レタス(読み)れたす(英語表記)lettuce

翻訳|lettuce

精選版 日本国語大辞典 「レタス」の意味・読み・例文・類語

レタス

〘名〙 (lettuce)⸨レッタス⸩ キク科一年草または二年草。葉はキャベツ状に結球するチシャの園芸品種群で、日本には江戸末期に渡来した。ヨーロッパ原産。たまぢしゃ。《季・春》
※食道楽‐夏(1903)〈村井弦斎〉一七六「レッタスだのセロリーだのパセリーだのを生の儘使ふ時には」

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デジタル大辞泉 「レタス」の意味・読み・例文・類語

レタス(lettuce)

キク科のチシャの別名。野菜としてヨーロッパで古くから栽培、日本には江戸時代末期に渡来した。日本では、ふつう葉が重なり合って結球するタマヂシャをさしていう。サラダなどに用いる。 春》
[類語]萵苣ちしゃ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「レタス」の意味・わかりやすい解説

レタス
れたす
lettuce

キク科(APG分類:キク科)の一、二年草。和名をチシャ(萵苣)という。ヨーロッパで古くから葉菜として利用され、いろいろな系統、品種群に分化している。葉は楕円(だえん)形ないし長形で、生育中期までは茎はほとんど伸びず、葉は重なり合い結球するものと、結球しないものとがある。茎葉は傷つけると白い乳液が出る。夏にとう立ちして高さ1メートル余になり、上部は枝分れし、黄色の径2~3センチメートルのキク状の頭花をつける。早朝開花し昼前には閉じる。種子は痩果(そうか)で長楕円形で扁平(へんぺい)、長さ3~4.5ミリメートル、白のほかに黄、黒色のものがある。種子は好光性で暗黒下では発芽しにくい特性がある。

 よく栽培される系統には、結球・半結球性のタマヂシャ(玉萵苣)Lactuca sativa L. var. capitata L.と、非結球性のカキヂシャ(掻萵苣、別名アスパラガスレタスasparagus lettuce)var. asparagina Baileyがある。

 タマヂシャはヘッドレタスhead lettuceまたはキャベツレタスcabbage lettuceともよばれる。葉は10枚以上になると結球し、球は径10~20センチメートルになる。結球性レタスの起源年代は明らかでないが、ヨーロッパで16世紀から普及した。日本へは明治時代に導入された。葉は鮮緑色のほか褐紫色のものなど品種が多い。このなかで葉が密に結球しないで、緩く半結球性となり、葉質がきわめて柔らかく、口中で溶けるようなという意味でバターヘッドとよばれる。日本ではこれを一般にサラダナとよんでいる。

 カキヂシャは葉は長形で多数重なり、葉が増えるにつれてすこしずつ茎が伸びる。茎は太く径3センチメートルで柔らかい。葉を順次掻(か)き取って食べ、また伸びて30~50センチメートルになった茎をアスパラガスのように食べるのでアスパラガスレタスの名がある。他にクキチシャ(茎萵苣)ともいう。葉を掻いて食べるレタスはすでに紀元前6世紀にペルシアで利用され、以降、ギリシアローマに普及しヨーロッパに広まった。5世紀までには中国に伝わり、日本へは10世紀までには入っていた。これが在来のチシャである。

 このほかに、よく利用されるものに、コスレタスcos lettusと、カールレタスcurled lettuce(和名チリメンヂシャ)var. crispa L.がある。コスレタスは葉は長楕円形、長さ20~30センチメートル、ほぼ直立性で、ハクサイに似た半結球状になり、内部の葉は軟白されている。温暖な気候のイタリアで中世から栽培され、イギリス、フランスに多いが、日本ではほとんど栽培されていない。カールレタスは葉数は少なく、葉は縮れている。結球性と半結球性のもの、色も緑のほかに紅紫色などがある。

 日本での生産は、夏秋レタスが9260ヘクタール、年産27万8500トン(2018)、主産地は長野(68%)、群馬(20%)。冬レタスが8030ヘクタール、年産18万6300トン(2018)、主産地は茨城(17%)、長崎(13%)、静岡(12%)ついで兵庫、香川など。春レタスが4390ヘクタール、年産12万0700トン(2018)、主産地は茨城(34%)、長野(17%)、長崎(7%)ついで兵庫などとなっており、都市近郊地、夏は高冷地、冬は温暖地などで周年生産供給されている。播種(はしゅ)は3~10月、普通は苗床に播種し、子苗を本畑に定植する。秋播(ま)きがもっとも結球性がよい。冬季はビニルハウス、トンネル内で栽培する。

[星川清親 2022年5月20日]

利用

レタスは生食野菜の代表とされ、ビタミンAを多く含む。サラダには不可欠で、とくにサラダナはもっとも適した品質を備えている。カールレタスは葉質が縮みをもつとともに歯切れがよいのが好まれる。またスープなどに入れたり、サンドイッチに挟んだりする。アスパラガスレタスおよびコスレタスの葉はレタス本来の淡い苦味をもち、生食には向かないので、一度ゆでて料理する。カキヂシャも和(あ)え物、ごまよごしなどにする。カキヂシャの茎はおもに中華料理に用いられ、ゆでてから種々に味つけする。

[星川清親 2022年5月20日]

『近藤雄次編著『レタス――作型とつくり方』(1980・農山漁村文化協会)』『農耕と園芸編集部編『レタス 生理と栽培技術――野菜栽培の新技術1』(1986・誠文堂新光社)』


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改訂新版 世界大百科事典 「レタス」の意味・わかりやすい解説

レタス
lettuce
Lactuca sativa L.

