リーブ(読み)りーぶ(英語表記)Richard Moore Rive

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リーブ」の意味・わかりやすい解説

リーブ
りーぶ
Richard Moore Rive
(1931―1989)

南アフリカ共和国の小説家、評論家。カラード混血)。ケープ・タウンのスラム街「第六区」で生まれ育った。ケープ・タウン大学卒業後カラードの高校教師を務め、陸上競技ハードルの選手としても活躍した。アメリカに渡ってコロンビア大学で修士号を取得した。のちオックスフォード大学に留学し、1974年に「オリーブ・シュライナー論」で博士号を取得するなど、南アフリカの女性作家シュライナーOlive Schreiner(1855―1920、筆名ラルフ・アイアンRalph Iron)の研究家としても知られる。帰国後、ケープ・タウン大学で教え、のち母校のヒュワット教員養成カレッジ教授になった。また、ハーバード大学ケンブリッジ大学などから客員教授として迎えられ、アフリカ文学の講義を担当するかたわら、『コントラスト』などの南アフリカ文芸雑誌の編集顧問を務めた。1984年には、統一民主戦線(UDF)に所属して、新憲法による人種別三議院制反対の選挙ボイコット運動に参加した。アパルトヘイト法が廃棄される前の、1989年深夜、暴漢に襲われ死去自作を含む4人の南ア作家の短編集『四重奏』(1963)、アンソロジー『現代アフリカ散文集』(1964)のほか、白人女性との愛を交えながら、1960年3月の非常事態宣言という決定的瞬間を迎えるまでの3日間の、政治に目覚めていく青年の心の成長を描いた長編代表作『戒厳令下の愛』(1964)と、その続編で、1985年の非常事態宣言を背景とした『続・戒厳令』(1990)、自ら生まれ育ったスラム街を舞台にした諷刺(ふうし)小説『バッキンガム宮殿第六区』(1986)、短篇集『アフリカの歌』(1963)、『前進後退』(1983)、自伝的評論『黒人を描く』(1981)などがある。1985年(昭和60)明治大学客員教授として来日。

土屋 哲]

『土屋哲訳『戒厳令下の愛』(1975・鷹書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リーブ」の意味・わかりやすい解説

リーブ
Rive, Richard

[生]1931.3.1. 南アフリカ連邦,ケープタウン
[没]1989.6.4./1989.6.5. 南アフリカ共和国,ケープタウン
南アフリカ共和国の作家。フルネーム Richard Moore River。英語で執筆。ケープタウンの第6地区にカラードとして生まれた。ケープタウン大学卒業後,高等学校の教師を務め,のちイギリスのオックスフォード大学に留学,南アフリカ初期の白人女性作家オリーブ・シュライナーについての論文で博士号を取得した。帰国後ケープタウン大学などで教え,ハーバード大学,ケンブリッジ大学からも客員教授として招かれた。『ドラム』誌などに短編を多数発表,『コントラスト』Contrastなど文芸雑誌の編集顧問も務めた。みずからは人種区分を否定し,いかなる運動団体にも身を寄せず孤高を保ったが,人種問題を描く作品が多く,また亡命しなかった数少ない作家の一人でもあった。作品は十数ヵ国語に翻訳され,アレックス・ラ・グーマと並んで最高の物語作家と評価された。短編集『アフリカの歌』African Songs(1963),『前へ,後ろへ』Advance, Retreat(1983)のほか,白人女性との恋愛を描く長編『戒厳令下の愛』Emergency(1964),自伝的作品『第6地区バッキンガム・パレス』Buckingham Palace District Six(1986),評論集『黒人を書く』Writing Black(1981)などがある。ケープタウンの自宅で殺害され,死後『戒厳令下の愛』の続編『非常事態継続』Emergency Continued(1990)が出版された。(→アパルトヘイトアフリカ文学南アフリカ文学

リーブ
Reeve, Tapping

[生]1744.10. ニューヨーク,ブルックリン
[没]1823.12.13. コネティカット,リッチフィールド
アメリカの法律家,教育家。 1772年コネティカットのリッチフィールドで法律家となる。 84年アメリカ最初の法律学校としてリッチフィールド法律学校を開設。 1833年廃止されるまでに 1000人の学生を教育し数多くのすぐれた法律家を育てた。 1798~1814年コネティカット州最高裁判所判事。 14~16年同最高裁判所長官。

リーブ
Reeve, Clara

[生]1729
[没]1807
イギリスの女流作家。ゴシック小説『美徳の闘士』 The Champion of Virtue (1777) などのほか,『物語の進歩』 The Progress of Romance (85) と題する小説論がある。

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世界大百科事典(旧版)内のリーブの言及

【マナー】より

…有力な領主はいくつかのマナーを所有した。それぞれのマナーは領主の指名するベーリフbailiff(自由人差配)と農民選出のリーブreeve(農奴管理人)によって管理・運営され,さらにこれらのマナー全体を領主の代理であるセニシャルseneschal(またはスチュワードsteward)が年に2,3回巡回して経営の監督にあたった。しばしば領主は優等地を直営地に指定し,また地域によっては直営地の施肥のために囲いを設けて農民の家畜を強制的に放牧させた。…

※「リーブ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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