ロシアメシアニズム

改訂新版 世界大百科事典 「ロシアメシアニズム」の意味・わかりやすい解説

ロシア・メシアニズム

近代ロシアの社会思想。系譜的には18世紀の思想家フォンビージンにまでさかのぼることができるが,1840年代に形成されたスラブ派に特に顕著な考え方であった。市民革命と産業革命とによって激動を続ける西ヨーロッパに近代文明の行詰りを認め,その原因がローマ・カトリック教会の理性主義的・論理主義的考え方にあるとみなした。そこで,信仰共同体の回復を目ざし,そのための基礎としてロシア正教会優位を主張した。I.V.キレエフスキーやホミャコーフら初期スラブ主義においては,〈正教〉の救済的役割に重点が置かれていた。60年代以降ロシアに資本主義が発達してくると,民族主義と結びつき,世界の救済者としてのロシア民族の役割が説かれるようになった。ドストエフスキーはロシア民族を〈神をはらめる民〉と呼んだ。このほか,I.S.アクサーコフやダニレフスキーのような思想家もこうした考え方をもっていた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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