がある。なお、水素塩を単にリン酸ナトリウムとよぶことがある。

[鳥居泰男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リン酸ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

リン酸ナトリウム
リンさんナトリウム
sodium phosphate

リン酸三ナトリウム,Na3PO4 。第三リン酸ナトリウム,リン酸ソーダともいう。リン酸に過剰の水酸化ナトリウムを加えた水溶液を濃縮するか,またはリン酸水素二ナトリウムに水酸化ナトリウムを当量加えると生成する。 12水塩は無色六方晶系結晶,融点 73.4℃。 100℃で1水塩になる。熱水から再結晶すると温度により,10水塩,6水塩などが得られる (常温では 12水塩) 。 212℃以上では無水塩となる。水によく溶け,強アルカリ性を呈する。リン酸水素二ナトリウムと水酸化ナトリウムに解離する。洗剤,硬水軟化剤などに用いられる。なお,医薬分野,工業関係では,リン酸水素二ナトリウムを単にリン酸ナトリウムと称することがある。

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栄養・生化学辞典 「リン酸ナトリウム」の解説

リン酸ナトリウム

 NanH3−nPO4で表される3種類のリン酸のナトリウム塩.醸造,食品製造に用いる食品添加物調味料の強化剤にも使われる.

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