日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ルブラン(Maurice Leblanc)
るぶらん
Maurice Leblanc
(1864―1941)
フランスの推理作家。有名な怪盗紳士アルセーヌ・ルパンArsène Lupinの創作者である。警察関係の新聞記者のかたわら、1892年夏から小説を書き始めたが、かならずしも成功しなかった。1906年、新聞社の依頼でルパンを主人公とする短編を発表し、それを集めた短編集『怪盗紳士ルパン』(1907)によって爆発的人気を獲得した。
ルパンは探偵と盗賊を兼ね、法と権力を敵に回し、変装の名人で、あらゆるスポーツに通じた神出鬼没のスーパーマンである。『水晶の栓』(1910)、『奇巌城(きがんじょう)』(1912)、『虎(とら)の牙(きば)』(1921)、『813(はちいちさん)』(1923)など多数の長編のなかには、イギリスの名探偵ホームズをもじったアロック・ショルムHerlock Shormesとルパンが対決する『ルパン対ホームズ』(1907)といったものもある。現代の推理小説の立場からみれば、ルパンの推理や活動には古風な通俗小説の飛躍や偶然も多いが、短編集『八点鐘』(1923)などは現代推理小説の味をもつものとして定評がある。ルブランは作家としての成功によって、レジオン・ドヌール勲章を受けた。
[梶 龍雄]
『『世界推理名作全集 二』(1969・中央公論社)』▽『石川湧訳『怪盗紳士リュパン』『リュパン対ホームズ』『水晶の栓』『奇巌城』(創元推理文庫)』▽『井上勇訳『リュパンの告白』『虎の牙』(創元推理文庫)』