レトロウイルス

精選版 日本国語大辞典 「レトロウイルス」の意味・読み・例文・類語

レトロ‐ウイルス

〘名〙 (retrovirus) RNA(リボ核酸)を遺伝子として持ち、生体細胞に感染後DNA(デオキシリボ核酸)に転写され、宿主染色体に組み込まれるウイルス総称。乳腺腫ウイルス・エイズウイルスなど。

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デジタル大辞泉 「レトロウイルス」の意味・読み・例文・類語

レトロウイルス(retrovirus)

核酸としてRNAリボ核酸)をもち、生体細胞に感染すると逆転写酵素が働いてDNAデオキシリボ核酸)に転写され、宿主の染色体に組み込まれるウイルスの総称。乳腺腫ウイルス・エイズウイルス(HIV)などがある。

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百科事典マイペディア 「レトロウイルス」の意味・わかりやすい解説

レトロウイルス

エイズ成人T細胞白血病などを引き起こすウイルスの種類。レトロウイルスには,ウイルスの遺伝子であるRNAをもとにしてDNAをつくり増殖するという特徴がある。そもそも,人間や他の生物のもとになる設計図はDNAであり,それを伝えるのがRNAの役割の一つである(この働きをするRNAをメッセンジャーRNAという)。しかし,レトロウイルスはRNAの構造をDNAに転写(コピー)するという逆転写酵素をもつため,DNAを生成することが可能になる。 RNAがつくったレトロウイルスDNAは,宿主(自分が寄生している生物)の細胞のDNAに安定的に組み込まれ,それが効率よく転写されて,ウイルスは増殖する。 (がん)の原因となるレトロウイルスは,こうして宿主の細胞をウイルスの一部に変化させ,この過程で細胞の遺伝子が変化するために,癌細胞ができるのである。 レトロウイルスの研究によって,現在では,遺伝子の変化が癌化の主要な原因であるという概念が確立されている。→DNAワクチン多剤併用療法
→関連項目iPS細胞

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レトロウイルス」の意味・わかりやすい解説

レトロウイルス
retrovirus

RNA (→リボ核酸 ) を遺伝子とする RNA型ウイルスの仲間で,RNAを鋳型にして DNA (→デオキシリボ核酸 ) を合成する酵素 (逆転写酵素) をもつウイルス群の総称。逆転写酵素の働きにより,ウイルスの遺伝子である RNAが DNAに姿を変えて宿主細胞の染色体 DNAに組込まれる点が最大の特徴である。動物に癌を発生させる腫瘍ウイルスの多くがこのグループに属しており,成人T細胞白血病ウイルス HTLV-1はその代表例である。エイズの原因となるヒト免疫不全ウイルス HIVもレトロウイルスの1種だが,癌を発生させる性質はなく,ウマ伝染性貧血病ウイルスとともにレトロウイルス・レンチウイルス亜科に含まれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「レトロウイルス」の意味・わかりやすい解説

レトロウイルス
れとろういるす
retrovirus

生体に感染後、逆転写酵素を合成できるウイルスの総称。エイズウイルス(HIV)、成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルス(HTLV‐1)などが知られている。DNA(デオキシリボ核酸)を遺伝子にもつ人間などの生物は伝達役のRNA(リボ核酸)に情報を写す(転写)わけだが、RNAを遺伝子にもつこのウイルスは、感染後、逆転写酵素のはたらきでRNAからDNAをつくり、感染細胞のDNAのなかに潜り込むため、一度感染すると容易に離れない。

[田辺 功]

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化学辞典 第2版 「レトロウイルス」の解説

レトロウイルス
レトロウイルス
retrovirus

遺伝情報としてRNAをもつウイルス.感染後,自身の逆転写酵素でRNAをDNAに変換し,宿主細胞内で増殖する.通常の遺伝情報の流れ(DNA→RNA)とは逆(RNA→DNA)であることからレトロと名づけられた.AIDSの原因であるHIVもこの一種.

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栄養・生化学辞典 「レトロウイルス」の解説

レトロウイルス

 RNAウイルスの一科.RNAを転写してDNAを合成する,逆転写酵素(RNA依存DNAポリメラーゼ)をもつ.この酵素は,mRNAからcDNAを合成するなど分子生物学で広く利用されている.

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