レオトー(英語表記)Paul Léautaud

改訂新版 世界大百科事典 「レオトー」の意味・わかりやすい解説

レオトー
Paul Léautaud
生没年:1872-1956

フランスの作家。女優の母に捨てられ,コメディ・フランセーズでプロンプターをしていた不品行な父親に育てられた。出版社メルキュール・ド・フランスで長年(1908-40)働き,その間,名詩選《今日の詩人たち》3巻(1900-29),小説《恋人》(1903)や短編小説集を発表する一方,モーリス・ボアサールの筆名で,《メルキュール・ド・フランス》誌,《NRF》誌,《ヌーベル・リテレール》紙などに辛辣(しんらつ)な劇評を書いた。1951年にラジオで批評家R.マレと自由闊達な対談をし,広く大衆に知られるようになった。長年出版社に勤めていた彼は,パリ文壇のすべてを知りぬいている〈時代の証人〉でもある。晩年になってようやく発表され,その大部分死後に刊行された,あらゆる権威を認めない彼の《文学日記Journal littéraire》19巻(1954-66)は,あらゆる社交辞令を排して,すべてを同じレベルで論じた,1893年から1956年に至るフランス文壇の生き生きとした記録である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「レオトー」の意味・わかりやすい解説

レオトー
れおとー
Paul Léautaud
(1872―1956)

フランスの批評家、日記作者。パリ生まれ。自伝的中編小説『小さな友』(1902)で文壇にデビュー。ついで、やはり自己の体験に基づく『記念のために』(1905)、『さまざまな愛』(1906)を発表するが、以後小説の筆を折り、『メルキュール・ド・フランス』誌の劇評執筆をきっかけに同誌編集員となり(1908)、30年余にわたって劇評以外にも種々のコラムを担当、狷介(けんかい)、辛辣(しんらつ)な批評家として知られた。しかし、彼の名を不朽にしたのは、最晩年から死後にかけて刊行された『文学日記』Journal littéraire 19巻(1954~66)で、これは19世紀末から20世紀前半に及ぶフランス文壇裏面史に関する詳細な見聞の記録である。

[長澤孝廣]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レオトー」の意味・わかりやすい解説

レオトー
Léautaud, Paul

[生]1872.1.18. パリ
[没]1956.2.22. ロバンソン
フランスの劇評家随筆家。公立小学校を出てさまざまな職を転々としたのち,『メルキュール・ド・フランス』の編集に従事 (1908~40) 。長年雑誌に連載した劇評,劇壇消息を集めた『モーリス・ボアサールの劇場』 Le Théâtre de Maurice Boissard (2巻,26,43) や死後出版の膨大な『文学日記』 Journal littéraireがあり,皮肉と諧謔を交えた自由闊達な批評で知られる。

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