チシャ,チサともいい,葉または茎を生食するキク科の一・二年草。一般に呼ばれている結球性のものだけでなく,日本で古くから栽培されていたものなども含めた総称名で,その利用部分や形態から立レタス,茎レタス,葉レタス,玉レタスに分類される。このうち日本で最近多く栽培されているのは玉レタスである。また近年,栽培出荷されるようになったサニーレタスは葉レタスの仲間である。以前から農家の庭などで栽培されていた,葉をかきとって食用にしたカキレタスは立レタスに,根生葉を利用した小型のレタスは葉レタスに所属する。玉レタスはさらにかたく結球し頭部が完全に抱合するクリスプヘッド型,結球が弱く頭部が完全に抱合しないバターヘッド型に分けられ,前者を一般には玉チシャ,玉レタス,結球レタス,あるいは単にレタスと呼び,広い意味のレタスの主体をなしている。後者はサラダナと呼ばれている。

 レタスの原種は地中海東部沿岸から小アジアにかけて分布するL.serriola L.と考えられている。それはレタスに近縁な数種の野生種のうち,この種だけ自由にレタスと交配し種子をつくるからである。レタスはすでに前4500年ごろエジプトで利用されていたことが壁画から知られている。さらにギリシアやイタリアに導入され重要な野菜となった。しかし,これらはいずれも非結球性のレタスであった。ヨーロッパで結球性のレタスが知られるのは16世紀の中ごろになってからである。中国へは西暦600~900年ごろに入り,肥大した茎を食用にする変わった品種群である茎レタスが育成されている。日本には中国を通して導入され,広く栽培されていた。現在日本では〈レタス〉というと玉レタスをさすほど普通な野菜になった結球性のレタスは,明治になって西洋野菜として導入栽培が始まった。また完全に結球するクリスプヘッド型が栽培されるようになったのは第2次大戦後であり,まったく新しい野菜である。今日利用されている結球レタスは16世紀以降ヨーロッパとアメリカで品種改良されたもので,かつての形態からは想像もつかないほど変化してしまっている。

 玉レタスは在来の品種群と異なり,冷涼な気候を好み,種子の発芽は15~20℃が適温であるが,25℃を過ぎると発芽率は著しく落ちる。また高温になると種子は休眠に入る。結球は播種(はしゆ)後40~50日ごろから始まり,結球葉数は約60枚が標準である。葉は円形で光沢があり,葉縁部に欠刻やしわが多い。外葉は緑色であるが結球部分の葉は淡緑色となる。花芽分化後の抽だい(とうだち)は高温長日下で促進される。開花時の草丈は90~120cmとなる。花は頭状花序で,十数個の舌状花をつけ,舌状弁は黄色である。品種改良と栽培地や栽培法によって出荷は年間を通じて行われている。主として都市近郊の平たん地で行われる春まき栽培および秋まき栽培,標高1000m前後の高冷地(長野県,群馬県,岩手県など)を利用する夏まき栽培,温暖地(静岡県,千葉県,和歌山県など)で行われる冬まき栽培などがあり,いずれの作型もビニルなどの保温資材を利用することによって,播種期や収穫期の幅を広げている。食生活の洋風化,消費水準の上昇はレタスの消費を著しく伸ばしている。レタスはサラダとして生食に利用され,食塩かマヨネーズをつけて簡単に食べられ便利である。葉を切るときは金物のにおいが移らないように手でちぎるか木製のナイフを利用するのがよい。
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食の医学館 「レタス」の解説

