レネ(読み)れね(英語表記)Alain Resnais

デジタル大辞泉 「レネ」の意味・読み・例文・類語

レネ(Alain Resnais)

[1922~2014]フランス映画監督記録映画「夜と霧」で注目される。後に劇映画に転じ、デュラス原作の「二十四時間の情事」や、ロブ=グリエの脚本による「去年マリエンバートで」などを監督した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「レネ」の意味・わかりやすい解説

レネ
れね
Alain Resnais
(1922―2014)

フランスの映画監督。モルビアン県バンヌに生まれる。幼いころから映画、文学、演劇を愛好し、パリの映画高等学院に学ぶ。第二次世界大戦後、映画編集の仕事をしながら、16ミリで短編映画の製作を始め、『ヴァン・ゴッホ』(1948)、『ゲルニカ』(1950)をはじめとする一連の美術映画、またアウシュヴィッツオシフィエンチム)のナチス強制収容所の生々しい痕跡(こんせき)と記憶とをモンタージュした『夜と霧』(1955)などが高い評価を受け、数々の賞に輝いた。1959年『二十四時間の情事』で長編劇映画にデビュー。過去と現在の交錯による記憶の映像化、ヌーボー・ロマンの作家M・デュラスによる脚本といった新しい試みがセンセーションを巻き起こし、ヌーベル・バーグ一翼を担うセーヌ左岸派(1950~1960年代のパリ、セーヌ川左岸に多く住んでいた進歩的、前衛的文学者、映画人、音楽家の一派)の代表となった。次作の『去年マリエンバートで』(1960)も、記憶に想像の世界を加えることによって前作以上の反響をよび、難解な映画の代名詞ともなった。その後も、記憶と時間のテーマ中心に、『ミュリエル』(1963)、『戦争は終った』(1966)、『薔薇(ばら)のスタビスキー』(1974)、『アメリカ伯父さん』(1980)、『人生は小説の如(ごと)し』(1983)、『メロ』(1986)や、アメリカとフランスのカルチャー・ギャップをコミカルに描いた『お家に帰りたい』(1989)、『スモーキング』(1993)、『恋するシャンソン』(1997)などを発表した。

[村山匡一郎]

資料 監督作品一覧

ヴァン・ゴッホ Van Gogh(1948)
ゴーギャン Gauguin(1950)
ゲルニカ Guerunica(1950)
彫像もまた死す[クリス・マルケルと共同監督] Les statues meurent aussi(1953)
夜と霧 Nuit et brouillard(1955)
世界の全ての記憶 Toute la mémoire du monde(1956)
アトリエ15の記憶 Le mystère de l'atelier quinze (1957)
二十四時間の情事 Hiroshima, mon amour(1959)
スチレンの唄 Le chant du Styrène(1959)
去年マリエンバートで L'année dernière à Marienbad(1960)
ミュリエル Muriel ou Le temps d'un retour(1963)
戦争は終った La guerre est finie(1966)
ベトナムから遠く離れて~「クロード・リデール」 Loin du Vietnam - Claude Ridder(1967)
ジュ・テーム、ジュ・テーム Je t'aime, je t'aime(1968)
西暦01年 L'an 01(1972)
薔薇のスタビスキー Stavisky...(1974)
プロビデンス Providence(1977)
アメリカの伯父さん Mon oncle d'Amérique(1980)
人生は小説の如し La vie est un roman(1983)
メロ Mélo(1986)
お家に帰りたい I Want to Go Home(1989)
スモーキング ノースモーキング Smoking/No Smoking(1993)
恋するシャンソン On connaît la chanson(1997)
巴里(パリ)の恋愛協奏曲(コンチェルト) Pas sur la bouche(2003)
六つの心 Coeurs(2006)
風にそよぐ草 Les herbes folles(2009)

『ガストン・ブーヌール著、岡田利男訳『現代のシネマ5 レネ』(1969・三一書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レネ」の意味・わかりやすい解説

レネ
Resnais, Alain

[生]1922.6.3. バンヌ
[没]2014.3.1. パリ
フランスの映画監督。ヌーベルバーグ「セーヌ左岸派」の代表で,思索的な作風で知られる。裕福な薬剤師の家に生まれたが,慢性の喘息のため孤独な幼少期を過ごした。14歳で級友を動員してスリラー映画を撮った。1940年パリに移り,映画高等学院で映画を学ぶ。一時演劇に興味をもったが,1947年から短編映画を撮り始め,美術映画『ヴァン・ゴッホ』van Gogh(1948),『ゲルニカ』Guernica(1950),ナチスの強制収容所を題材にした記録映画『夜と霧』Nuit et brouillard(1955)などを発表し,注目される。広島を舞台にした劇映画第一作『二十四時間の情事』Hiroshima mon amour(1959)では男女の意識の流れを大胆に映像化して話題となった。ほかに,前衛的な『去年マリエンバートで』L'Année dernière à Marienbad(1961,ベネチア国際映画祭サン・マルコ金獅子賞),芸術性豊かな『戦争は終った』La Guerre est Finie(1966,カンヌ国際映画祭批評家連盟賞),『薔薇のスタビスキー』Stavisky(1974),セザール賞の作品賞・監督賞に輝いた『プロビデンス』Providence(1977)などがある。2009年カンヌ国際映画祭の生涯功労賞を授与された。2014年に『ライフ・オブ・ライリー』Aimer, boire et chanterでベルリン国際映画祭の銀熊賞(アルフレッド・バウアー賞)を受賞した。

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百科事典マイペディア 「レネ」の意味・わかりやすい解説

レネ

フランスの映画監督。美術映画の出身。アウシュビッツ強制収容所をとりあげたモンタージュ記録映画《夜と霧》(1955年)で世界に衝撃を与える。劇映画に移って広島を舞台にした《24時間の情事》(1959年),《去年マリエンバートで》(1961年,ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞)を発表し,斬新な表現方法で評価を得た。前者はM.デュラス,後者はA.ロブ・グリエという現代フランスの代表的な作家のシナリオによるもの。《二十四時間の情事》をフランス・ヌーベルバーグの最も重要な作品と位置づける見方もある。他に《ミュリエル》(1962年),《戦争は終わった》(1966年),《アメリカの伯父さん》(1980年,カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ),《お家に帰りたい》(1989年),《風にそよぐ草》(2009年,カンヌ国際映画祭審査員特別賞)などがある。
→関連項目クラインケロールヌーベル・バーグ

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