レタス

《栄養と働き》


 レタスはキク科の1年草で、西アジア、地中海沿岸が原産地とされています。品種はサラダ菜、サニーレタス、リーフレタスなど多岐に渡りますが、一般的に「レタス」といえば、結球している玉レタスのことを指します。
「玉チシャ」とも呼ばれますが、これは「乳草」からきており、茎を切ると白い液がでることからつけられた呼び名です。
 古代ギリシャやローマでは、安眠をもたらす野菜として紀元前から食用として用いられていたといいますが、当時は結球しないタイプのもので、玉レタスが広まったのは16世紀ころからといわれています。
 わが国で玉レタスが広く食べられるようになったのは1960年代からです。
〈ビタミンEが血行をよくし、貧血予防にも効果あり〉
○栄養成分としての働き
 レタスは約95%が水分で、栄養価は高いとはいえませんが、カリウムカルシウム、鉄といったミネラル分やビタミンE、B1、C、食物繊維などをバランスよく含んでいます。
 含有量は多くありませんが、おもに生食するので、損失率が少なく、ビタミン、ミネラルを効率よくとれます。
<サラダ菜>
 レタスと同じチシャの仲間ですが、レタスは淡色野菜、サラダ菜は緑黄色野菜でカロテンを豊富に含んでいます。
 レタス類のなかでは、鉄分が100g中2.4mg、ビタミンB2は0.13mgとダントツの含有量です。これらの成分により、貧血予防、かぜ予防、肌荒れなどに有効です。
<リーフレタス>
 カリウムが100g中490mg、カロテン2300μg、ビタミン類も豊富で、Cは21mgといずれもレタス類ではトップです。高血圧予防、疲労回復、美肌に効果的です。
<サニーレタス>
 葉チシャの一種で、サニーレタスは銘柄名。正式名はプライツヘッドといいます。リーフレタス、サラダ菜同様、カロテンが豊富ですが、カルシウムを100g中66mg含み、食物繊維は2.0gと、他のレタス類に勝る含有量です。便秘(べんぴ)改善に役立ちます。
<コスレタス、ステムレタス>
 コスレタスは立ちレタスの一種で、先が尖った楕円形(だえんけい)です。ステムレタスは茎レタスの一種で、茎と若い葉を食べます。葉の部分はサンチュとも呼ばれ、焼き肉の包み菜としてよく用いられます。ミネラル、ビタミン、食物繊維などをバランスよく含んでいます。

《調理のポイント》


 レタスは短時間でさっと炒(いた)めたり、スープの具として利用するとカサが減ってたくさんとることができます。サラダ菜やリーフレタスなどカロテンが豊富なものは、油の入ったドレッシングをかけて食べると効率よくとれます。
 また、生のままサラダにするときは、芯(しん)の部分から葉を1枚ずつはがして、手でちぎって盛りつけましょう。レタスは包丁で切ると断面が褐色に変化して金気(かなけ)くさくなり、味も落ちてしまいます。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レタス」の意味・わかりやすい解説

レタス
Lactuca scariola; lettuce

キク科の多年草で,食用に栽培される。西アジアから地中海地方にかけての原産とされるが,栽培の歴史が古く多くの変種を生じている。日本でも渡来の歴史は古く,特に明治以降チシャ (萵苣) の名で広く栽培され,生野菜としてはキャベツなどと並んで最も普通なものとなっている。楕円形ないし円形の根出葉を生じ,みずみずしい緑色で切ると白い乳液を出す。葉がキャベツ状にゆるく結球するヘッドレタス (タマチシャ) が代表的であるが,葉が切れ込んだカットリーブレタス,茎につく葉を次々にかきとって収穫するアスパラガスレタス (カキチシャ) などがある。放置すればいわゆる薹 (とう) が立ち,90cmほどの茎となって,梢は枝分れして黄色の頭状花をつける。

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百科事典マイペディア 「レタス」の意味・わかりやすい解説

レタス

チシャ,サラダ菜とも。アジア〜ヨーロッパ原産のキク科の一〜二年生の野菜。多くの変種があるが,日本で一般的なヘッディングレタス(玉レタス,玉チシャ,いわゆるレタス)は一年生で葉は地ぎわから束生し,大型の円〜楕円形。生長すると結球し,表面は平滑で柔軟。花は円錐花序をなした淡黄色の頭状花。葉をサラダ用として生食する。結球性が弱いものがサラダ菜である。このほかリーフレタス(葉チシャ,サニーレタスはこの一型),コスレタス(立チシャ),カッティングレタス(掻きチシャ)などがあり,同様に利用される。
→関連項目サラダ菜

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「レタス」の解説

レタス[葉茎菜類]
れたす

四国地方、香川県の地域ブランド。
主に観音寺市・善通寺市で生産されている。香川県では、1959(昭和34)年からレタス栽培がおこなわれており、香川産のレタスはらりるれレタスの名で全国各地に出荷されている。出荷時期は10月〜5月。

レタス[葉茎菜類]
れたす

関東地方、茨城県の地域ブランド。
主に坂東市・猿島郡境町・結城市などで生産されている。茨城県では春から初夏、秋の2回栽培がおこなわれている。レタスは老化を防ぐといわれるビタミンEや無機質を豊富に含む食材。

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報

栄養・生化学辞典 「レタス」の解説

レタス

 [Lactuca sativa].チシャともいう.キク目キク科アキノノゲシ属の二年草.葉を食べる葉菜の一つ.

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世界大百科事典(旧版)内のレタスの言及

【サラダナ】より

…葉を生食するキク科の一,二年草。日本で昔から栽培されているチシャや最近洋菜としてサラダなどに多く用いられる結球性の玉レタスは,植物学的には同一種で,地中海東部地域で栽培化された。日本では,この玉レタスのなかで結球性が弱く頭部が完全に包合しない品種群をとくにサラダナと呼び,結球性の強いふつうの玉レタスとは区別している。日本への導入は明治・大正の時代からであるが,ふつうの玉レタスほどには消費は伸びていない。…

※「レタス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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